歓喜と落胆の王子たち=2010年プリンスリーグ総括

安藤隆人
 4月から熱戦を繰り広げた2010年のプリンスリーグも終わりを告げた。今年も全国9地域を回ったが、どの地域も熱く、面白い戦いを見ることができた。各地で繰り広げられた熱い戦いを振り返るべく、注目を集めたチームを中心に総括していきたい。

柴崎擁する青森山田は前人未到の8連覇

柴崎率いる青森山田はプリンス東北8連覇を達成した 【安藤隆人】

 全国的に見て、順当な結果を残したチームのほかに、面白いチームはいくつかあった。まず安定した力を発揮し結果を残したのが、札幌U−18、青森山田、FC東京U−18、流通経済大柏、名古屋U18、C大阪U−18、広島ユース、愛媛ユースだ。
 無敗でプリンス北海道4連覇を果たした札幌U−18は、レギュラー11人中9人が1、2年生という非常に若いチーム。特に1年生は昨年度の高円宮杯全日本ユース(U−15)で準優勝に輝いており、主軸のFW下田康太、MF神田夢実、DF堀米悠斗の3人は、レギュラーとして活躍している。若いチームであるが、3年生のMF菅原康介、GKでキャプテンの松原修平がチームをけん引。安定したゴールキーピングを見せる松原と、破壊力抜群のドリブルと左足を持つ菅原が、チームに大きなアクセントを加えている。勢いに乗ったら面白いチームだ。

 青森山田はプリンスリーグ立ち上げから8連覇。前人未到の記録を達成した。今年もその力は圧倒的で、秋田商に13−0で勝利するなど、抜群の攻撃力が火を噴いた。昨冬の高校選手権準優勝メンバーが5人残り、その中には鹿島アントラーズ入りが内定しているMF柴崎岳、清水エスパルス入り内定のGK櫛引政敏ら全国屈指のタレントを擁する。彼らが軸となり、決定力のある成田鷹晃、高性能サイドアタッカー三田尚希、攻撃的右サイドバック横濱充俊らがサイド、中央とバランスよく攻め立てる。尚志に1度引き分けた以外は全勝、得失点差もプラス43という驚異的な数字で、盤石の優勝を果たした。

“関東の雄”FC東京U−18は安定した好チーム

 関東ではFC東京U−18が3連覇を成し遂げた。倉又寿雄監督の下、走力と高いテクニックを融合させたサッカーで、“関東の雄”となっている。今年のチームも各ポジションに個性的な選手を配置している。決定力のある秋岡活哉と前岡信吾の2トップを軸にした攻撃がウリで、攻撃的ボランチの佐々木陽次、武藤嘉紀と岩木慎也の両サイドアタッカーがうまく絡んで、迫力ある攻撃を展開。この攻撃力も守備があるからこそであり、「うちはあくまで守備ベース。ある程度守りながら相手の出方を見て、そこから自分たちの攻撃を考えることができる」と倉又監督が語ったように、センターバック松藤正伸を中心に、全員がハードワークをして前線から連動したプレスを仕掛け、ボールを奪ったら選手たちが自由に相手のウィークポイントを突いて攻撃を組み立てる。全国的に見ても、非常に安定した力を発揮できる好チームだ。

 FC東京U−18に次いで2位の流通経済大柏は、選手層という面ではJユース顔負けの存在だ。春先から多くの選手を起用し、プリンスリーグでもさまざまな組み合わせをテストしながら戦ってきた。終盤になると徐々にメンバーも固まってきて、安定した強さを発揮。守備の中心はGK松澤香輝とセンターバック増田繁人、守備的ボランチの古波津辰希の3人。増田は189センチの長身が武器で、空中戦には圧倒的な強さを誇る。古波津は豊富な運動量で攻守のつなぎ役としても存在感を発揮。彼らを軸とした堅い守備から、MF富田湧也、FW進藤誠司らがドリブルとショートパスを駆使して、相手ゴールに襲い掛かる。ベンチにも試合の流れを変えられる選手がそろっており、全国制覇も射程圏内にある。

 名古屋U18はエースストライカー高原幹ら2年前の日本クラブユース選手権(U−15)の優勝メンバーである1、2年生の生きが良く、チームで大きなアクセントとなっている。C大阪U−18はU−19日本代表の長身FW杉本健勇を軸に、無敗でプリンス関西を制したが、チーム総得点の半分近くをたたき出している杉本がトップチームに昇格。チームを離れただけに、彼の穴をどう埋めるかが今後のポイントとなる。
 広島ユースは安定した強さを発揮。FW井波靖奈、FW砂川優太郎、DF宗近慧ら、高円宮杯全日本ユース3位の昨年のメンバーが中心。初戦こそ米子北に不覚を取ったが、それ以降は安定した戦いぶりを見せ、プリンス中国を制した。
 プリンス四国3連覇を果たした愛媛ユースは、すでにトップチームデビューをしているMF近藤貫太、プリンス四国得点王のFW金村賢志郎、右サイドハーフからボランチにコンバートされ、攻撃の中軸を担うMF平田翔也の攻撃トライアングルがチーム最大の武器。彼らががっちりとかみ合えば、全国でも面白い存在になりそうだ。

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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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