吉田麻也、ポスト中澤・闘莉王を担う男
初戦の硬さか、持ち味を出し切れず
長身でフィード力もある吉田は、中澤、闘莉王の牙城を崩す候補として名乗りをあげた 【Getty Images】
「ヨルダンはカウンター中心だと思っていたので、常に数的優位を保って、チャレンジ&カバーをしっかりできるように今野さんともコミュニケーションを取ろうとしていました。オランダでは1対1が厳しくて相当洗礼を受けてきたけど、日本の場合は組織で守れるのが最大の特徴。言葉も通じるし、お互いにサポートし合えますからね」と本人も言う。
それでも、やはり2大会ぶり4度目のアジア制覇を狙う重要な大会の初戦だ。チーム全体が手堅くいきすぎて積極性を失ってしまった。吉田自身も得意のフィード力を発揮できず、ボランチや最終ラインでの各駅停車のパスに終始してしまったという反省がある。
「入りは決して悪くなかったと思います。でも、みんなが言っている通り、試合展開がスローテンポだったし、自分自身ももっと積極的にビルドアップに参加すれば良かった。そうすればヤットさん(遠藤保仁)はもう1つ前でプレーすることができるし、本田さん(圭佑)ももっとFWに近い位置で絡めて、前田さん(遼一)も孤立することはなかったと思います。僕自身も慎重になり過ぎてしまいました」
ミスというのはネガティブな流れの中で起きるものだ。前半45分の失点シーンは吉田に重くのしかかった。何とかして挽回(ばんかい)したいと考え、後半は状況を見ながら前線に上がった。ザッケローニ監督は「カウンターに備えろ」と指示したというが、彼の高さは疲れの見えてきたヨルダンにとって脅威だったに違いない。後半ロスタイムの同点弾は決して偶然の産物ではなかったのだ。
「前後半で1〜2回自分が前で起点になることがあってもいいと思いますけど、一番いいのは前の選手が点を取ってくれること。後ろの自分はしっかり守っていればいい。ヨルダン戦みたいな展開に陥る前に、早くゲームを決められるようにしたいです」
日本の守備を担えるだけのポテンシャル
「オランダでプレーしている自分から見れば、ヨルダンは決して高いレベルではなかった。でもどこも『日本には絶対に勝つ』って気持ちが強い相手ばかりなんで、あらためてアジアで勝つことの難しさを実感しました。自分たちがやろうとしている組織的な守備ができなくなると、失点シーンみたいな場面が出てくるんで、自分もやりながら成長していかないといけないなと思いますね」
主戦場であるオランダでは1対1の強さ、激しさで洗礼を浴びているという吉田。だがアジアにはまた違った特徴ややり方がある。個人能力を高めつつ、今大会でザッケローニ監督の求める戦術や組織的な守り方を理解すれば、彼は日本の守備陣を担えるだけのポテンシャルがある。背番号22の前任者である中澤、尊敬する闘莉王にポジション争いを挑み、定位置を奪い取るくらいの急成長をこの大会で遂げる可能性もあるはずだ。
次なる関門は13日のシリア戦。シリアは初戦でサウジアラビアを下しており、勝ち点1しか獲得していない日本にとっては、グループリーグ突破に向けての最大の山場となる。吉田の攻守両面でのパフォーマンスが日本浮沈のカギを握るといっても過言ではないだろう。
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