ヴィクトワール2cm差の劇勝! デムーロ「夢かなった」=有馬記念

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仏遠征の敗戦を糧に……「かわいい子に旅をさせた甲斐あった」

角居調教師(左から2人目)も感無量、秋の仏遠征は無駄ではなかった 【スポーツナビ】

 「ヴィクトワールピサの戦法として、勝つにはあれしかないという騎乗でした。ジョッキーもよく研究してくれていました」と、角居調教師も絶賛の手綱。戦前、2500メートルの距離はやや長いと見られていたが、「レースはペースにもよりますし、きょうのレースはこの馬にとっていいペース、そしていいポジションも取れました」とデムーロは話す。距離ロスのない経済コースを通れる最内1番枠という幸運もあったが、それを生かしきり、ペース、馬群の流れなどすべて読みきった最上の騎乗だったと言えるだろう。

 もちろん、ヴィクトワールピサもフランス凱旋門賞での苦い敗戦、そしてJC3着を経て鮮やかなステップアップを見せてくれた。「海外から帰ってきて、馬が少しずつ良くなっていました。帰国当初はピリピリしていましたが、ジャパンカップを使ってから落ち着きが出てきました」と、この中間の上昇ぶりを振り返った角居調教師。フランス遠征では初戦のGIIニエユ賞4着、本番のGI凱旋門賞7着と、世界の壁の高さを痛感させられた敗北だったが、その中でもヴィクトワールピサはこの経験を糧にレベルアップしていたのだ。
 「かわいい子に旅をさせた甲斐がありました」。角居調教師もこの秋の遠征は無駄ではなかったと、笑顔を浮かべた。

ウオッカ、カネヒキリの後を継ぐ「真のスターホース」へ

ウオッカの真の後継馬へ、ヴィクトワールピサが2011年はさらに高みへと突き進む 【スポーツナビ】

 年末の大一番を制し、これで皐月賞に続きGIは2勝目。ダービー3着、ジャパンカップ3着の実績もあわせて考えると、年度代表馬レースにも一気に有力候補として名乗りを挙げた。
 そして、さらなる飛躍が期待される2011年シーズンに向けて、トレーナーは「海外遠征もプランの1つ」と明言。デムーロも「本当にファンタスティックな馬」と、ヴィクトワールピサの可能性を後押しする。

 また、角居厩舎の看板であり、日本競馬界のエースでもあったウオッカ、砂のカネヒキリが惜しまれつつ今年引退したが、この有馬記念はヴィクトワールピサがその後を継ぐ真のスターホースとして認められたレースでもあるだろう。
 「厩舎の核になる馬が世代交代する1年だと思っていましたが、こうしてすぐにヴィクトワールピサが引き継いでくれたことがうれしいですね」

 先輩から託された“エース”のバトンを胸に、ヴィクトワールピサがウオッカ、カネヒキリを超える活躍を――そして、ウオッカたちが果たせなかった海外GI制覇の夢へ、2011年まっしぐらに突き進む。

10億円超えも鬼脚届かず……だが力は見せた

2年連続の銀メダルに泣いたブエナビスタ……スミヨンは位置取りを悔やんだ 【スポーツナビ】

 最後の最後に見せた末脚の破壊力は、さすが2010年の主役。上がり3ハロンの数字はただ1頭、34秒台を突破する33秒8。この極限タイムが示したように、勢いは完全にブエナビスタだった。ギリギリ差し切ったかにも見えたゴール前だったが、写真判定は無情にも2センチ差の敗北。父スペシャルウィークが1999年の有馬記念で味わった同じ「ハナ差」で、そして2年連続2着の涙を飲んだ。
 「本当はもう少し前で競馬がしたかったんですが、スタートがあまり良くなくて……」とスミヨン。道中は後方から5番手の位置を進み、「リラックスして馬を走らせたかったので、無理には動けなかった」と、スローペースの中をジッとこの位置で我慢していく。ひと足早く抜け出したヴィクトワールピサ目掛けて、最後の直線はまさに“鬼脚”で強襲するが、文字通りあと一完歩が届かなかった。

 「中山では真ん中よりも前に行かないとダメだというのは分かっていたんですけど、修正できませんでした」
 無念の表情を浮かべたスミヨン。それでも「最後はすごい脚だった」とも語った言葉は、競馬ファンすべての共通の思いだろう。この秋の王道GIはすべて1番人気に支持され、1着、2着、2着と、期待に100%応えられた成績ではなかった。それでも、敗れた2戦はJCの降着も含めて“力負け”の印象は微塵もない。現役最強馬の力を十分に見せたこの秋の3戦だった。

 なお、ブエナビスタは今年のJRA獲得賞金が5億2273万6000円(本賞金+付加賞)となり、2009年のウオッカを抜いて牝馬の年間最多獲得賞金馬に。また、通算獲得賞金が10億2191万3000円となり、JRA史上11頭目の10億円ホースとなった(賞金ランキングは史上9位)。

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