自信を持ってプロの世界へ――早大・斎藤佑樹=2010年プロ野球ドラフト注目選手

矢島彩

球史に残る実績を残した大学4年間

 「自信がなかったら(プロへ)挑戦しようとは思わない」
 東京六大学リーグ史上21人目の通算30勝を達成。さらに史上6人目となる30勝と300奪三振。早大の斎藤佑樹投手(4年=早実高)は球史に残る実績を手に、運命の日を待つ。

 春先から1位指名を公言しているのは千葉ロッテと東京ヤクルト。その評価は不変だ。
 千葉ロッテの永野吉成チーフスカウトは、斎藤が心・技・体のバランスに優れた総合力の高いピッチャーであることを評価している。
「対応能力、試合をつくる能力などいくつかある中で、一番は“直球の質”の高さ。140キロ台後半の球速に加え、球質が重い点が素晴らしい」
 16日の立大戦は5回9安打3失点。31勝目を挙げたものの決して内容は良くない。
 ところが、試合後の斎藤の表情は明るかった。
「試合をやっていく中で、指のかかりが良かった。ストレートのキレがすごく良かったです。こういうことはよくあることなんですけど、今日はかなり良かった。これがコンスタントにできればいい」と、今後の理想も語っていた。

 また、永野スカウトは「これだけ注目されながら、一度もローテーションから外れる事なく4年間投げ続け、故障すらしなかった。“肩の強さ”のたまものだろう」と、タフなフィジカル面も評価する。
 斎藤は、1年時から大学選手権、明治神宮大会の全国大会に出場。さらに国際大会や親善試合にも毎年欠かさず参戦してきた。それにも関わらず「練習は一度も休んだことがない」(早大・応武篤良監督)。リーグ戦では6、7回でマウンドを降りることが多く、イニング回数が少ないから参考にならないという声もあるが、年間稼動時間はどの選手よりも多い。

投手として必要な付帯条件をすべて兼ね備える

 さらに永野スカウトは、ハートの強さも指摘する。
「フォームに対しても常に“向上心”を持ち、試行錯誤しながらも、リーグを代表する立派な成績を残している。メンタル面もタフでプロ向き」。
 斎藤は昨年、スピードにこだわってフォームを崩した。トレーニングの成果で上半身に筋肉がつき、下半身とのバランスに影響が出た。斎藤自身も「フォームについてはよく指摘されます」と受け止めている。現状については「今は7割くらい。残りの3割は精度の問題です」と自己分析した。

 対戦相手の監督たちは「低めのボールに手を出さないこと」、「ストライクからボールになる変化球を見極められるか」を攻略ポイントに挙げている。変化球はチェンジアップ、スライダー、ツーシーム、カーブ、フォーク。今春などは高めに浮きがちだったが、少しずつ解消されつつある。
「球種も豊富な上にマウンドさばき、けん制、守備力と投手として必要な付帯条件をすべて兼ね備えている」(永野スカウト)。

 主将として迎えた集大成の秋、リーグ優勝まであと1勝に迫っている。振り返れば斎藤はずっと節目を飾ってきた。早実高時代は3年夏の甲子園で延長引き分け再試合の末に優勝。 早大1年春には日本一に輝いた。注目を集める舞台で栄光を勝ち取ってきた右腕は、30日から始まるリーグ優勝を決める早慶戦でどのようなピッチングを見せるのか。そして、その先にあるプロの世界で、どのような活躍を見せるのか――。大学での4年間で確かな自信を手に入れた斎藤の“これから”は、ますます注目度が高まるだろう。

<了>
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著者プロフィール

 1984年、神奈川県出身。『アマチュア野球』、『輝け甲子園の星』『カレッジベースヒーローズ』(以上、日刊スポーツ出版社)や『ホームラン』(廣済堂出版)などで雑誌編集や取材に携わる。また、日刊スポーツコム内でアマチュア野球のブログを配信中

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