パラグアイ戦前日 岡田武史監督、長谷部誠会見=W杯南アフリカ大会・決勝トーナメント1回戦

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岡田監督「勝利の可能性は十分にある」

公式練習後の記者会見でパラグアイ戦の抱負を語る岡田監督。左は長谷部=28日、プレトリア 【共同】

岡田 明日の試合はベスト8という、まだ日本が経験したことのないポジションへのチャレンジということで、われわれとしては今持っている力を全力でぶつけて、このチャレンジに打ち勝ちたいと思います。パラグアイ代表は非常に守備も堅く、速い攻撃、力強いプレー(をする)。当然、グループを1位で抜けてきたのだからいいチームだと思いますが、われわれもわれわれの力を100パーセント出せば、十分に(勝利する)可能性があると信じています。そういう意味で明日、選手たちが心身ともに自分たちのベストのゲームができるようにしてあげたいと思っています。

長谷部 明日はワールドカップ(W杯)の決勝トーナメントという舞台でできるという幸せを感じながら、思い切って全力でプレーして勝ちたいと思います。

――ベスト8を目指すにあたり、モチベーションを上げるために何かをしているか(原田公樹/フリーランス)

岡田 僕自身は目標はここではないですから、モチベーションはまったく問題ないと思っています。選手たちも明日の試合がどれだけのことか、サッカー人生の中で、W杯に出ること、メンバーに選ばれること、そしてベスト8にチャレンジできること、そう何度もあることではないと思いますので、それを理解していればモチベーションが下がることはないと信じています。

――前回大会から4年間、日本はどんなところを改善してここまできたのか。また、どこまで行けると思うか(外国人記者)

岡田 W杯という大会だけで、一般的にはその国のレベルが測られるんですが、これはしょうがないことだと思うんですが、今回われわれがここまでこれたことに関しては、われわれだけ、また選手だけの力ではなくて、やはり日本のサッカー(に携わる)みんなの努力だと思います。
 それとともに、じゃあ日本のサッカーのレベルが確実にそこまで上がったかというと、やはりわれわれは日本サッカー界の者として、慎重に考えないといけない面もあると。結果だけでいろんなことを判断するのは非常に危険だと思っています。ただ、確実にいろんな経験則、経験値、それから選手のレベルは上がっただろうとは感じています。どこまで行けるか、それは誰にも分からないことで、ただわれわれには可能性がある限りチャレンジし続ける。常に前に進み続ける。それだけです。

――パラグアイ代表をどう見ているか。またその強みをどう考えるか(パラグアイ人記者)

岡田 パラグアイ代表は、強豪が並ぶ中を1位で通過してきたと。当然、個々の選手、欧州でやっている選手もたくさんいますし、力を持っていますが、何より伝統的な全員での守備の強さ、前線からのプレッシャーの強さ、それとともにロングボールからのこぼれ球を拾ってからの展開など、南米のチーム独特のいろんな応用性を持ったチームだと思っています。パラグアイというチームは、どちらかというと派手さはないですけど、非常に底力を持ったチームだと感じています。パラグアイの強みというと、やはりそういう全体としてのディフェンスからの速い攻撃、プレッシャーからの速い攻撃、そういったものに気をつけないといけないと思っています。

――日本がラウンド16を戦うのは2002年日韓大会以来だが、あのときの敗戦からの教訓はあるか(木崎伸也/フリーランス)

岡田 あのときは僕はスタッフでなかったので内部事情はよく分からないのですが、後から「チームが満足していた」とかいろんなことを言われていましたが、日本のサッカー界自体が満足していたところが、チームだけの責任ではなく、あったんじゃないかと思っています。今われわれは、そういう意味で、日本ではいろんな報道がされていると。僕はあまり知りませんが。わたしが今、一番気にしているのが、選手たちがそういうものに踊らされないこと。そのことを一番、心配しています。

岡田監督「セットプレーが大きなポイントになる」

――この前の試合(デンマーク戦)では素晴らしいFKが見られたが、明日の試合でのFKの重要性は?(スウェーデン人記者)

岡田 こういうW杯という大きな試合で、それも競った試合を決めるのは、得てしてセットプレー、FKだけではなくてセットプレー(からの得点)が多いです。現実に、この大会もそうです。
 まして決勝トーナメントに入ったら、そういう直接FKが入るというのは、ものすごく大きなアドバンテージになると思っています。そのためには、いい位置でのFKを取らないといけないですし、結果、決めてもらわないといけない。ただ、やはり今大会で直接FKが決まったのは(実質)3本しかありません。そういう意味で、そんなにいつも決まるものではないと。それ以外のセットプレーから点を取ること、それは大きな試合のポイントになるのではないかと思います。

