19歳の酒井高徳、駒野不在の間に代表定着を狙う=ザッケローニ監督期待のユーティリティープレーヤー

元川悦子

未来への道を切り開けるか

日本を代表するサイドプレーヤーへ。酒井の挑戦はアジアカップから始まる 【写真:FAR EAST PRESS/アフロ】

 酒井は布啓一郎監督率いるU−19の中心選手として、2大会ぶりのU−20W杯出場に挑んでいた。1次リーグは全勝で1位通過。アジア予選突破の懸かった準々決勝は、永遠の宿敵・韓国との直接対決となった。この大一番で、日本は前半に幸先よく2点をリードしながら、相手の徹底したハイボール攻撃を浴び、瞬く間に逆転を許してしまった。後半はフィジカルの差を突きつけられ、追いつけないまま、まさかの敗戦。2大会連続で世界への切符を逃した。この試合で中盤の攻撃的な位置で先発し、途中交代を強いられた酒井は、責任の重さを痛感したのである。

「韓国戦では一瞬のすきを突かれてしまった。アジアの怖さを実感しました。周りからも『今度は絶対にU−20W杯に出ないとヤバイぞ』と言われていたのに、果たせなくて本当に申し訳なかった。今回のアジアカップもきっと難しい大会になる。自分が出ても出なくても、いい準備をすることが大切になってくると思います」

 7日のアジアカップ開幕を目前に控えた今、酒井は周囲から何でも吸収しようと必死だ。同じポジションのライバル・長友のことも「あらゆる面でお手本になる」とリスペクトし、多くを学ぼうと貪欲(どんよく)になっている。

「長友君には練習や紅白戦をやる中でポジションについて聞いたり、イタリアでの経験談を教えてもらったりしています。『イタリアでどんな守備の仕方をしているんですか?』と聞いたら、『ザック監督もそうだけど、組織的な戦術練習が大好きだ』って答えが返ってきた。確かにザック監督は攻守両面で細かいし、個人的な指示が多い。でも、そんなに難しいとは思いません。今、特に言われているのはサイドでのボールの取り方だけど、単純なことだし、僕自身は手ごたえを感じています。ただ、普段クラブでやっているのとは違うので、新しいやり方をしっかり理解して取り入れることが大事。あとは自分で考えて実践できるようになれば、プレーの幅ももっと広がると思いますね」

 酒井は発言の1つ1つが非常に丁寧で、しっかりした印象を受ける。それもそのはず、彼はすでに結婚し、昨年末には長女も誕生しているのだ。“若きパパ”は確固たる自信と責任を持ってサッカーに取り組んでいる。昨年はA代表入りという1つの大きなハードルをクリアしたが、本当の勝負はこれからだ。まずはアジアカップで国際舞台の第一歩を踏み出し、日本を代表するサイドプレーヤーへ飛躍する足掛かりを築かなければならない。

「僕はこのチームで一番下だし、期待されてるのもよく分かっています。それに応えるのが本当のプロ。自分の長所は攻守にわたってアグレッシブにやれるところ。攻撃ならどんどん前へ行けるし、周りを使いながら自分が生きるプレーが得意。そういうのを練習から出してアピールしていくことが大切ですね。4年後のブラジルがどうとかは、まだ考えてない。今はとにかくできることを1つ1つやって、足りないところを克服していくことが、将来につながるのかなと思います」

 希望に満ちた未来への道を切り開くためにも、このアジアカップは1つの大きな試金石となる。出番が訪れた時、酒井は持ち前のダイナミックさとアグレッシブさを示せるか。2大会ぶりのアジア制覇を狙うチームに際立った貢献ができるのか。19歳のフレッシュな若武者が、堂々とピッチに立つ瞬間を楽しみに待ちたい。

<了>

※酒井は腰痛のため登録メンバーから外れることが、8日にサッカー協会から発表されました

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著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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