「欧州王者インテルに絶対的な力はない」=北澤豪氏が予想するクラブW杯の展望<前編>
8日に開幕するクラブW杯の展望を北澤氏に語ってもらった 【スポーツナビ】
しかし、テレビ解説者としてクラブW杯を見てきた北澤豪氏は「欧州王者のインテルが優勝候補筆頭であるのは間違いない」としながらも、「インテルに絶対的な力はない。波乱が起きる可能性はかつてないほど高いのでは」と予想する。北澤氏が指摘するインテルの欠陥とは果たして何なのか。2回にわたってクラブW杯の見どころ・展望をお届けする。
不安定だけどインテルが一番の目玉
ベニテス監督(右)のサッカーがいまだ浸透せず、インテルは不安定な戦いを続けている 【Getty Images】
もう今大会で6回目ですし、継続的に開催できていることは評価できると思います。最初は不安視されてスタートしたわけじゃないですか。欧州と南米の2大勢力だけでいいんじゃないかというね。多少レベル差はあったとしても継続して6回目を迎えられるということは、W杯のような歴史は作れていないけれども、大会の意義みたいなものは表現できているんだと思います。
ここ2年は日本から離れてしまって、スタジアムで見られないことによる感じ方の違いはあるんですけど、カタールが2022年のW杯開催を勝ち取ったように、中東も力を入れてきているので、逆に日本も中東を知る必要があると思います。中東は日本のことを良く知っていますよ。欧州とも地理的に近いんで、下手をすれば中東の国の方が世界のサッカー事情を知っていたりする。大会を見ながら、“サッカーの今”を見ることができるんじゃないでしょうか。
――優勝候補の筆頭はやはり今年も欧州王者のインテルになると思われます。北澤さんは今年のインテルにどのような印象を持っていますか?
監督がモリーニョからベニテスに変わったことで、スタイルはやはり違ってきていますね。モリーニョの方がチームの統率は取れていました。監督がチームをきちんと統率できたからこそ3冠という結果も出た。チャンピオンズリーグ(CL)では守備の強さが光りましたね。準決勝のバルセロナ戦(合計スコア3−2で勝利)なんかはモリーニョじゃないとできない戦法だったんじゃないかと思います(編注:第1戦を3−1で勝利したインテルは敵地での第2戦、選手全員が自陣に引き、バルセロナの猛攻を1失点でしのいだ)。
今、ベニテスは、もっとパスをつないでいくサッカーに移行しようとしていますよね。ベニテスのサッカーは選手がワイドに開いてパスをつなぐサッカーだから、選手間のギャップを突かれて失点したりする。11月には連敗を喫したり不安定な戦いが続いています。それでも地力があるから大事なところで勝てたりはするんですけどね。
――攻撃的なサッカーに移行しているのはベニテス監督がやはりスペイン人だからでしょうか?
そうでしょうね。以前に率いていたバレンシアやリバプールでもやはり攻撃的なサッカーを目指していましたから。ただ、バレンシアでやっていたサッカーをリバプールには持ち込んでいないし、リバプールでやっていたサッカーをインテルに持ち込んでいるわけでもない。
今、欧州では監督の目指すスタイルに対して選手をどうあてはめるかという形になっていますよね。それで選手がそのスタイルに対応していかないとチームはうまくいかなくなる。
その中でもインテルのようなビッグクラブはけが人が続出してもあれだけのチームが作れる。監督が目指すサッカーにあてはめることができる選手がいるというのは強みにもなるし、監督と選手がお互いの持つイメージを共有できればチームとしてもともと持っているポテンシャルから勝てる力はおのずと大きくなりますよね。今回出場するチームの中では、インテルが一番の目玉になるのは間違いないと思います。