――本田の特別なところと役割について(ドイツ人記者)

岡田 彼のいいところというのは、日本人としては珍しい体の強さ、球際の強さ、それと左足のキック、安定した技術、というものだと思います。日本ではなかなか、得点を決められるストライカーがいないという中で、彼は本来は中盤の選手ですが、決定力という意味で非常に秀でたものを持っているので、いつもどおり明日も彼に期待するのは得点に絡むこと、点を取ること、そういうことを期待しています。

――今日の練習でどういうことを確認したのか。また、ここからさらに上に行くには何が必要だと考えるか

岡田 練習でいつも何かを確認しているわけではなくて、今日はコンディションを含めて、狭いコートの中での紅白戦をメーンにやりました。それから、われわれの力をすべて出すこと。それしかできませんから。今われわれが持っている力をすべて出すこと。それだけです。

――多くの日本人が、大会前には岡田さんに同情していて、今はべた褒めしていることについてどう思うか(外国人記者)

岡田 わたしは一切そういうのを見ていないので。いろんな人からそうらしいとは聞いていますが。まあ、これだけ変わるというのは、また変わるということで。僕は何度も経験していますので、そんなことに一喜一憂してはいられないと。バッシングを受けても、自分は自分の道を進みますし、褒められても自分は自分の道を進むと。ただ、それだけです。

――長谷部選手、日本が早いペースでカウンターを続ける重要性について(スウェーデン人記者)

長谷部 いや、(答えるのは)監督の方がいいんじゃないですか(笑)。まあ、カウンターアタックは僕たちの強みだし、戦術的なことはあまり言いたくはないんですけど、まあ、僕たちの武器のひとつだと思います。

岡田監督「得点が少ないから楽な相手とは思わない」

――監督が目指すサッカー、サポートの早さ、ハードワーク、連続性といったものを重視してきたが、明日の試合で「こういうサッカーをして勝つ」というのはあるか

岡田 よく理想のサッカーということを聞かれます。わたしも好きなサッカー、理想のサッカーというのはあります。しかしわたしは今、日本代表監督として、勝つことを常に考えています。勝つためには、自分の力と、相手の力を考えて、その中で戦い方が出てくる。われわれが「こういう戦い方をする」と通して戦えるのはファーストラウンド(=グループリーグ)のチームだけです。そういう意味で、われわれはパラグアイとわれわれとの力関係を考えて、同じように対等に打ち合っても、日本はそこそこやるでしょう。でも結果、終わってみたら負けていたという可能性の方が高い。そういう中で、われわれがどう戦うかというのは、秘密です。

――パラグアイはスキル高いが、ゴール数が少ないことをどう思うか。またアジア勢は日本が最後になってしまったことについて(外国人記者)

岡田 パラグアイの得点が少ないとおっしゃいましたが、今回、非常に接戦が多い中、ここにきて差がつく試合が何試合か出ていますが、やはり拮抗(きっこう)した試合が多い。この原因は何かといえば、非常に難しいところがあるんですけど、ボールもひとつの原因かな、という話もわれわれの間ではしています。パラグアイは非常にスキルが高く、チャンスも作っています。結局、得点が少ないということには、運とかいろんなものがありますが、ただわれわれがやることは、パラグアイも同じでしょう。チャンスを作り続けること、それだけだと思いますので、得点が少ないから楽な相手だとか、そうはまったく思っていません。
 それから、アジアのサッカー、韓国は残念ながらウルグアイに負けてしまいましたが、素晴らしい試合をしていたと思います。そういう意味で、われわれも何とか、最後のアジアのチームとしてベスト8に残って、アジア枠を減らさないように頑張りたいと思います。

――日本にとって初めてのベスト8進出とは、どんな意味を持つのか(外国人記者)

岡田 日本のサッカー界にとっては、非常に明るいニュースだと思います。日本のサッカー界が目指している「いつかは世界の頂点へ」という過程として一歩上がったと。ただ、忘れてはならないのは、いつもいつも言うんですが、歴史とは必ずしも右肩上がりとは限りません。今まで、過去の人がいろいろな積み重ねをしたおかげで、われわれが今、こういう道を歩んでいます。れんがを上に積んでいくと必ずどこかで倒れます。どこかで横に積まなければいけないときがある。その意味で、わたしはこの1回の結果、1回の戦いで、いろんなことを判断するというのはあまり好きじゃないです。日本のサッカーということを考えるときには、もっと長いスパンで物事を見ていかないといけない。そういう意味で、今回もしベスト8に入れれば素晴らしいことですが、それがすべてを解決することではない。まだまだ先が続くということを知っていないといけないと思っています。

<了>

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