ソチ五輪・金メダルへ続く進化=スピードスケート長島圭一郎インタビュー

高野祐太

2010年の全日本スプリントでは男子総合2位に終わった長島圭一郎だが、その視線の先には常に頂上を見据えている 【写真は共同】

 1年前のバンクーバー五輪スピードスケート男子500メートルで銀メダルを獲得した長島圭一郎選手(日本電産サンキョー)。そのときの滑りは、ソチ五輪で金メダルを目指すための大事なヒントにもなり、今季の取り組みにつながっていると言う。銀メダルの滑りとはどんなものだったのか、そこから、どんなことを考えながら世界一美しいと言われるフォームの進化に取り組んでいるのか話を聞いた。

決めていた「現役続行」

――バンクーバーのメダリストになって何か変わりましたか

 周りから「おめでとう」と言われたり、北海道にいるときくらいですけど、一般の人に気づいてもらって「あっ、取ったんだな」って。自分自身は、まあ普通ですね。自分でも何か変わるかなと思っていましたけど、今までと変わることはなかったです。

――メダルを眺めて感慨にふけるとかは

 あれ以来、メダルは僕の手元になくて。あちこち回って、今は実家に戻って来たとか聞いてます。あれ以来見ていないです(笑)。

――五輪会場では現役続行について「あとでゆっくり考えます」とおっしゃっていましたが、地元の池田町で行われたパレードの後の会見で初めて公に現役続行を宣言しました。決意するまでの経緯は

 現役を続けることは、実は滑り終わって結果が出たときには決めていたんです。2番だったので。でも、報道陣の前で「続ける」とか「続けない」とか(明言しない感じの言葉を)言ってみたかったんです(笑)。こんなこと言えるのも今しかないって。ちょっとほかの有名アスリートのまねをしてみようかと。

――ということは、金メダルだったら辞めていたということ?

 1番と4番以下だったら辞めようと思っていました。2番という結果は考えていなかったので。まあ、やれってことかなって。まだできるし、辞める必要もないと考えて。

――つまり、まだ上があるし、取り組むテーマがあると

 上があるし、まだまだ行けると思ったんですね。まだ伸びているし、その可能性もあるんで。

――帰郷した際に、高校時代の恩師の先生から「まだ最強にもなっていないし、最速にもなっていないから、続ける意味がある」と励まされたそうですが、そのとき、実は腹が決まっていたということになる

 ハハハハ。僕の価値観としては最速は目指していないんです。記録にはそれほど興味がなくて、オリンピックとかいろんな大会で常に1番を取りたいという気持ちがあります。

――その価値観の1つに美しい滑りを目指したい気持ちがあるんですよね

 やっぱり、あまり格好悪いスケーティングはしたくないということは頭にあります。

美しさと力強さが見えた五輪の2本目

1年前のバンクーバー五輪で銀メダルを獲得した長島圭一郎(右)。メダルは「あれ以来見ていないです」と語る。写真は2010年2月の五輪表彰式、左は銅の加藤条治 【写真は共同】

――バンクーバー五輪の500メートルは、1回目で製氷のトラブルもあって6位と出遅れましたが、2回目でばん回の滑りを見せてくれました。あのとき、素人目には長島選手らしい美しさプラスアルファの力強さのようなものが感じられたのですが

 基本的なことは変わりませんが、気持ちが入っていたので、ああいう滑りになったのかもしれないです。いい具合に刃と氷がかみ合っていたと思います。攻めるポイントを全部攻めたというか、安全策は取らずに紙一重のところでやっていました。

――アタックを仕掛けた?

 そうです。あそこであれだけ出せたのはなかなか確率的に言えばすごい。でも、あそこでちゃんと出せたのは自信にもなりました。1回目でコンマ2秒とかの差というのは、500メートルでは(普通なら逆転は)不可能なんです。スケートをやっている選手ならそう思います。あのときも上位の選手は「逆転はないだろう」と思っているだろうなと思って。だから、ここで逆転したら格好いいだろうな、インパクトあるだろうなというプラスの気持ちがすごかったです。あのときは。
 1位まではさすがに届かなかったけど、2番まで上がれたのはすごくよかった。本当は2本そろえられればいいんでしょうけど、最後にインパクトを残せたかなと。

――バンクーバーの2本目のプラスアルファの滑りに、14年(五輪シーズン)の滑りにつながるヒントみたいなものはあるんでしょうか

 もちろん、全部つながっていると思うので。また1からということは考えていないですし、そういうものを大事にしていきたいし、今後につながって来ると思っています。

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著者プロフィール

1969年北海道生まれ。業界紙記者などを経てフリーライター。ノンジャンルのテーマに当たっている。スポーツでは陸上競技やテニスなど一般スポーツを中心に取材し、五輪は北京大会から。著書に、『カーリングガールズ―2010年バンクーバーへ、新生チーム青森の第一歩―』(エムジーコーポレーション)、『〈10秒00の壁〉を破れ!陸上男子100m 若きアスリートたちの挑戦(世の中への扉)』(講談社)。

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