開会式に見る準備力=タジケンの甲子園リポート2010
炎天下の中、いかに万全のコンディションで臨めるか
北海道や東北でも当たり前のように35度近くになるこの夏。猛暑とも、酷暑ともいわれる異常な暑さの中、球児たちは炎天下のグラウンドで試合をしなければならない。いかに疲労を軽減させて、万全のコンディションで臨めるか。1回戦から登場すれば優勝まで6試合、15日間の長丁場。体調管理がポイントになる。
その意味で、「さすが」と思わせる学校があった。
興南高、広陵高、常葉橘高、日川高の4校だ。4校に共通していたのが、開会式での選手たちの姿。全員が長袖を着ていたのだ。午前9時に開会式が始まり、入場行進をする。自分たちが行進するだけならいいのだが、その後が長い。全チームが入場するまで外野で待機。さらに、高野連会長をはじめとする何人ものあいさつが続く。行進の順番が早いチームだと、30分以上、炎天下のグランドで立ちっ放しになる。もちろん、グランドには日陰などない。水分を取ることもできないまま、その間はずっと直射日光にさらされることになる。長時間、直射日光に当たると疲労感は倍増する。体調を考えれば、少しでも直射日光から身体を守る意識が必要だ。
長袖は発汗を抑える役割がある
「直射日光から守るというのがひとつ。それと、長袖は発汗を抑える役割があるんです。半袖だと一気に汗が出るけど、長袖は徐々に汗が出る。そういう意味でも身体にいいのかなと思います」
沖縄も暑いとはいえ、暑さの質が違う。昨夏はエースの島袋洋奨が終盤にスタミナ切れを起こして初戦敗退しているだけに、その経験を生かしての長袖着用なのだ。今年は南からの行進。興南高は前年優勝の中京大中京高に続く2番目の行進で待機時間が長かったため、やる価値は大きかった。
「効果があるかは分からないけど、準備はしておくということです」(我喜屋監督)
広陵高では、夏に直射日光を避けるのは当たり前の感覚になっている。
「広陵高では夏に長袖を着るのが伝統になっています。行進は特にですね。試合では動きにくいという子がいるので、七分袖の子もいますけど、半袖でやる子はいません。ピッチャーは特にそうですね。先輩たちがそうやっているので、言わなくても選手たちはそうしますね」(中井哲之監督)
常葉橘高も選手たちの自主的な行動だという。
「選手に任せていますが、直射日光対策でそうしたんだと思います。ホテルでもピッチャーは必ず長袖で過ごすようにしたり、そういう知識は教えているので。去年ですか? 全員長袖ではなかったと思います。もしかしたら、去年の経験からそうしたのかもしれませんね」(黒沢学監督)
ちょっとした準備の積み重ねが大きな差を生む
<長袖>
大分工高・田中太一、関東一高・白井慶一、蔵野就平
<七分袖>
報徳学園高・田村伊知郎
<五分袖>
大分工高・井上雄貴
「夏対策として、暑い中でできるように練習中も常に長袖です。半袖の方が解放感があって投げやすいので試合では変えることもありますけど……」と話す白井をはじめ、やはり、ほとんどが投手だ。プロ注目といわれる大分工高・田中、1年生時に甲子園経験もある関東一高・白井などは高い意識の表れだといえる。報徳学園高・田村は1年生。3年生の投手が半袖だったことを考えると、自分で考えての行動であることが予想される。今後の成長が大きく期待できる“気付き力”だ。
あこがれの甲子園の土を踏んだ感激による興奮、5万人近い観客の見守る中で行進する緊張。開会式は見た目以上に疲労感が残る。そのため、常連校になればなるほど、開会式当日はオフにして練習をしない学校は多い。それだけに、4校の直射日光対策、疲労軽減への意識の高さは光った。
ちょっとした準備の積み重ねが、大きな差を生む。開会式の時点から、すでに戦いは始まっている。
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