ファン・デル・ファールトの揺るぎなき誓い=母国オランダへ栄光を

ファン・デル・ファールトはオランダをW杯初優勝へと導くことができるか 【Photo:VI Images/アフロ】

 オランダはいつの時代もワールドカップ(W杯)優勝候補だ。それなのにいまだに優勝回数はゼロ。才能の宝庫で個々の技術は申し分ないのに、どこかで必ずつまずくことが悪い習慣となっている。だから、オランダ国民はやきもきしている。
「過去の経験から学習できている」とはラファエル・ファン・デル・ファールトの言葉だ。そして「最高の成績を目指せる」と誓う。14日の初戦のデンマーク戦では2−0と最高のスタートを切った。19日には勝ち点3同士の戦い、日本戦を控えている。だが、あくまで見据える先は7月11日の決勝戦。もういい加減、優勝カップを母国へ持ち帰らなければ――。

最高の成績を目指せる

――君にとっては、W杯に出場できたこと自体がほとんど優勝に近い勝利と言っていいのではないだろうか?

 そこまで大げさなことかどうかは分からないけど、意味するところは大きい。置かれた状況を乗り越えるにはどうすればいいのか考え、頭がおかしくなりそうになるときもあった。ファン・マルワイク監督は所属クラブで継続的にプレーしている選手を招集することを繰り返していたからね。そして僕は、(レアル・マドリーの)マヌエル・ペジェグリーニ監督がほかの選手を信頼していたために、出場機会を与えられていなかった。シーズン前半は、どうしたら先発でプレーできるのかをよく自分に問い掛けていたけど、答えは見つからなかった。

――その後、何が変わったのだろう?

 あきらめない姿勢、再び監督に必要とされたときのために全力で準備を整えなければならないというプロ意識を持ち、一切の発言を避けてトレーニングに集中したからだと思う。すると、ある時から再び監督の目に入り、招集メンバーに入るようになった。そして幸運にも、いくつかの重要な試合で活躍することができたんだ。

――でも君には、同郷のスナイデル、フンテラールと同じくレアル・マドリーを出ていくチャンスがあった。プレー機会を失い、W杯を逃す危険があるのを知りながら、なぜ残留を決意したのだろう?

 試合に出られなければ僕のマイナスになるとファン・マルワイク監督からは言われていたけれど、レアル・マドリーは偉大なクラブだ。僕は常にこのチームでもっと活躍しなければいけないと思っていたし、引き続きリーガ・エスパニョーラでプレーしたかったからね。レアル・マドリーを出て行きたがる選手なんていない。ロッベンやスナイデルは移籍を成功に結び付けたけど、僕は残る方を選択した。

――オランダはユーロ(欧州選手権)2008、そしてW杯予選で素晴らしい戦いを見せてきた。世界での初タイトルをつかむには何が足りないのだろう?

 多くは必要ないと思う。細部を調整し、よりチームとして完全な形に近づくことだ。でも今の僕らには素晴らしい選手がそろっており、最高の成績を目指せるよ。

――なぜ、いつもあと一歩のところまで迫りながらタイトルに手が届かないのか分析はしている?

 もちろん話し合いは行っている。過去の経験から学習できていると願いたいね。

――ファン・デル・サール、ファン・ニステルローイの不在によって欠ける要素は?

 たくさんある。何よりも彼らは僕らにとって偉大なリーダーだった。でも僕らはこの状況に慣れ、彼らがいなくてもグループとしてまとまっていかなければならない。チーム内でバトンをリレーしながらね。

日本は常に困難を強いてくる

――グループリーグではどの相手が最も怖い?

 すべてさ。簡単なライバルなどいない。どのチームも難しい相手だよ。それぞれに特徴がある。デンマークは昔から僕らと似通ったチームで、今後もそうあり続けるだろう。カメルーンはアフリカ最強チームの1つで、長い伝統を持っている。日本は常に困難を強いてくる相手だ。日本のサッカーは近年大きく進化し、国際舞台で戦う術(すべ)を身に付けてきた。だから現在、W杯のグループリーグを楽に突破できるなんて言うことはできないんだ。

――どこが優勝候補だと思っている?

 スペインは素晴らしい時を迎えている。このチャンスを生かせなければ、今後彼らに同等のチャンスが訪れるかは分からない。アルゼンチンも素晴らしい選手を抱えている。ブラジルもそうだ。イングランドもかなり上まで進めると思う。

――選手にとってアフリカ大陸で行われるW杯に参加することは、どんな意味を持つのだろう?

 どんな人々が、どんなリアクションをスタジアムで見せてくれるのか。誰に夢中になり、どのようにもてなしてくれるのか。ミステリー、そして期待感が溢れる心境だね。ぜひともこのお祭りの一員になりたいね。

<了>

(翻訳:工藤拓)
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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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