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イングランドで沸き起こるカペッロ懐疑論
東本貢司の「プレミアム・コラム」

殊勝さが見られるカペッロだが……

ハンガリー戦でウィングとして才気を垣間見せたアダム・ジョンソン
ハンガリー戦でウィングとして才気を垣間見せたアダム・ジョンソン【Getty Images】

 ワールドカップ(W杯)・南アフリカ大会後、ファビオ・カペッロの言動は徐々に殊勝なトーンを帯びてきたように見受けられる。最終的には一部采配(さいはい)ミスを認めたように、おおむね楽観的だったことへの反省まで吐露したのは結果からして当然にも聞こえるが、そこにはひとえにFA(イングランド協会)の機嫌を損なわないようにと振る舞う、明らかな“保身”の臭いもする。


 ひとつには、これまでお世辞にも反りが良かったとは言えない協会養成担当トレヴァー・ブルッキングとの「共同歩調路線」を受け容れる発言をした事実がある。要するに、若手の大幅な登用を図っていくということだが、関連する一連のトーンには、いかにも「しぶしぶ譲歩した」という割り切れなさがにじみ出ているように思えたものだ。そのあたりを敏感に感じ取ったのか、ファンの間にもカペッロ懐疑論が目立つようになっている。


「南アフリカ直前までは『さすがは歴戦の名将』だったのが、大会に入ってからそれが錯覚だったとしか思えなくなってきた」

「しょせんはクラブの監督としての名声であって、代表では話が違うということか。ましてやわれわれ(イングランド人)のメンタリティーを分かりようもない立場では……」

「結局は、マクラーレン時代の遺産をほぼそのまま踏襲して仕事らしい仕事もせず(W杯本大会までは)ボロが出なかったというだけなのかも」


 そんな膨れ上がる疑惑の目が、再起をかけた第一戦、ハンガリーとのフレンドリーマッチの意義を通常よりも“重々しく”とらえていたのも仕方のないことだったかもしれない。果たして、その“首尾”のほどはどうだったか――。

公約通りの若手起用

 ここで、ロイ・ホジソンのリヴァプール監督就任に伴って移籍の可能性がささやかれることになったハンガリーのキャプテン、ゾルタン・ゲラ(フルアム)の“感触”を引用すると――「あらためて(イングランド代表は)手ごわいチームだと思った。(2得点で勝利のヒーローとなった)スティーヴン・ジェラードが素晴らしいキャプテンだということも実感した。そんなジェラードと肩を並べてプレーするのも悪くない」


 この“言葉足らず”のゲラの口ぶりに、「でも、勝てない相手とは思わない」「確かにジェラードは一級品のプレーヤーだけど」と言わんばかりの“並みの手応え”をくみ取るのは穿(うが)ちすぎだろうか。もちろん、あくまでもフレンドリー、シーズン開幕直前の微妙なコンディション、一種の肩慣らし、手探り状態と言うべき顔見世イベントだとしても。


 それでも、若手抜てきの公約に合致するアダム・ジョンソン、アシュリー・ヤングの両ウィングは「このまま定着させてもいい」才気を垣間見せた。GKのジョー・ハートは「南アフリカで彼に賭けても良かったのに」と思わせる存在感をにじませた。フレッシュな明日の希望の星として期待されているジャック・ウィルシャーとキーラン・ギブズのデビューもあった。以上に、再起を期すテオ・ウォルコットを加えた6名が、新生スリーライオンズの有力なスパイス役だという“メッセージ”がひとまずの収穫――ということになろうか。


 そして、来るユーロ(欧州選手権)予選にて彼らの地位がどこまで向上するかによって、カペッロの腹のくくり方も見えてこようというものだが、チームとしてどうまとめ上げていけるかとなると、まだ“試行錯誤”が続くような気もする。それが、ゲラが言下に示唆した「現状はジェラード次第」という不確かさ、脆さにも通じる今後の課題なのだろう。

東本貢司
東本貢司

1953年生まれ。イングランドの古都バース在パブリックスクールで青春時代を送る。ジョージ・ベスト、ボビー・チャールトン、ケヴィン・キーガンらの全盛期を目の当たりにしてイングランド・フットボールの虜に。Jリーグ発足時からフットボール・ジャーナリズムにかかわり、関連翻訳・執筆を通して一貫してフットボールの“ハート”にこだわる。近刊に『マンチェスター・ユナイテッド・クロニクル』(カンゼン)、 『マンU〜世界で最も愛され、最も嫌われるクラブ』(NHK出版)、『ヴェンゲル・コード』(カンゼン)。

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