この1試合で国民の心をつかんだ=柏木陽介(浦和)の日本代表分析・W杯観戦記

了戒美子

浦和のMF柏木陽介が選手の目から日本代表、W杯について語った 【Photo:松岡健三郎/アフロ】

 現役Jリーガーはワールドカップ(W杯)・南アフリカ大会をどう見るのか? この問いに答えてくれるのは、未来の日本代表を担う逸材と期待される、浦和レッズのMF柏木陽介。若きファンタジスタが注目する選手、プレー、戦術など、選手ならではの視点で分析してもらおう。W杯期間中の短期集中連載。第1回は、カメルーンに勝利した日本代表、その激闘について率直な感想を語ってくれた。

攻撃も守備も迷いがないように見えた

「印象的だったのは、やっぱり本田君(左)」と柏木 【ロイター】

 良かったですよ。結果だけでなく内容もいい試合だったと思います。日本代表はここまでの準備段階の結果があまりにも良くなかったので、逆に本番でいい結果が出るんじゃないかなって、実は思っていたんです。自分が入っていたU−20代表(2007年U−20W杯でベスト16)の時がそうだったから。短期決戦の場合、本番前はうまくいかないくらいの方が、本番でうまくいくことが多い気がします。

 試合が始まったら、チームが1つになっているように感じました。特に守りですね。戦う気持ちが強く伝わってきました。何よりも全員で守り切れたことが大きいと思います。攻撃はちょっと単調だったけど、速くて低いアーリークロスを入れ続けていましたよね。最初は中と合っていない場面が多かったけど、そのトライを続けたことで得点が生まれたと思います。
 攻撃も守備も迷いがないように見えました。今までは、どこか迷いながらサッカーをしていたような感じがしたんですけど、カメルーン戦は違いました。迷っているサッカーというのは見ていて嫌なんですけど、この試合は本当に気持ち良かったです。

 僕自身、この試合を見てさらに日本代表を応援しようと思いました。この1試合で国民の心をつかんだ、そんな戦いでした。これで残りの試合、日本国民はみんな今まで以上にこの代表を応援してくれるんじゃないですかね。
 仮に、自分がこのチームで生きるとしたら、実は守備なのかなと考えました。僕は司令塔タイプと思われているかもしれませんが、まずはチームのことを考えられるのが、自分の良さだと思っているので。自分だけ生きようとかではなく、チームのことを考えることで自分が回りに生かされる、そうすることで自分はより生きてくるタイプだと思います。

 印象的だったのは、やっぱり本田(圭佑)君。守備でも頑張っていたし、ボールも収まっていたなと思います。1トップなので、まずボールを収めなくてはいけなかったんですが、よく仕事をしていました。でも、そんなことよりも何よりも、本人がゴールを決めたのはさすがですね。得点の形うんぬんではなくて、海外で勝負して結果を出して、大舞台に強いというのは本当にすごい! 一緒に五輪代表(北京五輪予選)でやっていたころに比べると、成長しているのを感じます。まずチームのことを考えていて、その中で自分がどうしたら生きるか、それをよく考えているのを感じます。
 あとは、GKの川島(永嗣)さんですね。この段階でスタメンを勝ち取って。しかも、無失点で終えるところが本当にすごい。

 ただ、相手のカメルーンは、攻撃があまりにも単調でした。効果的な攻撃がなくて、ミドルシュートくらいでしか(日本にとって)恐いシーンを作れていませんでした。だからこそ、日本代表のW杯はここからだと思います。デンマークもオランダも見ている限りとても強そうです。でも、このチームワーク、チームプレーで勝っていける可能性が出てきたのではないかと、僕は思っています。

<了>
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著者プロフィール

2004年、ライターとして本格的に活動開始。Jリーグだけでなく、育成年代から日本代表まで幅広く取材。09年はU−20ワールドカップに日本代表が出場できないため、連続取材記録が3大会で途絶えそうなのが気がかり。

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