日本代表に“笑顔”をもたらした藤岡の快投=世界大学野球選手権・3位決定戦リポート

スポーツナビ

「外野にも飛んでこない」と思わせた圧巻のピッチング

世界大学野球選手権・3位決定戦で5回1安打無失点と好投した藤岡 【島尻譲】

 まさに“快投”だった。第5回世界大学野球選手権の3位決定戦が7日、神宮球場で行われ、日本は韓国に9対0で勝利した。試合の流れをつくったのは、先発の藤岡貴裕(東洋大3年)の堂々としたピッチングだ。初回から最速146キロのストレートを面白いようにコーナーに決め、5回を被安打1・四死球0で無失点、奪三振10と相手打線を牛耳った。打線も藤岡の投球に引っ張られるように伊藤隼太(慶大3年)の先制2ランなどで援護。4回までに9点を奪う理想的な試合展開で銅メダルをつかみ取った。

 マウンドで藤岡が跳ねた。「ストレートが走っていたので、真っすぐで押せて良かった」と振り返るとおり、躍動感あふれるフォームから切れのある直球を投じると、韓国打線のバットが次々と空を切る。榎本保監督は「(ベンチから見ていて)真っすぐ一本で抑えられる、5回、6回までは間違いなくいけると確信していた」と目を細める。主将の伊志嶺翔大(東海大4年)も、「センターから見ていて『これは打たれるどころか、外野にも飛んでこないな』と。あとは先制点を取るだけだな、と思っていました」と語る。野手陣は守備に思考を割かれることなく、攻撃に専心できたのである。それほどの安心感をこの日の藤岡は持っていた。

藤岡を輝かせた“細やかな制球力”

 特に効果を発揮したのは、右打者の外角にコントロールされたストレートだった。韓国の李淵守監督が「コントロールが素晴らしい。特に外角でストライクが取れるところがいい。われわれの投手もそういう力を付けなくてはいけない」と舌を巻く。球威だけではない細やかな制球力が、絶対に負けられない3位決定戦という舞台で藤岡を輝かせた。
 試合後には、涙を流す場面もあったという藤岡。だが、試合後にその理由を問われると、「いや、涙は……流してないです」と照れくさそうに笑った。少しはにかみながら記者の質問に答える姿は、1年生のころから変わらない。シャイなサウスポーは、「今日は(自分に)80点くらいはあげられると思います」と満足感をにじませた。

 世界一にはまたしても届かなかった。だが、榎本監督は「私もいろんなチームでやってきましたけど、チームワークでは一番だった。結束で勝ち取ったと思っている」と全員でつかんだ3位に感慨深げな表情。選手たちも「最後は笑って終わりたいと話していたので、銅メダルを取れて良かった」と口をそろえる。日本代表の暑い夏の戦いは、飛びきりの笑顔とともに幕を閉じた。

<了>

王貞治氏が決勝戦の始球式に打者で登場

世界大学野球選手権決勝の始球式で打席に立った王会長 【島尻譲】

 福岡ソフトバンクの王貞治球団会長が7日、第5回世界大学野球選手権の決勝、米国vs.キューバの始球式で打者を務めた。国際野球連盟のアントニオ・カストロ第三副会長の投じたボールに対し、左打席で一振り。往年のような一本足打法は見られなかったが、世界の本塁打王の鮮やかなスイングに、神宮球場は大きな拍手に包まれた。
 王会長は、「やっぱり日本が(決勝に)出ていなくて残念だね。でも(強豪の)アメリカとキューバの対戦ということで、楽しみ」と熱戦に期待をふくらませた。
 また、個人名こそ挙げなかったものの、「ことしの大学生は、今すぐにプロで通用する選手も多い」と大学球界のレベルの高さを評価。「秋のリーグ戦、そしてドラフトが楽しみだけど、(誰を指名するか)頭が痛い」とうれしい悲鳴を上げていた。
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