「欧州vs.南米の図式はそろそろ覆される」=北澤豪氏が予想するクラブW杯の展望<後編>

スポーツナビ

北澤氏は躍進を期待するクラブとして、パチューカと城南一和の名前を挙げた 【スポーツナビ】

「欧州王者のインテルに絶対的な力はない。かつてないほど波乱の起きる可能性は高いのでは」。テレビ解説者としてクラブワールドカップ(W杯)を見てきた北澤豪氏は前編でインテルの問題点を指摘すると同時に今大会の展望をこう予測した。
 北澤氏が躍進を期待しているチームは北中米代表のパチューカ(メキシコ)とアジア代表の城南一和(韓国)。パチューカに関しては育成面を根拠に「欧州と南米の2強に割って入る力がある」と評価し、城南については「W杯・南アフリカ大会の韓国のように真っ向勝負を仕掛ければ、インテルも慌てる」と指南する。
 インタビューの後編では、この両チームに加えてもう1つの優勝候補である南米代表のインテルナシオナル(ブラジル)と、2大会連続出場のマゼンベについても語ってもらった。

ダレッサンドロは日本人にとって参考になる選手

インテルナシオナルの中心選手はこのダレッサンドロ(赤)。北澤氏は「日本人がモデルにする選手の1人」と評価する 【写真:アフロ】

――今大会でも例年のように欧州王者の対抗馬として挙げられるのが南米王者です。北澤さんはインテルナシオナルについてどのような印象をお持ちですか?

 しっかりした規律のあるすごく良いチームだと思います。ブラジル南部のチームは戦えるチームなんですよ。2006年のクラブW杯では欧州王者のバルセロナに勝って優勝しました。サンパウロやリオデジャネイロのチームとはまた違って、トーナメント制の大会ではインテルナシオナルのようなチームは強さを発揮するんですね。

――注目している選手はいますか?

 FWのソビスが帰ってきたでしょう。インテルナシオナルが前回出場した2006年は、その年の夏にスペインのベティス(現2部)に移籍しちゃったんですけど、今回はいますからね。彼は速いし、決定的な仕事ができる良い選手ですよ。
 インテルナシオナルにはパト(現ミラン)のように若い選手を育てる環境があります。今回も何人か若い選手がメンバーに入るという話を聞きました。

――インテルナシオナルで世界的にも有名な選手というと、ダレッサンドロの名前が挙がります

 彼もインテルのスナイデル同様、日本人にとっては参考になる選手だと思います。特別なスピードがあるわけじゃないし、強いキックがあるわけでもない。それでもトップクラスでできている。その秘密は何なのか。日本人がモデルにする選手の1人かなとは思います。
 あと有名じゃないですけど、守備的MFのチンガは川崎フロンターレでプレーしていた選手ですね(1999年に1年間在籍)。ベンチにいることが多いですけど、守備固めの選手としてチームにとっては重要な選手です。GKレナンは北京五輪のブラジル代表の正GKで、スペインのバレンシアでもプレーした選手(2008−09シーズンに1年間在籍)。バレンシアでは最初、レギュラーを務めていましたけど、シーズン途中にけがをしてしまって、昨年はシェレス(現2部)でプレーしていました。チームが2部に降格して古巣であるインテルナシオナルに戻った形ですね。

――戦力では劣っていながら南米のチームは毎回、欧州王者と互角以上の試合をします。昨年もエストゥディアンテス(アルゼンチン)がバルセロナをあと一歩のところまで追いつめました(延長の末にバルセロナが2−1で勝利)。南米勢の強さはどこからくるものなのでしょうか?

 クラブの規模が強さを決めるとは思うんですけど、南米のチームはそれをいつも覆してくれますよね。そこがサッカーの面白さでもあり、難しさでもあると思うんですよ。一番の要因はやっぱり個の能力でしょうね。その力がゴールを奪うことに向かっていることが大きいんじゃないかと思います。
 日本のファンはブラジルやバルセロナのパス回しが好きなんでしょうけど、彼らはゴールを奪うという大前提を忘れていないんですね。インテルナシオナルやグレミオなんかのブラジル南部のチームはゴールへの意識が特に強いと思います。「絶対に勝つ」という意識はアルゼンチンのそれに近いかもしれません。華麗に勝つというのがブラジルのイメージだと思いますけど、南部のチームは球際が本当に激しくて、戦いという感じなんです。それでも、ただ戦うという肉体的なぶつかり合いだけじゃなくて、基本的な技術も高水準で兼ね備えている。小粒かもしれないですけど穴がないから欧州のチームはやりづらいと思いますよ。

1/3ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント