28年ぶり快挙の一方で引っ掛かる事=世界バレー女子

田中夕子

ベスト4を決めた韓国戦後、喜ぶ全日本女子。準決勝では、世界ランク1位のブラジルと対戦する 【坂本清】

 28年ぶりの4強進出。
 開催国ゆえの恵まれた組み合わせや、2次ラウンドの4試合が2勝2敗だったことを差し引いても、ベスト4はベスト4なのだから、やはり快挙だ。
 だが、のど元に刺さった小骨のように、引っ掛かりを感じてしまうのはなぜか。
 負け方が問題なのか、はたまた勝ち方が問題なのか。

日本の負け方

 まずは負け方を振り返ってみる。
 中国とロシアに敗れた2敗。数字のうえでは同じ1敗だが、同じ負けでも内容は大きく異なる。
 中国戦の後で、選手が述べた敗因は「ミス」と「過剰な意識」。
 まず「ミス」を敗因と挙げたのは主将の荒木絵里香(東レ)だった。
「自分たちからミスを出さないようにと言われているのに、積極的なミスではなく、サーブやコンビなど出してはならないミスが続いた。相手もバタついていたのに、立て直すきっかけを与えてしまいました」
 そしてもう一つ、「過剰な意識」を敗因としたのは荒木と同じミドルブロッカーの井上香織(デンソー)だ。
「打数の多い1番の選手(王一梅)を意識しすぎて、ほかへの対応が遅れてしまった。ほかを意識すると今度はブロックに迷いが出て、また別の選手に決められる。止めるべきところを止められず、決定率を下げることができないまま相手のペースで進んでしまいました」
 どちらも共通するのは「相手にペースを与えた」ことであり、それを自分たちが提供したということ。

高さと技術を兼ね備えたロシアに、まさに力負けとなった日本。写真はスパイクを打つガモワと、ブロックを試みる山口 【坂本清】

 だが、4強進出を決めた後、2次ラウンド最終戦で対したロシアには様相が異なる。
 山口舞(岡山)はこう詳述した。
「相手(の身長、ジャンプ)が高いと分かっていても、スパイクの角度が想像以上でレシーブのコースがどこなのか、戸惑ってしまいました。ブロックに飛んでも相手が上から打つのが見えた。今までの相手とは次元が全く違っていました」
 ただ身長が高いからという単純な理由だけでなく、202センチのエカテリーナ・ガモワの利点を生かすために、セッターのエフゲニア・スタルツェアはガモワが最高打点で打てるように高さのあるトスを提供し、ガモワはそれを最も高い位置でヒットし、しなやかな腕の振りとともに日本のコートへたたき込む。身長が高いからではなく、それを生かす技術を持ち合わせているからこそなせる技の前に、第3セットこそ木村沙織(東レ)、竹下佳江(JT)のサーブで崩したが、その後のロシアはピンチらしいピンチも招かぬまま、ミスをする間も与えられずに力の差を見せつけられた形となった。

1/2ページ

著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント