2012年はユーロと五輪に出たい=スペイン代表FWフアン・マヌエル・マタ

工藤拓

多くの主力が去ったバレンシアを、マタ(左)は力強くけん引する 【Getty Images】

 現在、バレンシアで最も充実したキャリアを過ごしているのは、この男だろう。フアン・マヌエル・マタ、22歳。20歳でスペイン代表にデビューし、南アフリカで行われた今年のワールドカップ(W杯)でも、わずか20分のみの出場であったが世界チャンピオンの一員となった。所属するバレンシアでは昨シーズンから10番を担い、チャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得(3位)に大きく貢献。今季CLでもチームをベスト16に導く一方、U−21代表ではキャプテンマークを巻き、ロンドン五輪出場を目指している。そんなマタに、チームのこと、スペイン代表のこと、さらにはこれまでのキャリアや今後の目標について、あますところなく語ってもらった。

苦しんだ末に獲得した国王杯

――ビジャ、シルバ、マルチェナ、バラハ……今夏、多くの主力が退団していくのを見るのは辛かったのでは?

 あれは必要な売却だった。クラブは経済状況が悪いから。でも代わりに良い選手たちを獲得できた。チームは競争力を保てていると思うよ。

――ビジャ&マタのコンビが見られないのは残念だ。2人のコンビは本当に素晴らしかったからね

 彼のそばでプレーできるのは誇りだった。偉大な選手だし、僕らはお互いをよく理解しあっていた。でも今もチームには素晴らしいFWがいる。彼らは多くのゴールを取ってくれるはずだよ。

――多くの主力が抜けたにもかかわらず、今季バレンシアは素晴らしいスタートを切った。好調のカギは何だろう?

 監督が変わらず、チームの哲学とプレースタイルを継続できていること。このグループを信じ、現在のチームの可能性を信じてプレーしていることが、良いパフォーマンスにつながっているんだと思う。

――メンバーが変わったことでサッカーに変化はあった?

 哲学とプレースタイルは変わっていないけど、戦術的には2トップでプレーすることが増えた。昨季はほぼ常に1トップだったからね。2人(ソルダードとアドゥリス)は良いストライカーで、お互いをよく理解し合い、チームのために献身的にプレーしている。

――自分自身、チーム内での役割、重要性に変化があったのでは?

 選手は年齢を重ねるごとに、より大きな責任を持ってプレーすることを望むものさ。でも僕がやることは、これまでと変わらない。毎年成長できるよう努力し、チームに貢献するだけだ。

――でもエースとしての自覚が芽生えてきたように見える。以前より10番が似合っているし

 そうかな(笑)、10番は好きなんだ。昨シーズンに受け継いだんだけど、選手にとっては素敵な番号だよね。

――バレンシア加入当初は、なかなかプレー機会がなかったけど、その後就任したクーマン監督の下で定位置をつかんだ。当時、クラブとチームが最悪の状況にあった中で、君はバレンシア唯一の希望だった

 そうだね。1年目は難しい時期だった。キケ監督がすぐに解任され、その後は監督や会長が何度も変わってチームが混乱した。でもクーマンが来てから継続してプレーできるようになり、最終的に国王杯で優勝することができた。

――その一方でクーマンは、アルベルダ、カニサレス、アングロら中心選手をチームから切り離す不可解な決定をした。そのような扱いを受けるチームメートを見るのはどんな気分だった?

 奇妙な状況だったよね。彼らは長年チームに在籍する、重要な選手たちだったから。でもそれは監督の決断であり、僕らは受け入れるしかなかった。でもあのころは、サッカー以外の問題がチームに悪影響を及ぼしていたのは確かだ。

――苦しんだだけに国王杯優勝の喜びは大きかったのでは?

 苦しんだシーズンの中で救われた瞬間だった。リーグはうまくいかず、降格圏近くまで落ちたこともあった。そんなシーズンが、国王杯というめったに取れないタイトルの獲得で救われたんだ。

――翌年には、会長も変わってクラブはどん底の状況から抜け出し、エメリ監督が就任した。彼はチームにどんな影響をもたらしたんだろう?

 エメリが来たころは、会長が状況を落ち着かせ、チーム、クラブともに通常の状態に戻って再スタートするところだった。それがチーム作りにプラスに働いたと思う。その後、エメリはサッカーにおける自分のコンセプト、信念をチームに植え付けた。何より厳しさを要求し、チームを構成する選手全員が重要であると感じさせてくれた。

――エメリ監督が目指す、バレンシアのサッカーとは?

 僕らが目指すのはボール支配。でも、前線にスピードある選手がそろっているので、速攻も大きな武器となっている。優れたウインガーがサイドを崩してクロスを上げ、点で合わせるのが得意な2人のFWがフィニッシュするんだ。

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著者プロフィール

東京生まれの神奈川育ち。桐光学園高‐早稲田大学文学部卒。幼稚園のクラブでボールを蹴りはじめ、大学時代よりフットボールライターを志す。2006年よりバルセロナ在住。現在はサッカーを中心に欧州のスポーツ取材に奔走しつつ、執筆、翻訳活動を続けている。生涯現役を目標にプレーも継続。自身が立ち上げたバルセロナのフットサルチームは活動10周年を迎えた。

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