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カレン・ロバート、新たなチャレンジを求めて
熊本退団からVVV移籍までの裏側

自ら行動を起こし、実現させたVVV入団

PSV戦の後半開始から途中出場を果たしたVVVのカレン(左)。オランダでの挑戦が始まった
PSV戦の後半開始から途中出場を果たしたVVVのカレン(左)。オランダでの挑戦が始まった【写真:VI Images/アフロ】

 追い込まれた結果、カレンは荒業に出た。自ら代理人との契約解除をあくまで穏便に行い、海外移籍を実現させるための手段を探ったのだ。多くの関係者、代理人に話を聞いた。誰がどこにルートを持っていて、どこに練習に行かせてくれるのか? 自分自身が行動を起こしたのだ。自分のサッカー人生をここで終わらせたくない、その一心だった。

 サッカー選手自らが、そこまでのアクションを起こすことは決して多くはない。たいていは代理人側から声をかけられる。選手によっては複数から取捨選択する場合はあっても、逆のケースは多くない。カレンはそれほどまでに追い詰められていたということの証しだった。


 結果、カレンはオランダ1部リーグのVVVフェンロに強力なパイプを持つ清岡哲朗氏と契約に至った。

「僕はVVVにパイプを持っていて、VVVがたまたま左のアタッカーを探していた。オランダのシステムは大概4−3−3で、タテに速くて突破力、スピードのある選手が求められる。そこで、カレンははまるなって思った。選手としてあれもできて、これもできてというのは逆に求められないし、トライしていく選手が好まれるんですよね。そこで、カレンの思いとうまく合致した」(清岡氏)


 また、カレン自身のルーツもプラスに働いた。父親が北アイルランド出身の英国籍であるため、カレンは日本国籍でも英国の永住権を取得できる。そのため、日本人が欧州移籍の際にぶつかるEU(欧州連合)圏外選手枠による人数制限や、年俸の下限制限に引っ掛かることがない。クラブ側のリスクも大幅に減るのだ。

 VVVは年俸を下げられるだけでなく、カレンが活躍した場合、欧州のどこの国にでも――例えば日本人選手が就労ビザ取得で苦労するイングランド・プレミアリーグでも、移籍させられるというメリットが生じる。その点を、清岡氏はVVV側に説いたそうだ。昨年12月からチーム練習に参加し、高い評価を得ていた。1月14日に正式に2年半の契約が発表され、19日には早くもベンチ入り。そして、23日のPSV戦では後半開始からピッチに立った。長かった不遇時代がうそのように、カレン自ら起こしたアクションは、VVV入団という形でひとまず実を結んだ。

目標は日本代表でW杯に出ること

「1人ひとりの個性が強い。日本と違うのは、自分を出すし、要求もするところかな。日本とはあまりにも違う。戦術がないっていうか、それ自体が戦術なのかもしれないけど、組織がない。すべては1対1で、目の前の相手に負けてはいけないってはっきりしている。もちろん戸惑いはあるけれど、慣れたら自分に合っているんじゃないかな。イメージはあります」

 カレンは、チームの印象をこう語る。


 生まれ故郷を思い出させる、フェンロの街にも好印象を抱いている。

「静かで川あって。オレが生まれ育った茨城県の港町みたい。土手みたいのがあって、自然がきれいなところがあって落ち着くんですよね。冬は寒いのは寒いですけどね。練習してしまえば、あんまり関係ないかな」


 そして、VVVはサッカー人生の新たなチャレンジの場というだけではない。プレーヤーとして、カレンは新たな決意を胸に抱いている。

「熊本ではセンターFWをやらせてもらって、もう自分はそのポジションで勝負するのはきついなと思って。この先、日本代表を目指すならセンターFWではきついと思った。そのけじめをつけさせてもらったのは熊本なんですよね。左のMFかFWか、まあ右でもいいけど、サイドで勝負してこそ特徴が最大限に生かせるかなと思った。自分としてはポジションを替える第一歩だから、全く違ったチャレンジになってくるかなと思う」


 サイドのスペシャリストとして生まれ変わることができるか。カレンの勝負は始まった。次なる目標も決まっている。

「今までも言っていますけど、目標は日本代表でW杯に出ること。代表、入りたいんです。早く活躍して、7月のコパ・アメリカ(南米選手権)くらいにはザックジャパンに招集されたい」


 カレンの海外への思いがこれほど強かったことに驚かされただけでなく、日本代表への意欲の強さは予想外だった。と同時に、ただ現状に甘んじるだけでなく、自らアクションを起こしたことに勇気をもらった気にさえなった。だから、今のカレンならやってくれるかもしれない。久々に、そんな期待を抱いている。


<了>

了戒美子

2004年、ライターとして本格的に活動開始。Jリーグだけでなく、育成年代から日本代表まで幅広く取材。09年はU−20ワールドカップに日本代表が出場できないため、連続取材記録が3大会で途絶えそうなのが気がかり。

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