K−1谷川氏「身売りではない」、中国系投資銀行と業務提携

長谷川亮

K−1、DREAMを運営するFEGが中国系の投資銀行PUJIと業務提携(左から2人目がFEG谷川氏、同3人目がPUJIのマイケル・チェン氏) 【長谷川亮】

 K−1を運営するFEGが16日、今後の事業展開に関する発表を都内・ホテルで行った。

 この会見でFEGの谷川貞治代表取締役は、上海や北京を中心とした投資銀行PUJI CAPITALとの業務提携を発表。今後はPUJI CAPITALの協力を得て「資金やノウハウ、企業パートナーを集め」(谷川氏)K−1やDREAMの世界的な展開を目指すという。
「日本で生まれた格闘技ビジネスをガラパゴスにせずもう一度世界へ打って出る、決意志表明するための会見です。もう一度世界へ向けて力をつけてやっていくために、アジアを中心にやっていきたい。アジアで手を結び“アジア発世界”で世界を制したい」と谷川氏。現在、業界の盟主の座は米UFCに奪われた形となっているが、「世界最大のファイティングカンパニーをもう一度作りたい」とも話していた。

 また、谷川氏は「FEGが無くなるとか身売りするとか、他の会社に買われるという話ではありません」と注釈し、「我々(FEG)は得意分野であるコンテンツ作りに専念して、苦手な資金調達とかについてはPUJIさんにお願いする形です」と補足。また、今後は中国でのK−1の展開に力を入れたいとも語った。

「資本や事業パートナーを集め、世界的に展開したい」

PUJIのチェン氏はFEGが持つK−1および格闘技コンテンツに対し「非常に可能性を持っている」と高く評価 【長谷川亮】

 この日、会見に出席した谷川FEG代表は「日本の国際競争力が落ちていると言われて久しいが、格闘技界も同じような現象が起きている。このままじゃいけない。世界を見据えたスキームに改め、国際競争力を高めなくては」と話し、ここ2年ほど日本格闘技界を取り巻く状況に危惧を抱いていたと明かす。
「他の会社に身売りをするのではございません」と一部で囁かれた説を否定し、「我々だけでは限界なので、PUJIさんの力を借りて資本や事業パートナーを集め、世界的に展開したい」と、今回の業務提携に至った流れを説明した。

 同席したPUJI CAPITALのマネージング・パートナー、マイケル・チェン氏はFEGを「格闘技の創業者でありパイオニア。世界で最も急進的に成長を遂げている格闘技の中心的存在であり、世界的に見ても最も可能性を持った団体」「持っているコンテンツはグローバルに、非常に可能性を持っている」として高く評価。
「世界規模の事業開発のお手伝いをさせて頂く」と意気込みを表し、自身も格闘技ファンということもあり、大きな可能性を秘めた中国での人材発掘および育成、そして大会開催を希望した。特にK−1中国大会に関しては「年内に最初の大会を開催したい」と、さっそく実現へ動いていることがチェン氏の口から明かされた。
 さらにチェン氏は「3年ぐらいの間に200〜300億円の資金調達をし、5年ぐらいで事業価値が1000億行くぐらいにしたい」と青写真を語り、すでにそのための事業パートナー候補として、中国最大の国営メディア「SMG」や、世界トップ3に入るスポーツマーケティング会社「インフロント」と交渉中であることを明らかにした。

 UFCの人気爆発で、格闘技の本場が日本からアメリカへ移行して久しい。
 だがこの日、PUJI CAPITALという力強いパートナーを得て、FEGが格闘大国・日本復活へその狼煙を打ち上げた。

K−1ワールドGP開幕戦は10.2韓国、決勝は12月東京で

K−1ワールドGPの今後の日程ほか、谷川氏は上海大会の開催など意欲的に語った 【長谷川亮】

 また、会見後の囲み取材で谷川代表は「(UFCの)ダナ・ホワイトと僕らが払うファイトマネーに差がついてしまっている」と日本格闘技界の危機的状況を語り、「青木選手がメレンデスに勝つのも大切だけど、我々が団体としても勝たないといけない。僕らが団体として弱く見えてしまっているのは深刻な問題」とも言及し、格闘技界での国際競争力を取り戻すため今回の提携に踏み切ったとした。

 DREAMの笹原圭一イベントプロデューサーもこれに同調し、「アジアを中心に大きなマーケットを作りたい。DREAMとして選手が海外へ出ていくのは変わらず進めていくが、選手個人だけでなく我々プロモーターも世界へ打って出る。“世界標準”と言われるものに我々も取って変われるよう、そういった興行力や資金力を目指していく」と話した。

 また、K−1ではすでに世界各地で予選を行うシステムを採用しているが、PUJI CAPITALとのパートナーシップが本格的に始まる来年からは、さらに開催の増加を検討。
 谷川代表は他にもアジア戦略の一環として、マカオでのMMA大会開催やK−1上海大会開催の案を語っており、さらに今年のヘビー級ワールドGPは10月2日に韓国で開幕戦、決勝大会は12月に東京で行うことを明らかにした。
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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