ソフトバンクが抱える贅沢な悩み=鷹詞〜たかことば〜

田尻耕太郎

超強力打線の陣容は果たして!?

 大型補強を敢行して今季に臨む福岡ソフトバンク。2月23日には宮崎春季キャンプの打ち上げを迎える。12球団屈指の超強力打線となるその陣容が、いよいよ明らかになってきた。

 打線の中軸が、決められない。
 決まらないのではない。ぜい沢な悩みである。

 唯一確定的なのは3番だ。今キャンプ中に紅白戦を4試合行ったが、すべての試合でこの打順に起用されたのが内川聖一だった。横浜からFA移籍してきた“ヒットマン”は「周りの期待は感じるし、それ以上の活躍をしたいと思うのがプロ野球選手として当然のこと」と充実感いっぱいの表情でこのキャンプを過ごしている。

4番候補がずらり5人も

 最激戦区は、打線の核である4番だ。
 最有力候補は、こちらも新戦力のアレックス・カブレラである。日本球界10年間で通算346本塁打を放った“怪物”がキャンプ初日からチームに合流。第1クール2日目のフリー打撃では早くも場外弾をかっ飛ばし、小久保裕紀や多村仁志をあ然とさせた。
 しかし、11日の第3クールからキャンプ打ち上げ前日の22日に至るまで別メニュー調整を続けている。室内での打撃は行っているが、いつ実戦モードに入るかは定かでない。それでも秋山幸二監督は「実績も経験年数もあるし任せているよ」と涼しい表情を見せる。余裕さえ感じさせるのは、たとえカブレラが欠けたとしても代役は十分にそろっているからである。

 昨季最も多く4番に座った小久保をはじめ、現役唯一の三冠王経験者の松中信彦もいる。また、ホセ・オーティズも加わってくる。福岡ソフトバンクに入団して以降の2シーズンで4番の経験はないが、今春の紅白戦では2試合に4番で出場した。昨季はシーズン後半にひざを痛めて失速したが、前半戦では23本塁打を放ち本塁打王争いのトップを快走した実績から可能性は十分にある。さらに昨季のチーム三冠王の多村も忘れてはならない。多村は昨年のオールスター第1戦でパ・リーグの4番も務めている。

ベテランにも危機感

 福岡ソフトバンクにとって数年来の課題だった長打力不足。06年以降はシーズン30本塁打以上放った打者が不在だったが、今季はさぞかし爽快(そうかい)な野球を堪能することができるだろう。

 その一方で上記の選手たちは危機感も募らせている。多村はライトを守るが、ファーストとレフトと指名打者の3つのポジションを残る5人で争うことが濃厚。21日の紅白戦では内川がセンターを守ったが、広いヤフードームを本拠地とするだけに守備を軽視するわけにはいかない。実績も貫禄も十分な小久保や松中でさえ「今季は試合に出られる保証はない」と気を引き締めている。特に小久保はあと130安打に迫った通算2000本安打にチャレンジするシーズン。「試合に出ないことには(達成は)ないからね」と話す。

 現段階で秋山監督は開幕オーダーについて触れることはない。オープン戦の仕上がりも見つつ、「コーチともに話しながら判断していきたい」という。
 何パターンもの“ベストメンバー”を組める今季の福岡ソフトバンク。パ・リーグ連覇はもちろんの目標。ただ、昨季のクライマックスシリーズで敗れた悔しさを誰もが忘れておらず、「日本一」の言葉は首脳陣や選手から絶えることなく聞かれた。
 8年ぶりとなる12球団の頂点へ。今季は圧倒的な力で突き進んでいくつもりだ。

<了>
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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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