梅鉢貴秀、悔しさを胸に鹿島での挑戦へ
2年連続のPK失敗、今年は出なかった涙

前回大会4強の驚き

梅鉢(右)は関大一のキャプテンとして、心身ともにチームをけん引した
梅鉢(右)は関大一のキャプテンとして、心身ともにチームをけん引した【写真は共同】

 また1人、Jリーグに進むタレントが大会から姿を消した。前回大会でノーマークの存在から、一気に国立の主役の仲間入りをした関西大学第一。その時、2年生MFとして強烈な存在感を放ち、チームの4強入りに貢献した梅鉢貴秀は、Jリーグ内定者として選手権に帰ってきた。もうそこには“無名”や“ダークホース”という視線はなかった。関大一の主将は大会を彩る主役の1人として、チーム自体もまた、上位進出の有力候補として目されていた。だが、彼の選手権は昨年とはまた違った悔しさを残したまま、準々決勝で終わりを告げた。


 昨年の関大一の躍進は正直驚きだった。まったくノーマークの存在で、大阪をノーシードから制したことがまず驚きだったが、全国ではそれがフロックではないことを証明する見事な戦いぶりで、あれよあれよの快進撃を続けた。『月まで走れ!』のフレーズが大きくクローズアップされたが、自慢の走力はもちろん、それ以上にチームとしての戦いの狙いが明確で、粘り強い守備からの、シンプルかつ精度の高いカウンターは見事の一言だった。

 その中で梅鉢の存在は絶大だった。ボランチとして攻守の要となった彼は、左右両足から繰り出される正確かつ強烈なキックを武器に、ボールを散らすだけでなく、果敢に前線に飛び出しては強烈なミドルシュートも見せた。チームの特徴である攻守の切り替えの早さは、彼の高いボール奪取能力と正確無比なフィードがあったからこそだった。


 準々決勝の藤枝明誠戦では、左足から放たれる右CKと、右足から放たれる左CKから、2アシストの活躍を見せると、準決勝の青森山田戦でも終始相手を苦しめた。だが、快進撃は梅鉢にとって思わぬ形で幕を閉じる。チームは青森山田を相手に0−2から土壇場で2−2に追いつき、PK戦に突入。2−3で迎えた後攻・関大一の5人目としてペナルティースポットにボールを置くと、一呼吸置いて放ったシュートはGKにストップされ、その瞬間にチームの敗退が決まった。

鹿島入団内定が決まった夏

「試合でも決定的なアシストができなかったし、チームに迷惑をかけてしまった」

 PKは時の運。当然ながら梅鉢の責任ではない。だが、実直で責任感の強い彼は、目を真っ赤にして自分を責め続けた。新シーズン、3年生になった梅鉢はチームのキャプテンに就任。ベスト4メンバーが彼を含めて9人も残り、今年は大阪の有力候補となっていた。

 だが、チームは低迷する。うまくチームがかみ合わず、インターハイ予選では決勝リーグの手前の中央トーナメントで、金光大阪に0−1の敗戦を喫した。なぜ勝てなかったのか、彼はキャプテンとしての力不足を痛感し、自分を責めた。


 その一方で、鹿島の強化部は梅鉢の才能を大絶賛していた。世代交代を図ろうとしている鹿島は、彼の正確な長短のキックと対人の強さに、将来の守備的ボランチの候補生として白羽の矢を立て、熱烈ラブコールを送った。「勉強も大事なので、文武両道を実践するために関大一に入った」という梅鉢は、学業優秀で大学進学を視野に入れていた。だが、7月下旬、彼は大学ではなくプロへの道を選択。鹿島入団が内定した。


 翌年にはJリーガーへ。だが、そんな華やかな話題とは裏腹に、インターハイのない夏には、地獄の夏合宿が待っていた。連日のように炎天下の中で徹底的に走り込んだ。キャプテンである彼には、佐野友章監督から一番厳しいげきが飛んだ。それはJ内定者といったことなど関係なく、容赦ない叱咤と浮かれずに地に足をつけて成長してほしいという、指揮官の大きな愛情の裏返しでもあった。


 心身ともにチームの柱として鍛え上げられた梅鉢は、最後の選手権予選では決勝で左ひじのじん帯を断裂する重傷を負いながらもピッチに立ち続け、チームを頂点に導いた。2年連続の出場となった今大会。もうノーマークの存在ではなかった関大一は初戦から相手のマークを受け、チームも彼も思うようなプレーができなかった。それでも初戦で羽黒を3−1、3回戦では尚志を1−0で下し、ベスト8まで駒を進めた。

安藤隆人
安藤隆人

大学卒業後、5年半勤めた銀行を退職して単身上京し、フリーサッカージャーナリストに転身した異色の経歴を持つ。ユース年代に情熱を注ぎ、日本全国、世界各国を旅し、ユース年代の発展に注力する。2012年1月にこれまでのサッカージャーナリスト人生の一つの集大成と言える、『走り続ける才能たち 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)を出版。筆者自身のサッカー人生からスタートし、銀行員時代に夢と現実のはざまに苦しみながらも、そこで出会った高校1年生の本田圭佑、岡崎慎司、香川真司ら才能たちの取材、会話を通じて夢を現実に変えていく過程を書き上げた。13年12月には実話を集めた『高校サッカー 心揺さぶる11の物語』(カンゼン)を発刊。ほかにも『高校サッカー聖地物語 僕らが熱くなれる場所』(講談社)、があり、雑誌では『Number』、サッカー専門誌などに寄稿。昨年まで1年間、週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!SHOOT JUMP!』を連載した。

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