同大・藤井、「やっと立てた」神宮で完封勝利=全日本大学野球選手権リポート

松倉雄太

4年でようやく手に入れた全国の切符

 37年ぶり出場の同大が、エースで主将の藤井貴之(4年・天理高)の5安打・10奪三振完封の好投で、東日本国際大を1対0と破り、準々決勝進出を決めた(試合は神宮球場)。
 9回、1死一、三塁のピンチを併殺でしのいだ藤井は「ホッとした」と捕手の小林誠司(3年・広陵高)とハイタッチをした。小学校、中学校、高校と踏んできた全国の舞台も、1年春から公式戦デビューした大学では昨年まで通算16勝を挙げながら出場なし。今春は関西学生リーグで4勝を挙げてMVPを獲得するなど自身の活躍もあり、4年生でようやく全国の切符を手に入れた。
「昨日から楽しみにしていた。グラウンドに入ってやっと立てたな」と藤井はワクワク感を話す。しかし立ち上がり、その気持ちが力みにつながり、制球が定まらない。自己最速タイとなる150キロを出しながら、毎回走者を背負う苦しい投球。それを、大学日本代表候補・小林のたくみな配球もあり、何とかピンチを切り抜けていた。

「今後の野球人生においても大きな1勝」

 流れが変わったのは6回。
「(グラウンド整備で)少し時間が空いて一呼吸置けました」。
 得意のスライダーが決まりだし、初めて3者凡退で抑えた。このリズムに打線も乗る。2回以降止まっていたヒットが6回に出ると、7回には1死走者なしから満塁のチャンスをつくり、9番・川越大介(3年・佐賀西高)が犠牲フライを放って待望の先取点。攻撃が終わっても、藤井は先取点の喜びを静めるようにいつもより長くキャッチボールを続けていた。
 8回表のマウンド、1死から1番・木内佑季(3年・銚子商高)に左中間を破る二塁打を浴びた藤井。このピンチを今度は途中からレフトの守備についていた有水啓(2年・広陵高)が救う。代打・天野勝仁(3年・日大東北高)のハーフライナーを地面すれすれでキャッチ。飛び出していた走者を併殺に仕留めると、エースの顔に笑みが漏れた。

 9回も逆転の走者を背負った藤井は「ツメが甘い、しっかりと締めないと」と反省を忘れない。それでも。昨年はスタンドで観戦し、「やっぱりここに来なければいけない」と誓った神宮の舞台へ出場を果たし、しかも完封で37年ぶりの白星をチームにもたらした。
「今後の野球人生においても大きな1勝になる」
 プロも注目する右腕は充実感一杯な表情だった。
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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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