アルゼンチン対ブラジル、最大の勝者はメッシ
アルゼンチン代表で唯一無二の選手であることを証明
ブラジル戦で終了間際に決勝ゴールを決めたメッシ 【写真:ロイター/アフロ】
メッシの資質をいまや疑うものはいないが、ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会でアルゼンチン代表としてプレーしたメッシが、バルセロナでのメッシとは別人だったという批判はよく聞かれる。だがこの日、メッシは宿敵ブラジルとの試合で、唯一無二の選手であることを証明した。試合後には、「僕らは5年間もブラジルに勝っていなかった。だから、どんなことをしても勝つ必要があったんだ」と語っている。そしてマークの中にただ埋没するだけではなく、最後に試合を決めるという決意をもって、彼が日ごろクラブで披露しているパフォーマンスで相手を打ち負かした。
23歳のメッシは少年というより、すでに成熟した大人だが、サッカーがもはや子どもの遊びではなくなった12歳ごろから、地元アルゼンチンのチームでは頭角を現し始めていた。そして今では、アルゼンチン代表をけん引する存在となり、本人はピッチの外でもリーダとなる決意を固めている。バルセロナのチームメートで友人でもあるハビエル・マスチェラーノからキャプテンマークを譲り受けるのも時間の問題だろう。
メッシに厚い信頼を寄せるバティスタ監督
「彼はチームにとって非常に重要な存在だ。フィールドの中でも外でも、選手たちは彼の言葉に耳を傾けている」
この指揮官の言葉は、以前には聞かれなかったものだ。メッシとアルゼンチン史上最高の選手の座を“競う”前監督のディエゴ・マラドーナは、事あるごとにメディア向けにパフォーマンスを行った。メッシがW杯・南アフリカ大会で窮屈な思いをし、伸び伸びとプレーできなかったのは想像に難くない。
セントラルMFとして1986年のW杯・メキシコ大会でプレーし、優勝メンバーの一員となったバティスタは、監督の仕事をきちんと理解している。指揮官は選手の上に立つべきではなく、やや後ろから控えめに支える、論争など不必要だと。そして、メッシが今、大スターとして成熟し、さらに大きく羽ばたこうとしていることを。マーケティングの観点からも、このエースストライカーはアルゼンチン代表、そしてAFA(アルゼンチンサッカー協会)に恩恵を与える存在である。
だからこそバティスタは、アルゼンチン代表はこのベストプレーヤーを中心に構築し、指揮官が定義する4−3−3のシステム――ブラジル戦ではむしろ4−2−3−1になることが多かったが――を採用するべきだと分かっているのだ。4−3−3はメッシがバルセロナでやり慣れている布陣である。ブラジル戦のスタメンはメッシ、ゴンサロ・イグアイン、アンヘル・ディ・マリアの3トップが起用され、メッシとディ・マリアは最前線のイグアインより後方にポジションをとり、1トップ3シャドーのようになっていた。
実際、バティスタはチームがもっとボールを触るべきだと考えており、長い時間ボールを保持するために、テクニックのあるタレントでチームを構成しようとしている。しかし、ブラジル戦ではそれができなかった。パレルモに所属するニュースター、MFのハビエル・パストーレが試合に入り込めず、攻撃のつなぎ役として機能しなかったからだ。アルゼンチンの時間もあったが、全体的にはブラジルが優位に立つ試合となった。