今村、堂林――輝き放った新世代スター軍団=プロ野球フレッシュ球宴リポート
故郷で見せた成長の証し
「プロに入って、少しでも“変わった”ところを見せたい」
ウエスタン選抜で先発した今村猛(広島)は試合前、静かな口調ながら闘志を燃やしていた。広島のドラ1右腕は昨春のセンバツ優勝投手。1軍登板はまだなく、7月16日には社会人との練習試合で打ち込まれて敗戦投手になるなど、1つ上のレベルの壁にぶち当たっていた感があった。
しかし、この日は特別なマウンド。長崎・清峰高出身の今村にとって、フレッシュ球宴は“凱旋(がいせん)登板”の舞台でもあった。
「球場に入ったら、風景や芝の感触が懐かしかった」
家族はもちろん、友人、そして郷土の多くのファンの前でぶざまな姿は見せられない。
「しっかりと腕を振って投げることができました」
2回を投げて被安打2、そのうちの1本が細谷圭(千葉ロッテ)に浴びたソロで1失点。一方で三振は3つ奪った。この数字だけを並べればまずまずといったところ。ただ、それ以上に評価したいのは41球のうち速球系(ツーシームも含む)が39球。気持ちの伝わってくる投球だった。
「初回に筒香(嘉智/湘南)から(ツーシームで)三振を取ったのもうれしかったけど、大田(泰示/巨人)さんから真っすぐで勝負できて(三振を奪ったので)自信になりました」
普段は淡々と話す右腕もこの時ばかりは口元が緩んでいた。
広島に誕生したイケメン長距離砲
7回だった。先頭で打席に立つと、林啓介(千葉ロッテ)の初球の直球を左翼席にたたきき込む本塁打を放った。「手応えは完ぺきでした。毎打席狙っていたけど、やっと自分のスイングができました」と自信満々に振り返った。「これからもしっかり練習して早く1軍に上がりたい。将来はみんなに愛される選手になりたい」と話すが、由宇(広島2軍の本拠地)ではこのイケメン目当ての女性ファンがすでにかなり押し寄せているという。
このほかにも、ウエスタンの「1番・ショート」でフル出場した今宮健太(福岡ソフトバンク)は第1打席でレフトへクリーンヒットを放った。「自分の持ち味である全力プレーで頑張りたい」と今後へ意気込んだ。イースタンの3番打者を任された筒香は3打席でノーヒット1三振と振るわなかったが、湘南ではチーム断トツの13本塁打を放っており非凡な長打力を早くも発揮している。大型右腕の秋山拓巳(阪神)は1回を無失点に抑える好投を見せた。
登竜門をこじ開けた選手は!?
ことし、その門をこじ開けたのは岩崎恭平(中日)。08年ドラフト3位で東海大から入団した俊足内野手が、2回に「予想外」(ウエスタン選抜・川相昌弘監督/中日)の2ラン本塁打を放ち、試合の主導権を引き寄せた。「自分でもビックリしました。ウエスタンでもことし1本しか打っていないので」と恐縮したが、まだまだ伸び盛りの24歳。新たな才能が覚醒するかもしれない。
また、優秀選手にはウエスタン選抜から古川秀一(オリックス)と猪本健太郎(福岡ソフトバンク)、イースタン選抜からは斉藤彰吾(埼玉西武)と細谷が選出された。古川は今村の高校の先輩にあたり、やはりご当地選手。1イニングを3者三振の快投に「120点です」と大喜びした。また、猪本は育成選手として初めてフレッシュ球宴で表彰選手に選ばれた。
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