スナイデル、W杯で最後の大仕事へ=オランダを頂点に導く司令塔

スナイデルはW杯初戦のデンマーク戦でマン・オブ・ザマッチに選ばれた 【Getty Images】

 オランダ自慢の攻撃が機能するか否かは、司令塔ウェスレイ・スナイデルに懸かっている。ファン・ペルシ、ロッベン、ファン・デル・ファールトらと形成する攻撃陣の破壊力は世界屈指。ベルト・ファン・マルワイク監督からの信頼が厚いスナイデルは、攻撃の全権を司る役割を託されている。
 ワールドカップ(W杯)の初戦、オランダはデンマークに2−0で勝利を収めた。この試合、スナイデルはマン・オブ・ザ・マッチに輝いている。守備を固めるデンマークをこじ開けようと、スナイデルは左右両足からパス、ミドルシュートを繰り出し、攻撃の起点となった。

 ただ、これはほんの始まりにすぎない。オランダが目指すのは「みんなが待ち望む結果」、つまりは悲願の初優勝だ。スナイデルも「決勝や準決勝にたどり着けるだけのフットボールを実現できる可能性を秘めている」と自信をのぞかせる。
 インテルに3冠(チャンピオンズリーグ、セリエA、コッパ・イタリア)をもたらしたように、スナイデルは母国を世界の頂点に導けるだろうか。キャリア最高のシーズンにW杯優勝という花を添えるべく、最後の大仕事に挑む。

待ち望む結果を出せると期待している

――君はオランダ代表のリーダーになったと多くの人々が考えている。グループの調子はどう? 話し合いは頻繁に行っている? 内部分裂していたと言われる過去のW杯より良いグループとなっているだろうか?

 正直言って、過去のW杯には出ていないから、何が起こっていたのかは分からない。いろいろと言われてきたけど、どこまでが真実なのかはっきりさせる必要があったと思うよ。このチームには、若いのに豊富なキャリアと経験を積んだ選手がたくさんいる。長い間、一緒にプレーしてきた選手も多い。雰囲気もいいし、みんなが待ち望む結果を出せると期待しているよ。

――君にとって今シーズンは特別な1年となった。レアル・マドリードからインテルへの移籍を強いられたけど、最終的には栄光をつかみ歴史的な3冠を手にした。荷物をまとめてスペインを去る際、このような結末を想像していた?

 いや、自分の未来を想像することなんて誰にもできないからね。マドリーを出ていく際、精神的にいい状態ではなかった。でも僕は、2つの重要な幸運に恵まれたと思っている。まず1つはモリーニョ監督のもとでプレーできる幸運を授かったこと。彼はすぐに僕のメンタルをケアし、モチベーションを高めてくれた。そしてもう1つは、幸運にもゲームメーカーという競争率の低いポジションでプレーできたことだ。このポジションでのプレーがチーム内における僕の重要性を高めることになり、非常に居心地が良くなったんだ。

――そして最終的にセットプレーのキッカーを一任されるようになった。オランダ代表でもセットプレーでは同様の優先権を持っている?

 そうだと思う。基本的に誰がFKを蹴るかでもめることはない。幸い、僕は精度の高いキックを持っているからね。

――チームはファン・マルワイク監督とどのような関係を保っている? 彼は、過去の監督ほど影響力がないと言われている。君のように豊富なキャリアを持つ選手ほど、その点を感じるのでは?

 時に監督の交代はいい効果を及ぼす。確かに、オランダ代表はかつてフランク・ライカールト、マルコ・ファンバステン、さかのぼればディック・アドフォカート、フース・ヒディンクやリヌス・ミケルスといったビッグネームをリーダーとしてきた伝統がある。
 ベルトはメディアに対して寡黙な人であり、知名度も低いけど、僕らに対しては言うべきことを言うし、とても厳しい監督だ。さらに、彼の周囲にはフランク・デ・ブールやフィリップ・コクーといったハイレベルな大会をよく知るスタッフがいる。比較的若い彼らはロッカールームで重要な存在となっているんだ。

――ファン・マルワイク監督はどんなエリート選手であっても、所属クラブで継続してプレーしなければ招集しない。チームでは、その要求の高さがよく思われていないとも言われているけど、本当にそうなんだろうか?

 そんなわけがないだろう。監督にはそれぞれのやり方があり、オランダ代表でプレーする際にはそれを受け入れなければならない。

勝敗はディティールで決まりかねない

――W杯を迎えるオランダ代表の状態は? 過去の偉大なチームのように、調和のとれた連係プレーを確立しなければ、というプレッシャーはある?

 その必要はないよ。2年前のユーロ(欧州選手権)2008では多くの時間帯でそのようなプレーを披露し、僕らは多くの称賛を浴びた。今も同等か、さらに高いレベルのパフォーマンスを保てていると思う。幸運にも攻撃陣にはスピードある選手がそろっている。バラエティー豊かな選手たちは、周囲のサポートを背に、決勝や準決勝にたどり着けるだけのフットボールを実現できる可能性を秘めている。

――今回はファン・ニステルローイ、ファン・デル・サールという2人のベテランがメンバーから外れた。これは世代交代を意味するのだろうか?

 確かに、彼らのようなリーダーを失ったのはつらい。僕らはずっと彼らに引っ張ってもらってきたからね。特に、ファン・デル・ファールト、フンテラールらレアル・マドリーでプレーしていた選手たちは、ファン・ニステルローイが僕らの道しるべとなってくれたことをよく知っている。

――グループリーグの対戦相手をどう評価している?

 デンマーク、カメルーンら強力なチームと未知数な日本とは、非常に厳しい競争になると思う。決勝トーナメントへ進むには全力を尽くさないといけない。勝敗はディティールで決まりかねないから、あらゆることに注意しなければならない。

――優勝候補はどこだと思う?

 いつもの伝統国だと思う。スペインは非常に強く、美しいフットボールを見せてくれる。あとはアルゼンチン、ブラジル、イングランド。そしてもちろん、僕らオランダだね。

――インテルのチームメートであるエトーとの対戦時には、ユニホームを交換する?

 そうだね。でも、交換を申し出るのは試合後にするよ。彼は、自分がいいプレーをした後にシャツをあげたら、僕がうんざりしてしまうだろうなんて考えそうだから。ただ試合後には、彼が後悔して何も言えなくなっているだろうけどね(笑)。

<了>

(翻訳:工藤拓)
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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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