静学と日章学園、ポゼッションサッカーの対決へ=<2回戦 静岡学園(静岡) 2−0 宇和島東(愛媛)、宮城県工(宮城) 0−2 日章学園(宮崎)>

中田徹

静岡学園が宇和島東に貫録勝ち

廣渡剛太の得点などで、静岡学園は2−0と快勝。順調な滑り出しを見せた 【鷹羽康博】

 コンパクトに守って、カウンターからの一発に勝機を見いだそうとした宇和島東だったが、前半、静岡学園のサッカーに翻弄(ほんろう)されてしまい、何もできぬまま2点を奪われてしまった。「ボールを奪った後、つなぐ前につぶされた。前半はそれで慌ててミスが多かった」(山本光生監督)。センターバックの三原麻生をストライカーのポジションに上げ、反撃を試みた後半は何度か静岡学園ゴール前まで迫ったが、「後半は何とかチャンスをものにしたかったんですけど、最後の壁も厚かったですね。静岡学園はDFの力も強かったです」と決定機を作るまでに至らなかった。

 宇和島東の山本監督をうならせた静岡学園の“最後の壁”。それはセンターバック、キム・テギ主将を中心とした出足の鋭い守備のことだ。47分、キムとセンターバックコンビを組む松本翼がボールをロストし、宇和島東がチャンスを作りかけた。しかし、キムは相手チームのエース、有間潤に対し素早く体を寄せてカットし、巧みにコーナーキックへ逃れた。

 静岡学園は58分、59分、72分と後半だけで3本も宇和島東のシュートを至近距離でブロックしている。多彩な攻撃で知られる静岡学園だが、守備での球際の強さが後半、非常に目立っていた。
「うちの(ボールの)失い方が悪く、カウンターを食らった。でもギリギリのところで寄せてブロックもできていたので、守備はまあまあだと思います。DFは粘り強くやってくれた」と川口修監督は守備陣を高く評価した。

 一方、宇和島東からすれば、後半せっかく敵陣深くまで侵入してもシュートを打ち切れないように、「静岡と比べてすべての面で劣っている。技術面、戦術面を下から底上げしていかないと難しいというのは肌で実感しました」(山本監督)と、単独チームの強化というより県全体の各年代のレベルアップの重要性まで痛感させられる試合となってしまった。

日章学園もポゼッションサッカーで快勝

日章学園も2−0と快勝。翌日の静岡学園戦をにらんで、後半は選手を温存した 【鷹羽康博】

 静岡学園の貫録勝ちといった三ツ沢会場2回戦の第2試合だったが、第1試合では日章学園が同じような内容と試合展開で、宮城県工を2−0と同スコアで下している。静岡学園の4−2−3−1システムに対し、日章学園は4−2−2を採用しているが、ポゼッション型の攻撃サッカーという点では志は同じ。特に日章学園の前半はハーフコートゲームとも呼べそうなほど一方的なもので、「技術面もそうですし、いろんな意味で圧倒できたと思う。そういう意味からプレー全体のゆとり、ゲームの流れのゆとりがあったと思います。前半はどんどんボールを動かしてプレッシングを早く、相手のボールを奪っていた。前半与えたシュートはゼロに近かったと思う。そういうサッカーがもうひとつふたつ上のチーム相手にできればいいなと思います」とチームを率いる早稲田一男監督からしても納得がいく内容だった。

 後半はちょっとトーンダウンしてしまったが、それも連戦を見越して無理をしなかったから。「『あんまり前へ前へ行かなくていいよ』っていう指示が消極的な守備、消極的な攻撃につながった。普段通りのサッカーじゃないもんですからミスが生じ、なかなかリズムができなかった。あそこから修正がきかなかった」と早稲田監督は後半起こった現象を説明している。

 左MFを務める福満拓人を前半いっぱいでベンチに下げたが、これも「昨日微熱があった。プレーを見たら息が上がっていた。これが0−0だったら交代させていなかったでしょうが、セーフティーリードの2点差というのもあって代えた」(早稲田監督)という理由があってのもの。早稲田家の三男、MFの進平も「(この日の出来は)悪くなかったと思います。よくさばけたしミスも少なかったし、リスタートの精度も良かった」というプレーを見せたが、「すべて明日のゲームを考えた時に少しでも疲労感をなくしたかった」と71分に下げている。つまり、日章学園は連戦を見越して試合の中で積極的な休養を取りながら戦っているわけだ。

「力は僕自身、自信があるんですけど、上には上がおります。ただ、今日の前半みたいなサッカーが80分通してやれれば、かなりのチームとやって、負けることがあっても劣ることはないんじゃないかという気はしています」と、早稲田監督は今季のチームに相当な手応えを感じている。

3回戦の三ツ沢会場は大会屈指の好カードに

大島僚太(10)を中心とする静岡学園に日章学園が挑む 【鷹羽康博】

 2回戦で三ツ沢会場を沸かせた静岡学園と日章学園の両校が、3日に行われる3回戦で激突する。場所はやはりニッパツ三ツ沢球技場。ここはコンパクトなサッカー専用スタジアム独特の空気漂う素晴らしい舞台だ。

「(日章学園は)個々の技術が高いチーム。今日(の宇和島東)みたいに守られてカウンターのようなチームを、うちは苦手にしている。日章さんはその分、自分たちでポゼッションしてやってくるチーム。やってみないと分からないですが、うちとしてはやりやすいかもしれません」(川口監督)

「(静岡学園の)初戦を見たらかなり完成度が高い。やっぱりうちもチャレンジャーとしてぶつかっていくしかないと思います。ただ下手に引いてうんぬんよりも自分たちの普段通りのサッカーを目いっぱい表現できればいいと思います。(いい試合をやれるという自信は)かなりあるというか、『そうありたいな』という願望と、『ある程度やれる』という自信もあります」(早稲田監督)

「今年の高校選手権はかなり面白い」と評判の今大会。静岡学園対日章学園の対決もハイレベルな試合が期待できそうだ。

<了>
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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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