創志学園、センバツで歴史的1勝なるか!?=第83回選抜高校野球・直前リポート
「先制して逃げ切る」 創志学園の強さ
飛び抜けた選手は不在。投手力、攻撃力、守備力において相手を圧倒するような強さもない。それでも負けないチームだったのは、辛抱強さとベンチワークにある。
創志学園高の戦いを象徴する一戦は、2対1で勝った広島国際学院高(広島)戦(中国大会準々決勝)だ。広島国際学院高は攻守にバランスの優れたチームで、ベスト8ながら補欠1位に選ばれたほどだ(ベスト4の鳥取中央育英(鳥取)が補欠2位)。「攻めるには初回しかない」との指揮官の思惑通り、創志学園高は初回に2点を入れる。相手投手の投球時の癖を見抜いた長沢監督が選手たちに伝授し実行。そして5番・玉井涼太が先制タイムリーを放った。玉井は前の試合まで2番打者。「打順は日替わりで試合直前まで自分たちも分からない。だけど、本当に当たるからすごい」(主将・野山慎介)と、起用的中にナインは目を丸くする。
この2点を左腕・富田一成らが守りきるのだが、とにかく我慢の連続だ。打たれたヒットは10本、得点圏に走者を背負った回数が6イニングも数える。特に6回からはずっとピンチ。2対1で迎えた6回2死一塁の場面では投手交代ミス(投手交代の際、伝令役がベンチの指示とは異なる選手を告げた)のアクシデントもあった。しかし、結果的には14残塁の山を築かせた。「秋は毎試合こんな感じ。もうピンチには慣れました」と野山と富田が思わず口をそろえた。
秋は全試合で先攻を取り、先制して逃げ切るパターンを確立させた。
課題は本格派投手への適応
そのかわり普段から県営球場を使っており、この冬は倉敷マスカットスタジアムの室内練習場を借りてマシンの打ち込みもしている。平日木曜以外は授業の一貫として14時から練習でき、専用マイクロバス、専用寮も完備。練習環境は恵まれているだけに、初めて迎える長いオフシーズンで練習不足を補うことができる。しかも部員は彼らの学年28人しかいないのだから効率がいい。大幅な成長を期待できる状態だ。
長沢監督は阪神甲子園球場は自分にとって“ホーム”だと話す。兵庫県西宮市に生まれ、小学1年生のときから学校行事で走り回っていた。学生時代は売り子のアルバイトも経験。市立西宮高時代は予選会場にもなり、指導者としては神村学園高を初出場で準優勝まで導いている。
「いやあ、きっと選抜では1回戦で強豪と当たることになるんですよね。でもね、僕はタイガーズファンなんですよ。だから球場独特の風向きとかも染み付いているんです」
慣れ親しんだ聖地。“ホーム”の利を生かして、長沢監督が歴史的初勝利に挑む。
<了>
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