由規の161キロに見る速球伝説の味わい方=プロ野球ニュース通信簿
先週の五つ星ニュース 由規が日本人最速の161キロ
何かと“雑音”が多い神宮球場の161キロ
だからして今回の由規の161キロに関しても、やれ「神宮球場の表示だからあてにならない」とか「スピードガンの誤作動だ」とか、とにかく外野からの“雑音”は多い。
テレビ中継の球速表示が152キロだったことや他球場での由規の最高球速は150キロ台前半の場合が多いということも何かとケチがつく理由だろう。中には「右投手の左打者に対する内角低めのストレートは特に球速が出やすい」という、まさに由規がスレッジに対して投じた1球のみに的を絞った雑音まで耳にしたほどだ。
おまけに近年はYouTubeをはじめとする、いわゆるインターネット動画サイトが普及し、誰でも簡単に由規の161キロを映像で追確認できる時代になった。よって球場の球速表示をそのままうのみにせず、自分の目で確認しては懐疑的に語る人も増えた。そう考えると、今回の“161キロ”という偉大な記録は残るものの、人間の“浪漫”をくすぐるような伝説じみた余韻(よいん)は、今後ますます生まれにくくなるのかもしれない。
球速表示は素直に味わうのが粋!?
僕が子供のころ、「かつての国鉄の金田(正一)は160キロ以上のストレートを投げていたんだ」という伝説じみた話を年配のプロ野球ファンからしばしば聞かされた。それ以外にも「いや、一番速かったのは東映の怪童・尾崎(行雄)だ」「いや、阪神の江夏(豊)の2年目が一番速かった」などと興奮して語る人も多く、「江川(卓)の高校時代のストレートがなんだかんだで一番速かった」という伝説もいまだによく耳にする話だ。
現代のように簡単に映像を確認できるような時代でもないだけに真相は分からないが、どの話にも伝説の色気が漂っているというか、とにかく語りがいのある浪漫に溢れている。
大人になった今、僕はそういった先人の伝説に心のどこかで懐疑(かいぎ)的な一方で、だけどそれをいちいち否定するような無粋(ぶすい)なまねをしたいかと問われれば、答えは「ノー」だ。
「いや、たぶん金田はせいぜい140キロそこそこだったと思うよ」
そんなこと絶対に言ってはいけない。ましてや立証されたくもない。
世の中には確かめないほうが幸せな真相もある。浪漫とは幻想の中にあるのだ。
“最速”は大エースになってこそ輝くアクセサリー
由規という投手の最大の魅力はやっぱりストレートの速さだ。そう考えると確かに“161キロ”は最高の付加価値なのだが、それは彼が毎年2ケタ勝利を挙げられるような投手になってこそ輝くものであり、いわばファッションにおける“アクセサリー”みたいなものだ。
高級アクセサリーは装飾する本人が立派な人間じゃないと、どこか下品に見えてしまうことがある。だからして、まずはそれに見合う人間になるために自身を磨く必要があるわけだ。由規もそれと同じで、まず達成すべきは今季の2ケタ勝利(8月30日現在9勝)であり、今後大エースへの階段を昇っていくことだろう。近い将来、由規や前田健太(広島)らが中心となって、現在のパ・リーグのようなし烈なエース戦争をセ・リーグでも巻き起こしてくれれば、由規の“161キロのアクセサリー”もますます輝くというものだ。
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