「速攻型」の台頭、カウンターのイメージを覆す=第89回全国高校サッカー選手権 総括
速攻型の代表は滝川第二と立正大淞南
滝川第二と立正大淞南の躍進が証明するように、今大会は速攻型のチームがインパクトを残した 【鷹羽康博】
代表的なのが滝川第二と立正大淞南だ。両チームに共通しているのは、やるべきサッカーがはっきりしており、特に攻撃のコンセプトが明確にあること。滝川第二は樋口寛規と浜口孝太の2トップという強烈な武器をフルに生かすべく、前線でフレキシブルに動く2人に対し、早い段階でクサビを当てて、彼らのコンビネーションから時間を作り、2列目が押し上がっていく。ここでポイントとなるのが、この2トップの突破力だ。樋口も浜口も個で突破できる力を持っていて、浜口がオフ・ザ・ボールの動きで、相手DFを巧みに引きつけてバイタルエリアにスペースを作ると、そのスペースを樋口が消える動きで入り込んで、一気にゴールに迫る。この関係性がしっかりと出来上がっているのも、強烈な攻撃を可能にしている大きな要因だ。
今大会、樋口と浜口の2人で挙げた得点は15ゴール。樋口が8ゴールで得点ランキングトップに立つと、浜口が7ゴールで2位につけた。これだけを見ると、2トップばかりに注目が集まるが、「2トップが目立っているけど、うちの心臓はその後ろにある。ボランチ、両サイドは運動量があって、センターバックもしっかりと体を張った」と栫裕保監督も強調したように、2トップを支える中盤以降の選手の強力バックアップがあったからこそであった。
「速攻ありき」で全員がプレー
本城は視野の広さとキックの精度を誇り、正確なクサビやクロスをゴール前に送り続けた。クサビの質、タイミング共に絶妙で、ここしかない場所にここしかないタイミングで供給。本城にチャンスボールを送らせまいと相手がコースを消しても、今度は大外から濱田が一気に駆け上がり、これまた良質で絶妙なタイミングでクロス、クサビを打ち込んでいく。もし、右の起点が本城だけならば、相手も対応しやすかっただろう。だが、濱田の存在が相手の守備に的を絞らせなかった。
反対に左サイドはMF白岩涼が自慢のドリブル突破で果敢に仕掛けた。右の攻撃でテンポが一定にならないように、左の白岩がドリブルをどんどん仕掛けることで、リズムの変化をもたらしていた。白岩と代わって入るMF惠龍太郎もまた、ドリブルで仕掛けるタイプで、試合を通して左からの仕掛けの質が落ちないことも、相手がつかまえにくい要因の1つだった。
それぞれが自分の特徴と役割を理解し、ゴールへの最短距離を模索する。守備のとらえ方も、「うまく攻めるために守る。ボールを奪った後の動き出しを意識している」(栫監督)と、あくまで素早く攻め切るために、いかにいい状況でボールを奪えるかを全員が考えながらプレーしている。これは「まず守って、攻撃はそこから考える」ではなく、「速攻ありき」で全員がプレーしているからだ。この共通認識、そして実行力は、今大会では滝川第二がナンバーワンであった。