小平奈緒「ソチ五輪で頂点を目指すための1年」=五輪銀メダリストの新シーズン

高野祐太

ソチ五輪へ向け、新たなスタートを切った小平 【高野 祐太】

 バンクーバー五輪の女子チームパシュート(団体追い抜き)で日本女子最高の銀メダルを獲得した小平奈緒選手(相澤病院)。1000メートルは銅メダルと100分の8秒差の5位で、1500メートルも日本選手としては18年ぶりの入賞となる5位に入る結果を残した。さらに進化すべく、2014年のソチ五輪に向けてスタートを切った今季の取り組みなどを聞いた。

悔いの残る個人種目

――銀メダルは、今どうしていますか?

 ケースに入れて自宅に置いてあります。飾ってはいないんです。そろそろ実家に手放してもいいかなと思っています。銀は銀。次は金メダルを目指してやっていくしかないという気持ちなので。

――500メートルは12位でしたし、小平さんにとって五輪での個人種目の結果は満足できるものではなかったようにも思いますが

 1000メートルは金メダルも手に入ったんじゃないかという悔いがありますが、1500メートルは自分で評価していいレースでした。一番悔しかったのは、やはり500メートルですね。

――500メートルのレース後から1000メートルまでのわずかな時間で、うまく気持ちを切り替えられたのには、(信州大の)結城匡啓監督から掛けられた言葉もあったんでしたね

 両親の「私たちはここにいるだけで幸せだからね」というメッセージをレース前に伝えてもらったんです。それで「あっ、そうか。自分の滑りをすればいいんだ」と分かったので、スッと切り替えられました。普段はレース直前に結城先生と会話を交わすことはないんですが、あのときはプラスに働きましたね。

いろいろ大胆に試してみる時期

――バンクーバー五輪を踏まえて、今、どういうことに取り組んでいますか?

 思い切った意識をしてみるというか、ちょっとずつ変えるのではなくて、今はいろいろ大胆に試してみる時期なんじゃないかなと思っています。道具(を変える)とか癖とか、時間のかかる、リスクの高いことからやっています。理想像は自分の頭の中にあって、それに近づけるようにやっていくうちに何かのきっかけでいきなり理想に近づくこともあると思います。時間のかかることかも分からないですし。今できることはしっかり自分の頭の中でイメージして、結城先生も計画してくれているので、あとは世界を転戦して感じる経験と自分の頭で行う分析力が今、大事なんじゃないかと思っています。

――結城監督は、「理論的に確固たる理想の滑りというものがあるんです」とおっしゃっていました

 そうですね。その普遍的なものが1つあって、どうやってそこに到達するかを考えています。もちろん速い選手から学べる部分はありますが、その人の癖である場合もあるので、そこを見極められる能力も必要です。多分、先生の中でも私の将来の滑りをイメージしているはず。先生のイメージと私のイメージがだいたい一致していると思います。だから、二人の間で通じる言葉で説明がつくんです。それは記号とかサインでなくて日本語ですよ(笑)。周りの人が聞いたら何だと思うかもしれないし、違う意味でとらえるかもしれないですが、二人には共通のイメージがあります。

――理想の滑りのポイントは?

 静止した形ではなく、動画、それもスローモーションではなくて、動きの速さそのものの中にあります。一連の流れ、もっと言うと、力なんです。力を見る。それを感じます。大事なのは、動き全部がつながっていること。(1つずつの動きの)のりしろが厚い感じというか。紙と紙を合わせたときに、そこが途切れていない感じです。カナダ選手の滑りは、動きが止まらず、ダイナミックに体を使える。無駄なく100パーセントの力が氷に伝わっている感じを受けるので好きです。私にも向いているんじゃないかなって思います。

――理論派にも思えますが、「氷と仲良くする」というような発言のように、感覚を大事にしていますね

 感覚を大事にしていますね。理論については先生が深く考えてくれているので、それを教えてもらうときに自分の体でイメージします。例えば、英語を話せる人が英語を日本語に訳してからではなく、英語を英語のまま受け入れて話すという感じです。

――これまでの4年間とはスタートラインが違ってきていますか?

 バンクーバーの4年前は、そこに向けた過ごし方ではありませんでした。国内戦でもインパクトを残してバンクーバーに向かって行けるような。周りに印象付けることを目指して始まった1年目でした。でも、ソチに向けてはやっぱり金メダル、頂点を目指して行きたいので、そのために何ができるかという1年目のシーズンを送れています。

――地域に貢献したい思いも強いんですよね

 そうですね。五輪が終わって帰って来たら長野県内が大変なことになっていました。これだけたくさんの人が応援してくれたんだから、私ができることであれば地域に恩返ししたいなと思うようになっています。

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著者プロフィール

1969年北海道生まれ。業界紙記者などを経てフリーライター。ノンジャンルのテーマに当たっている。スポーツでは陸上競技やテニスなど一般スポーツを中心に取材し、五輪は北京大会から。著書に、『カーリングガールズ―2010年バンクーバーへ、新生チーム青森の第一歩―』(エムジーコーポレーション)、『〈10秒00の壁〉を破れ!陸上男子100m 若きアスリートたちの挑戦(世の中への扉)』(講談社)。

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