キューバに衝撃を与えた菅野の157キロ=世界大学野球選手権・キューバ戦リポート

スポーツナビ

日本投手陣を圧倒したキューバパワー

大学生最速タイの157キロを記録した菅野。3失点を喫したが、手応えも感じていた 【島尻譲】

 第5回世界大学野球選手権の第3日が1日、神宮球場で行われ、日本はキューバに7対12で敗れた。日本は先発の藤岡貴裕(東洋大3年)が初回に2本塁打を浴び先制を許すと、その後も4投手をつぎ込んだものの、キューバの勢いを止められず16安打4発を喫し、12失点と打ち込まれた。
 打っては0対3で迎えた2回、鈴木大地(東洋大3年)がライトスタンドにライナーで飛び込む逆転3ランを放つなど4点を奪い、一時は勝ち越しに成功。9回にも4安打を浴びせ3点を返す粘りを見せたが、大量失点が響き今大会初黒星を喫した。
 注目の155キロ右腕・菅野智之(東海大3年)は、7回から5番手で登板。3イニングを投げ被安打3・被本塁打2・与四死球1・失点3の成績だった。

 日本投手陣がキューバのパワーに圧倒された。試合前の打撃練習から、そのパワーは際立っていた。マウンドのやや手前から投げられる緩いボールを、代わる代わる打席に入る選手たちが次から次へとスタンドに放り込んでいく。キューバの選手たちのパンチ力がほかの出場国よりもワンランク上であることは、明白だった。それもそのはずで、キューバの先発野手は、9人中4人が昨年のWBCのメンバー。年齢も25歳以上の選手が多数そろい、日本の選手から見れば“格上”といえる。
 7回、5番手でマウンドに上がった菅野も、大砲の餌食となった。先頭のディアスにいきなり一発を浴びると、8回にはアブレウにライトへ2ランを喫する。完全に詰まらせた当たりを逆方向のスタンドまで運ばれた。悪い流れを断ち切るというリリーフの仕事を果たせず、菅野は「キューバは球の勢いだけじゃ抑えられないと分かった」と悔しそうに振り返った。

キューバとの再戦に向けて感じた手応え

 だが、菅野も黙ってやられていたわけではない。8回、相手4番のA・デスパイネの5球目だった。思い切り腕を振って投げた一球は、157キロを計測。澤村拓一(中大4年)に並ぶ大学生最速記録でそのキューバの度肝を抜いた。
 この菅野の球威には、キューバのサウラ監督も驚きを隠さない。
「彼はものすごい才能を持っている。ただ、才能というのは熟するタイミングがある。もう少し時間がかかるだろうが、彼はきっとものすごい大物になると思う」
 試合後の記者会見で「スガノ」の名前を聞くやいなや、通訳が話しているのをさえぎってまでそう語った。WBC経験者で、本塁打を含む3安打3打点の活躍を見せたセスペデスも「彼はすごい才能があるし、まだ大学生で若いから(セスペデスは1985年生まれ)、経験を積めばすごい選手になると思う」とその潜在能力に舌を巻いた。世界の強豪が菅野の才能を認めたのである。

 菅野は「最後の回(9回)にフォークを試してみたら、『(打者が)見えていないな』と感じた。次に生かせると思う」と決勝トーナメントでの再戦に向け、手応えを感じた様子。この敗戦でキューバのB組1位、日本の同2位が決まり、再び相見えるのは決勝ということになる。榎本保監督は大会前、「菅野にはフル回転してもらう」と語った。その言葉どおり、優勝には菅野の活躍が不可欠だ。世界一を懸けた大舞台で、キューバに借りを返すためにも、菅野はその光輝く才能でチームの勝利を引き寄せる。

<了>
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