東海大・菅野、肌で感じた全国制覇の難しさ=全日本大学野球選手権決勝リポート

松倉雄太

朝起きたときに感じた疲労感

 今大会を沸かせた右腕は静かに終戦の時を迎えた。ベンチで立ち尽くし、マウンドで喜びを爆発させる東洋大ナインを見守った菅野智之(3年・東海大相模高)は徐々に悔しさが込み上げ、ほおを伝う涙を抑えきれなかった。
 準決勝(慶大戦)に続いての先発。朝起きた時には今までにないくらいの疲労を感じた菅野。この時点で前日のような投球ができないことに気づいていたのかもしれない。

 2回2死ニ塁のピンチから8番・緒方凌介(2年=PL学園高)にスライダーをライトへ運ばれ先取点を許す。「先に点を与えないようにと思っていたのですが」という願いが序盤で崩れた。
「菅野さんは球も走ってなくて辛そうでした」と感じていたのはマスクをかぶる伏見虎威(2年・東海大四高)。それでも3、4、5回と粘って追加点を与えず、走らない直球で3度相手のバットも折るなど菅野の意地は見せた。しかし、6回に2本の二塁打などで2点を失い、5回3分の2・3失点でマウンドを先輩左腕の高山亮太(4年・東海大相模高)に譲った。慶大戦で17個奪った三振はわずか1だった。

「まだ力不足なのでもっと鍛えたい」

 閉会式、東海大の隣に優勝した東洋大が並んでいた。「近くにいるけど、この距離は長いですね」と全国制覇の難しさを肌で感じた菅野。休む間もなく19日からは日本代表の選考合宿が始まる。
「今はまだ」と菅野は話したが、日本代表の榎本保監督(近大)は「この大会で十分、力を見せてくれた」と7月30日に開幕する世界大学野球選手権ではエース級の大きな期待をしていることを明かした。「まだまだ自分は体力不足、もっと鍛えたい」と秋の神宮大会、来年の選手権での雪辱を口にした背番号11。バスに乗る際にはOBから力投をたたえられ、さらに大粒の涙を流したのが印象的だった。
 この日の悔しさをまず世界の舞台にぶつける。

<了>

日本代表・榎本監督が総括「投手陣が良かった」

 7月30日から開幕する世界大学野球選手権の日本代表・榎本保監督(近大)が今大会の総括した。「菅野(智之=東海大)、藤岡(貴裕=東洋大)をはじめ投手が良かった。打者はやはり伊志嶺(翔大=東海大)。彼のような選手が3人くらいほしいです」と話した。また、斎藤佑樹(早大)ら46名の選手が参加する19日からの代表選手選考合宿では「まずは調子と、ケガをしている選手の状態を見極めたい」との方針を示した。
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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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