155キロ、17奪三振…『菅野劇場』に酔いしれた神宮=全日本大学野球選手権リポート

松倉雄太

東京六大学の覇者・慶大を意識したピッチング

 全日本大学野球選手権準決勝第1試合は東海大のエース・菅野智之(3年・東海大相模高)が慶大打線を5対0と完封し、2年ぶりの決勝進出を決めた。
 散発4安打・17奪三振、142球での完封に1万2千人の観衆は酔いしれた。まさに『菅野劇場』となった神宮。右腕は決勝進出を決め、ポンとグラブをたたいて、小さくガッツポーズをして見せたが、「今日も楽しく投げることができた」と試合後はいつものクールな表情で報道陣の質問に答えた。

 相手は東京六大学の覇者・慶大。菅野も当然意識した。ここまで2試合とは明らかに顔つきが違う。間合いの取り方もいつも以上に慎重だった。しぶとい慶大打線に前半は毎回のように走者を背負った。しかし時折150キロを超える直球を主体に、140キロのカットボール、130キロ台のスライダーやフォークをふんだんに使って慶大にタイムリーを打たせなかった。
 5回に3番・鈴木翔(3年=春日部共栄高)が2ラン本塁打を放ち待望の先取点をもらうと、ベンチ前で鈴木と抱擁し「ありがとう」と声を掛けた。これでさらにリズムに乗ると、6回には2死三塁のピンチに慶大5番・高尾康浩(4年・慶応高)を自己最速を更新する155キロの直球で三振に切って取った。
 なお、155キロを体感し、この日3三振と菅野に抑えられた高尾は「球質も伸びてくるのではなく、ミサイルのようにズドンとくる」とそのストレートを振り返った。

 後半は慶大の投手陣を打ち崩し、最終的には5対0で完勝。菅野だけではなく4試合で31得点と打線も好調だが、主将の伊志嶺翔大(4年・沖縄尚学高)は「安心して見ていられる」とエースへの絶対の信頼が相乗効果となっていることを強調した。
「今日の出来は90点。残りの10点を明日に加えられるようにしたい」と話した菅野。2年前は「主戦ではなく、何となく立っていた」という決勝の舞台。今度はエースとして、東洋大へのリベンジを目指す。

<了>

八戸大のプロ注目左腕・塩見、7回3失点に「悔しい」

 全日本大学野球選手権準決勝第2試合は、東洋大が5対1と八戸大に勝利した。プロも注目する速球派左腕、八戸大のエース・塩見貴洋(4年・帝京第五高)は7回3失点で降板。「最後まで投げられなくて悔しい」と肩を落とした。
 それでもリーグ戦からの連続無失点を55イニングに伸ばすなど、今大会で力を示して19日からの日本代表選考合宿への追加召集が決まった。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

スポーツナビからのお知らせ

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント