V3達成の杉浦に秋山が挑戦表明 棚橋が潮崎に敗北、顔面骨折の疑い=ノア

高木裕美

杉浦(右)が“帝王”高山を倒して3度目防衛に成功した 【田栗かおる】

 プロレスリング・ノアの創立10周年記念ビッグマッチ第1弾である「Summer Navig.'10 part.1」最終戦となる10日の東京・有明コロシアム大会では5300人を動員した。
 ノアは全日本プロレスを離脱した選手、スタッフが中心となり、00年8月5日&6日にディファ有明で旗揚げ2連戦を開催。同年12月23日に有明コロシアムで初のビッグマッチを行った。同会場での大会開催は03年4月以来、約7年3カ月ぶりとなる。

 メーンイベントのGHCヘビー級選手権試合では、王者・杉浦貴が「グローバル・リーグ戦」覇者の高山善廣をオリンピック予選スラム2連弾で退け3度目の防衛に成功。試合後、「グローバル・リーグ戦」準優勝者の秋山準が「ここでオレの挑戦を受けてくれ」と挑戦表明を叩きつけ、杉浦も握手で呼応したことから次回8.22有明コロシアム大会での両者のタイトル戦が決定的となった。
 杉浦は自衛隊から全日本に入門し、練習生としてノアに移籍。ノア初のビッグマッチとなった00年12.23有明コロシアム大会でデビューを果たした。
 杉浦にとって高山はデビュー当時から目標とする先輩であり、タッグパートナーとして強い信頼関係で結ばれていた。

 メジャー3大タイトルを制覇している“帝王”高山は、この日も先輩らしい堂々としたファイトで王者を威圧。要所要所でズバリと決まるニーリフトや、本部席のテーブルや鉄柱を使ったラフファイトなどで試合のペースを握ると、杉浦のマウントパンチで顔面から流血してからも乱れることなく高角度バックドロップ、顔面へのヒザ蹴り、エベレストジャーマンなどの大技を炸裂。しかし、杉浦もナックルでの殴り合いから高山の顔面にヒザをブチ込み、危険な角度で落とすオリンピック予選スラム2連発で勝負を決めた。

 今から約10年前に自身がデビュー戦を行った地でベルトを守り抜いた杉浦は、リング上から高山に「ボス、ありがとうございました」と感謝の言葉を投げかけた。バックステージでも「完全に負けた」と自ら完敗を認めた高山から腰にベルトを巻いてもらい、最高の祝福を受けたことで「チャンピオンとしての姿勢を帝王に学んだ」と改めて気を引き締めた。
 次期挑戦者の秋山については「一番やりたい挑戦者が名乗りを上げてくれた。言葉はいらない」と、真っ向から受けて立つ覚悟をアピール。10年前の夏、ディファ有明での旗揚げ2連戦で主役を飾った男との最高の舞台での対戦に胸を躍らせた。

棚橋が顔面負傷 潮崎のヒザが直撃

潮崎(右)が棚橋へリベンジ、半年ぶり2度目の一騎打ちを制した 【田栗かおる】

「新日本プロレスのエース」棚橋弘至が対外敵三番勝負に挑む潮崎豪と一騎打ち。今年の新日本1.4東京ドーム大会以来、半年ぶり2度目のシングルマッチに臨んだが、何とも痛い結末となってしまった。
 棚橋は昨年のプロレス大賞で初のMVPを獲得。プロレス界でもっとも輝いている男として東京ドームの大舞台で潮崎を迎え撃ち、必殺技のハイフライフローで快勝。両団体のエース対決といわれた戦いを制したが、その後、国内でのタイトルマッチには一度も絡まないまま上半期が終了。エースの座は依然として譲らないものの、後半での巻き返しをはかるべく、この一戦を夏の「G1クライマックス」、さらにその先のタイトル戦線への浮上のきっかけへとつなげたいところだった。

 6年ぶりのノアマット参戦となった棚橋はブーイングすらも楽しむ余裕を見せつけ、潮崎の左足を攻め立てると、10分過ぎにはハイフライフローを繰り出すが、これはかわされて不発。逆に15分過ぎに潮崎がムーンサルトプレスを放った際に、潮崎のヒザが棚橋の顔面に命中。この一撃で顔の形が変わってしまうほど右のアゴが腫れ上がり、意識まで飛んでしまった棚橋だが、それでもダルマ式ジャーマン、新必殺技のスリングブレイドルなどで勝利を狙おうとするも、潮崎が雪崩式アバランシュホールド、ショートレンジラリアット、ゴーフラッシャーとたたみかけ、前回のリベンジを果たした。

 半年越しで棚橋にリベンジを果たした潮崎は「エースを名乗る自信というものを強く感じました。彼はうまいし強い」と棚橋の実力を改めて実感した上で「オレ本人のワガママ」として、「新日本の選手とはまだまだやっていきたい。全員とやりたい」と主張。6.19新日本・大阪大会で行われたIWGPヘビー級王座戦で敗れている真壁刀義をはじめ、もっとたくさんの新日本の所属選手と戦う機会を訴えた。
 一方、せっかくのイケメンも台無しになるほど顔面が腫れてしまった棚橋は、万が一顔面骨折であった場合は、明日の後楽園ホール大会をはじめ、今後の大会出場も危ぶまれる状況となった。

5タイムス王者・金丸が丸藤を撃破

金丸が丸藤とのジュニア頂上戦を制し、王座防衛に成功した 【田栗かおる】

 GHCジュニア・ヘビー級選手権試合では王者・金丸義信が丸藤正道を倒しV3に成功した。
 金丸は01年6月に初代王者となって以来、これまで5度、同王座を戴冠。一方、今年1月にプロレス界初となる3大メジャー団体のジュニア王座制覇を達成。6.19新日本・大阪大会でベルトを失うまで、半年間に渡りIWGPジュニアヘビー級王者として新日本マットを荒らしまわった丸藤だが、GHCジュニア王座には過去に一度戴冠して以来縁がなく、両者がタイトルをかけて戦うのは今回が初となる。

 先に仕掛けてきたのは丸藤。鉄柵へのブレーンバスターやエプロンへのツームストン・パイルドライバーで徹底した首攻めに出ると、トップロープからの鉄柵越えケブラーダを繰り出し、リングに戻った金丸にフロムコーナートゥーコーナーを突き刺すが、金丸はコーナートップでの攻防を制して雪崩式ブレーンバスターを決めると、20分過ぎにはエプロンからの垂直落下式ブレーンバスターで丸藤を脳天からマットに突き刺し、その後も垂直落下式を連発。最後はタッチアウトでトドメをさした。
 今年上半期の新日本ジュニアを総ナメにしてきた最強の後輩を撃破し、「最後は気持ちかな。地味なチャンピオン、ナメんなって」と意地を見せた金丸は、ノアジュニアのトップとしての今後の戦いについて「行く時があれば行くし、ノアにもやらなくちゃいけない相手がたくさんいる」と、激化しつつある新日本ジュニアとの抗争にも目を向けた。

森嶋が吉江との超肉弾戦を制す

森嶋が吉江との合計300キロ超スーパーヘビー級対決に勝利した 【田栗かおる】

 160キロの森嶋猛vs.150キロの吉江豊による合計体重310キロのスーパーヘビー級対決は壮絶な肉弾戦の末に森嶋がラリアット連発からこの日2発目となるバックドロップで勝利を収めた。
 両者は吉江が新日本に所属していた02年5.26札幌大会で一騎打ちを行っており、この時は吉江がローリング・バックブローで勝利していた。
 その後、吉江はドラディションを経てフリーに転向。今年のノア参戦当初から、「大きい人間がいる」と常に森嶋を標的に定めており、度重なる対戦アピールが実ってついに8年ぶりの一騎打ちが実現することになった。

 互いの肉体と肉体がぶつかり合うだけでリングが揺れるほどの重量感あふれる戦いは、森嶋がスカッドミサイル、トペ・スイシーダと空間を自在に使ったファイトを見せれば、吉江もデッドリードライブ、フライングボディーアタックと攻め立てるも、森嶋は前回のフィニッシュとなったバックハンドブローを腕でブロクしてかわし、バックドロップを炸裂。こと一発では決定打とはなかなかったものの、ラリアット連打からのバックドロップで吉江の巨体を沈めた。
「心臓が飛び出そう」なほどの過酷な戦いを制した森嶋は「バカ正直に真正面から行けて良かった。気持ち良かった」とすがすがしい表情。「今後もノアに腰を据えてヘビー級の戦いを見せる」とノアマットの中心にどっしりと構えて、対抗戦で揺れる団体を屋台骨から支えるという意気込みを示した。

KENTAが新日本ジュニアと激突

長期欠場から復活したKENTAはapollo55に敗れ白星はならず 【田栗かおる】

 9カ月間の長期欠場から完全復活を果たしたKENTAが新日本の前IWGPジュニアタッグ王者チームである田口隆祐、プリンス・デヴィットのapollo55と対戦。現IWGPジュニアヘビー級王者のデヴィット、7.24大阪でも対戦する田口と対峙した。
 KENTAは6.6後楽園で行われた復帰戦で、自称「他団体専門」である当時のIWGPジュニアヘビー級王者・丸藤と金丸への王座挑戦権をかけて対戦。敗れはしたものの手術した足の具合を含めて不安要素がどこにもないことを見せつけた。
 これを受け、7.24大阪大会ではメーンベントで秋山、KENTA組vs.永田裕志、田口組によるタッグマッチが決定。一気に他団体との対抗戦の中心に躍り出ることになった。

 KENTAは自ら先発を買って出ると田口にいきなりラリアットをブチ込むなど、ケンカ腰のファイトを見せ付け、その後もハイキックやソバットなどといった得意の蹴りを主体に攻め立てるも、パートナーのエディ・エドワーズがApollo55の合体技ブラックホール・バケーションに敗れ白星はならず。試合後はアナウンサーの呼びかけにも答えず、無言で控室に直行した。
 一方、勝利した田口は「ノアもすごいけど新日本が一番なんだよ」と新日本ジュニアであることの誇りを猛アピール。翌日の後楽園大会で青木篤志とのIWGPジュニア王座初防衛戦を控えるデヴィットも「今度も新日本とノアの戦いは同じストーリーになるよ。ボクが強さを証明し、新日本のファンは喜び、ノアのファンは悔しがるのさ」と勝利を予告した。
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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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