日本が目指すサッカーは「オランダではなくスペイン」=柏木陽介(浦和)の日本代表分析・W杯観戦記
浦和のMF柏木陽介が選手の目から日本代表、W杯について語った 【Photo:松岡健三郎/アフロ】
オランダは「強かった時代の浦和みたいだった」
決勝のオランダ対スペインは本当に意外な組み合わせでした。どちらもここまで来るとは思っていなかったので。試合は、延長までもつれましたが、面白かったです。はっきりと両チームのカラーが出ていましたね。オランダは個人の能力で、スペインは組織で戦った。もちろん、スペインはその組織を構成する個の能力がものすごく高いわけですが、組織で戦ったチームが勝つということはチームスポーツとしても良かったなと思います。
オランダの戦い方は、(アリエン)ロッベンのドリブル、(ウェスレイ)スナイデルの個人技、(ディルク)カイトの頑張りがあって、残りの7人は徹底して守っていましたよね。昔の強かった時代の(浦和)レッズを思い出させるものがありました。時期で言うと2005年、06年くらいですかね。ワシントン(ステカネラ・セルケイラ=現サンパウロ)の圧倒的な得点力があって、(ロブソン)ポンテの個人技があって、田中達也さんが走ってというような時期のサッカーを思い出しました。
オランダは、勝利のために基本的には守ってカウンターを徹底していた。今大会で何回か言っていますが、やっぱりチーム戦術は徹底できていてこそだと思います。オランダは本当に徹底していましたね。ただ、ファウルが多かった。勝ちたい気持ちの表れだとしても、審判に対する異議が多すぎた。あれでは最終的に審判は味方になってくれません。
今大会のナンバーワンはシャビ・アロンソ
柏木が今大会のナンバーワンプレーヤーに挙げたのは中盤の底からスペインを支えたシャビ・アロンソ 【Photo:アフロ】
何がすごいかといえば、チーム全体のバランスですね。メンバー構成もそうだし、ピッチに並んだときのバランスがとてもいい。得点にしたって、決して流れの中からの得点だけではない。セットプレーもとても強いし、最少失点で終わったことで分かるように全体的に守備もものすごく強かった。もちろん、シャビ、(アンドレス)イニエスタの能力は魅力的でした。どんな状況でも何でもできるというんですかね。
あと、今大会で僕にとって一番印象に残ったのは、シャビ・アロンソでした。もちろんこれまでも存在は知っていましたが、ここまで能力の高い選手だとは思っていませんでしたし、印象的なプレーヤーでもなかったです。でも今回は、中盤の底に入って効果的な縦パスを勇気を持って通すところや、あのポジションからの展開力でスペインを支えていましたよね。守備においても、くさびを通さない動きや、読みの鋭さなどセンスを感じました。ダブルボランチを守備的な(セルヒオ)ブスケツと組んでいたことで、思い切った攻撃参加が可能だったとは思います。僕としては今大会のナンバーワンです。
そして日本として目指すのは、やっぱりオランダではなくてスペインのサッカーですよね。オランダのような、ピッチを広く使ってダイナミックに個の力でというのは現実的に難しい。だけど、スペインみたいにコンパクトにして、ショートパスを全体で繰り返す形だったら近づけるんじゃないかなと思う。もちろん高い技術は必要ですけどね。個人的には大会中ずっと影響され、刺激されていました。
W杯は「背負っているものが違う」
帰国したホンディ(本田圭佑)と話す機会があったのですが、「何よりも勝ちたかった」と言っていました。本大会に入る前の(親善試合で)4連敗という流れがあるからなのでしょうが、周囲に何を言われても、不本意な守備的なサッカーをしても何でもいい、とにかく、勝ちたかったと。もう、何て言うんだろう。そういう舞台なんですよね。すべてをかなぐり捨てて、ではないですけど。
ブラジル大会に向けて、僕自身は何があっても何としても、W杯に出なくてはいけない。このままやっていては普通の選手で終わってしまう。どういう形でも、レベルアップして、絶対に代表に入りたいと思います。僕がやるべきことはまず、試合にきちんと出ることですね。今季、(サンフレッチェ)広島から浦和に移籍してきて、ここできっちり結果を出すこと。そして海外に出て、若いうちにもまれること。それが次回大会につながると思います。自分を奮い立たせてくれる、そんなW杯でした。
<了>
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