アルゼンチン代表監督はバティスタが有力?

暫定監督の正式就任は既定路線か

アルゼンチン代表暫定監督のバティスタ(左)。正式就任は既定路線か? 【写真:アフロ】

 アルゼンチンは11日に行われたアイルランドとの親善試合に1−0で勝利した。この試合で暫定的に指揮を執ったのがセルヒオ・バティスタ。AFA(アルゼンチンサッカー協会)は2014年ワールドカップ(W杯)・ブラジル大会に向けた新体制発表を行う10月まで、バティスタにA代表も任せることにしたのだ。とはいえ、いまやこのアルゼンチンU−20代表監督がディエゴ・マラドーナの後任になることは、特別なことが起こらない限り、ほぼ既定路線となっている。

 よくあることだが、こうした協会の“決定”を正当化する説明はほとんどない。監督人事に関するうわさはほかにも広まっているが、AFAの幹部たちはマラドーナ続投への議論をよそに、すでに決定を下したようだ。先のアイルランド戦(ディ・マリアの決勝点はオフサイドだったが……)と9月7日にブエノスアイレスで予定されているスペイン戦でよほどの大チョンボをしでかさない限り、A代表監督のいすは保証されたも同然だ。つまり、バティスタに必要なのは自らの手腕を披露して手柄を得ることではなく、ミスをしないことである。

国民に支持されるビアンチ

 バティスタの監督就任を後押しする2つの重要なポイントがある。1つは、86年W杯・メキシコ大会の優勝監督で、現在は代表のGM(ゼネラル・マネジャー)を務めるカルロス・ビラルドと個人的に良好な関係を築いていることだ(バティスタ自身、マラドーナらとともに当時の優勝メンバーだった)。

 そして、より重要な2つ目として、AFA会長のフリオ・グロンドーナの長男、ウンベルトとも結びつきが強いことが挙げられる。以前にも述べたように、ウンベルトは08年10月に代表監督のアルフィオ・バシーレが辞任した際、父親に後任としてマラドーナを勧めた人物だ。メディアの世論調査などで圧倒的な支持を受けているのはボカ・ジュニアーズで黄金期を築いたカルロス・ビアンチだが、AFAの後押しとアイルランド戦の勝利は、バティスタに有利に働くと言えるだろう。

 グロンドーナとビアンチの冷えた関係は知られたところである。だが、ビアンチを支持するちまたの調査結果は、10月の代表監督決定に何らかの影響を及ぼすかもしれない。なぜならグロンドーナにとって、来年自国開催となるコパ・アメリカ(南米選手権)で優勝することが、是が非でも必要だからだ。アルゼンチンは93年以来、南米王者のタイトルから遠ざかっている。
 しかし、ビアンチはビラルドとも犬猿の仲で、あいさつすらしようとしない。GMがビラルドである限り、代表監督を引き受けることはないだろう。実際、ビアンチは監督就任に興味を示しつつも、その条件にビラルドが一切干渉しないことを挙げている。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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