柏木陽介、悲願だった代表復帰
遠藤相手のレギュラー争いは長期戦を覚悟
柏木にとって2011年は、代表でのレギュラー定着を目指す1年となる 【写真:澤田仁典/アフロ】
監督は年末の大阪合宿で、従来の4−2−3−1と3−4−3の新布陣にトライした。柏木は細貝萌(アウクスブルク)と並んで常にボランチに入っていた。細貝が同タイプの長谷部誠(ボルフスブルク)の控えだとすれば、柏木は当然、遠藤保仁(G大阪)のバックアップ役に位置付けられる。攻撃の起点としてチームにスイッチを入れる重要な仕事を託されるのだ。
「今は新しいチームの約束事に慣れるのに精いっぱい。ヤットさん(遠藤)のことも意識していない。ボランチで使われるなら、もっとボールを多く触って、中で取られないようにしないと。前に真司や松井さん(大輔=グルノーブル)がいる場合には、思い切りタテパスを狙って得点チャンスを作りたいし、もっと広く展開できるように心掛けたい。このチームは守備も大事だし、一生懸命やらないとね。このチームのボランチはあんまり前に上がらないみたいやから、自分のゴールはちょっと様子見かな」
こう話す柏木は、数日間の合宿で自身の役割を少しずつ理解しつつある。
遠藤、長谷部というW杯・南アフリカ大会ベスト16の立役者たちがボランチに君臨している現状だけに、アジアカップ本番での出番はそう多くないだろう。柏木も厳しい現実をよく理解している。イエメンに行った1年前も「岡田さんが『ウサギとカメ』の話をしてくれたように、自分のやるべきことを続けていたら、ヤットさんみたいにいつかどこかで花開くかもしれない」と忍耐の重要性を口にしていた。それを実践し、30歳近くなって大ブレークした遠藤のポジションに挑むのだから、長期戦を覚悟しなければならないのは間違いない。
アジアの大舞台で再び輝きを
実際、今の20歳前後の世代を見ると、運動量豊富で速くて点が取れる香川のようなウイングタイプは選び放題だが、中盤でボールをキープし緩急をつけながらゲームを作れる遠藤、中村憲剛のようなパサータイプはかなり人材が不足している。Jリーグをくまなく視察しているイタリア人指揮官は、この問題点をよく理解しているだろう。それだけに、どこかで柏木を使って経験を積ませる可能性は少なくない。
大きな国際大会は勝ち進むにつれて出場停止や負傷も起こり得る。チームというのは生き物。新戦力の背番号16にもきっとチャンスは訪れる。それをモノにするか否かで、今後の代表人生が大きく変わってくるのだ。
「ザックジャパンは結構、規則が厳しくていろいろ大変。それをしっかり覚えることが今は一番だと思う。その上で何をするかが今後の課題。監督の言っていることを常に意識して、吸収していきたい。アジアカップも正直、試合に出たい。もし出番がなかったとしても、チームの勝利に貢献することが大事。自分にできることを最大限やっていきたい」と彼は献身的な姿勢を忘れない。
2011年はうさぎ年である。「今年は年男。いい年にしたい」と笑顔でコメントした柏木は、久しぶりのアジアの大舞台でうさぎのようにピッチを躍動できるのか。圧倒的なテクニックと運動量、存在感で見る者を魅了した2006年のAFC・U−19選手権の再現をぜひとも見せてほしいものだ。
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