「大山加奈の妹」からの卒業 ビーチバレーに転向、大山未希インタビュー
5月末、ビーチバレーへの転向を表明した大山未希。インドアで届かなかった夢に向かって、新たな一歩を踏み出した 【写真/ビーチバレースタイル】
未希は小・中・高校時代、すべて主将を務め、数々の大会で全国優勝を果たしたエリート選手だ。にもかかわらず、これまではいつも「メグカナの、カナの妹」という目で見られてきた。
今夏、初めて、未希は姉と別の道を歩み始めた。ビーチバレーでは男子の畑信也などが所属するグランディアへの所属が決まり、神奈川県藤沢市の鵠沼海岸を拠点に練習を積んでいる。関西を拠点とする藤原みか子とペアを組み、8月19〜22日に開催される「第21回全日本ビーチバレー女子選手権(ビーチバレージャパンレディース2010)」に出場する。ビーチバレーに転向してわずか約2カ月で、激戦区の大阪において予選を勝ち抜き、全国大会に出場するのは異例のことだ。
ビーチの新たなヒロインに……。そんな予感を漂わせる大山未希に、ビーチバレー転向の理由や、姉・加奈への想いを聞いた。
インドアでの達成感
今ビーチをやっている草野(歩=エスワン)選手と小学生のころから仲良しで、中学では選抜チームで一緒にプレーしたこともあります。その草野選手からずっと『ビーチやろうよ』と誘われていて、やってみたいなと思っていたんです。それに、スパイカー、リベロ、セッターといろいろなポジションをやってきたので、ビーチに向いているんじゃないかといろんな人から言われました。あまり全日本代表に行きたいという気持ちがあるわけではなかったですし。だから昨年5月に「1年間、しっかりインドアを悔いの残らないようにやりきって、それからビーチにいこう」と決めました。
――なぜそのタイミングだったのですか?
小学校1年生の時にバレーボールを始めて、常に強いチームで、もうずーっとやってきたことだから……もうそろそろインドアはいいかな、と。ぜいたくかもしれないですけど、Vリーグでも、最初に優勝した時(2007/08シーズン)はうれしかったんですけど、それからは優勝しても、もちろんうれしいんですけど、当たり前になっているというか、自分の中で目標を達成した感がありました。だから今度はビーチで頑張りたいと思ったんです。09/10シーズンは特に、自分も(3連覇に)貢献できたという気がしたので、やり遂げたと感じることができました。
――昔から全国優勝をされたり、ジュニア代表などにも選ばれたりしていましたが、全日本に入りたいという意識はなかったのですか?
なぜか小さいころからそうでしたね。小学生って、「将来の夢はオリンピック選手」みたいなことを書くじゃないですか。私はそういうこともなかったです。ただ、一度、絵里香さん(荒木絵里香=東レの先輩で、全日本の主将)が、普通の会話の中で「一緒にロンドン(五輪)行こうよ」と言ってくれて、それが私はすごくうれしくて、じゃあ頑張ってみようかなと思ったんです。でも(全日本は)大型セッターを育てるといいながら、結局そうはならなくて、「なんだ、そうなんだ」と。今年のリーグも、周りの皆がうまくなったねと言ってくれるぐらい、よかったと思う。最後のシーズンにしようという思い入れがあったからかもしれないですけど。それでも(全日本に)選んでもらえなかったから、もういいや、と。自分のやりたいことをやろうと思いました。
求められる自分への厳しさ
やはり自由になった部分が大きいです。それはいいところだし、逆に言えば、自分に厳しくないといけない。例えば、インドアなら、休みは週に1回で、あとは練習と決まっているけど、ビーチは自分次第。極端な話、今日は面倒くさいな、今日はもういいやと思ったら、そういうこともできてしまうので。
――プレー面で感じていることは?
まず砂に慣れなければいけないということです。インドアなら走って取れたボールも、走れなくて、届かない。スパイクも、ジャンプが思うように跳べない。コーチには、ボールのさばきはいいと言われるんですけど、足の運びが難しいです。風を読まなきゃいけないということもありますし。今までは何でも自分で考えて、それで結構できてしまっていたので、あまりコーチに教わるということがなかった。だから人にこんなに教えてもらってプレーするのは初めての経験です。注意されたりアドバイスされたりして、それができるとすごくうれしいですね。
あと、試合で負けた時に、周りからは『始めたばかりだからしょうがないよ』『これからだよ』と言われるんですけど、自分としては、勝負している限りは初心者も10年目も関係ないと思っているので、ものすごく悔しいですね。負けたくないです。子どものころから今まで、都大会や小さい大会でもほとんど優勝してきて、あまり負けることがなかったので、負けると悔しいです。