西山、銀メダル獲得の要因は「組み手のうまさ」=現役柔道家・矢嵜雄大氏による世界柔道解説リポート
男子90キロ級で金メダルを獲得し喜ぶイリアディス(右)と、視線を落とす銀の西山=国立代々木競技場 【写真は共同】
男子90キロ級では、19歳の西山大希(筑波大)が決勝まで勝ち進み、2004年のアテネ五輪男子81キロ級金メダリストのイリアス・イリアディス(ギリシャ)と激突。延長の末に敗れたが、銀メダルを獲得した。また、今季の同階級世界ランク1位として大会に臨んだ小野卓志(了徳寺学園職)は、3回戦でイリアディスと対戦し、優勢負けを喫している。
男子81キロ級では、高松正裕(桐蔭学園高職)が準決勝で敗れたが、3位決定戦で勝利し銅メダルを獲得。また女子70キロ級でも、國原頼子(自衛隊体育学校)が銅メダルを獲得している。
今回は男子選手の戦いぶりについて、現役柔道家・矢嵜雄大氏(了徳寺学園職)に解説していただいた。
以下、矢嵜氏による解説。
決勝での敗戦も「大きな経験になった」
よかったのは外国人に負けないフィジカルと組み手のうまさ。西山選手は組み手のいなしやズラしなど、組み手さばきのうまい選手だと思います。
準決勝までは左の釣り手をしっかりついて、間合いを取った戦いを徹底し、体の軸を保った上で大外・大内刈り、内股で攻め抜いていました。それが決勝まで勝ち進んだ勝因だと思います。
決勝はイリアディス選手の組み手のうまさやしつこさもあり、左の釣り手を準決勝までのように保てませんでした。そのため圧力を掛けて間合いをつぶして背中をつかんでくるイリアディス選手の組み手になり、イリアディス選手優位の組み手時間が長かったように見えました。
イリアディス選手は延長に入ると、釣り手(右手)からではなく左の引き手から取っていく組み手にパターンを変えてきました。西山選手はその変化に対応できず組み負け、最後は払い腰で投げられてしまったと思います。
試合の時間帯で組み手を変える、イリアディス選手の試合巧者ぶりが光りました。西山選手はまだ若く、経験が浅いことから対応できなかったのだと思いますが、そういう意味ではこの大会は大きな経験になったと思います。
小野はイリアディスの組み手の強さに敗れる
イリアディス選手はあまりほかの国際大会に出ず、この世界選手権に照準を合わせてきたように見えました。今後も日本90キロ級のライバルになりそうですが、小野選手は競った試合をしていたし、またこれからロンドン五輪を目指し頑張ってほしいです。
あと、男子81キロ級は日本人にとって厳しい階級で、メダルは難しいと思われていました。しかし、そういう中で銅メダルを獲得した高松選手の活躍は大きかったと思います。
今回は調子も仕上がりもよく、得意の背負いも切れていて、思い切って柔道をしているように見えました。高松選手はこれまで世界選手権や五輪でいい成績を残せていなかったので、今回のメダルは日本の81キロ級、そして本人にとってもうれしいものだったと思います。
<了>
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