王国ブラジルの威信回復のために=ブラジル代表マノ・メネーゼス監督インタビュー

ドゥンガの後を受けて、ブラジル代表の監督に就任したメネーゼス 【Getty Images】

 この夏のワールドカップ(W杯)、ドゥンガ監督率いるブラジル代表はファンタジーを犠牲にしてでも勝利を求める現実的なスタイルで臨んだにもかかわらず、ベスト8でオランダの前に敗れ、南アフリカの地を後にした。ファンタジーもなければ、結果も出せないカナリア軍団。地に落ちた王国の威信回復を託されたのは、世界的にはそれほど有名ではないマノ・メネーゼスだった。
 メネーゼスが監督に就任してからの成績は3連勝。そして17日にはカタールのドーハで宿命のライバル、アルゼンチンとの親善試合に臨む。この試合に向けて、メネーゼス監督は、若手を招集すると同時に、ドゥンガ監督時代に冷遇されていたロナウジーニョを1年半ぶりに代表に招集した。
 徐々に前任者との違いを鮮明にしつつあるメネーゼス。彼が求めるサッカー、そしてロナウジーニョ招集の意図とは? 宿敵との試合を前に、新指揮官に話を聞いた。

ブラジル代表監督に招へいされたことを誇りに思っている

――カタールで行われるアルゼンチンとの親善試合が注目を集めている。この試合はブラジルにとって、とても重要な一戦となるのでは? あなたは今回、若手選手を多くメンバー入りさせる一方で、ロナウジーニョやロビーニョといった経験豊富な選手も招集した。ロナウジーニョとロビーニョについて、特に前者は代表に呼ぶベストタイミングではないように思うのだが

 おっしゃることは分かるが、わたしは今回、ブラジル代表が新しい時代を迎えたこと、そして誰に対しても代表への扉が開かれていることを示したかったのだ。つまり、どのカテゴリーの選手であってもチャンスがあるということを。その一方で、新しいページをめくる時は、過去のW杯における出来事を教訓とし、新たな挑戦に向かって徐々に世代交代を図らなければならない。われわれはホームで開催するコンフェデレーションズカップやW杯を控えているからね。

――2014年のW杯について言えば、ブラジルは64年ぶりの母国開催となる。当時は決勝ラウンドでウルグアイに敗れ、準優勝に終わっていますが

 われわれは常に前を見据えなければならないと思う。当時のことはわたしも話には聞いているが、今は時代が違う。1950年という、だいぶ昔に起きたことをファンタジーとしていつまでも心に留めておくわけにはいかない。当時とは選手も異なれば、期待されていることも環境も違う。今日のサッカーはあの時代とは別物だ。マーケティングがあり、放映権があり、何もかもが異なる。
 だからこそ、今から準備を始めることが必要なのだ。もう一度、W杯でトロフィーを手にするためにね。14年に優勝したとしても、12年もタイトルから遠ざかっていたことになる。ブラジルのような国にとっては、長すぎるくらいだ。

――あなたが就任する前、CBF(ブラジルサッカー協会)は監督候補として別の2人にアプローチした。まずはルイス・フェリペ・スコラーリを招へいしようとしたが、彼は望まなかった。続いて、ムリシー・ラマーリョに接触したが、フルミネンセが承諾しなかった。そして、あなたがオファーを受けた。一番最初にアプローチされなかったことについて、過小評価されていると感じたことは

 それはないね。わたしはブラジル代表監督に招へいされたことを誇りに思っているし、満足している。14年のW杯に前年のコンフェデレーションズカップ、15年のコパ・アメリカ(南米選手権)、そして16年のリオデジャネイロ五輪と、母国でこれだけのイベントが開催される時に監督に就任したんだからね。プレッシャーにも打ち勝つことができると感じている。地元開催はわれわれを助けてくれるし、難しいことは何もない。わたしは選手たちを全面的に信じている。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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