2季ぶり15度目の優勝を決めた東洋大の強さ=東都大学野球・リポート

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一度はあきらめた優勝

 2010年東都大学野球・春季リーグ、東洋大vs.国士大2回戦が19日、神宮球場で行われ、東洋大が9対8で勝利、連勝で勝ち点を奪った。同大は勝ち点4、9勝3敗でリーグ戦の全日程を終了。最終週で2位の亜大が連勝で勝ち点を奪っても勝率で上回るため、2季ぶり15度目のリーグ制覇が決まった。

 一度はあきらめた優勝だった。リーグ戦最大の山となった6日の中大3回戦に敗れ、自力優勝がなくなった。そして、「(中大の)澤村(拓一=4年・佐野日大高)を打てなきゃ秋も勝てない。そう言って秋に向けての練習を始めていた」(高橋昭雄監督)。それが一転、自力優勝の可能性を残していた中大と亜大が星をつぶし合ったことで、再びチャンスをつかんだ。そして、18日の国士大1回戦に快勝し、勝てば優勝という状況で迎えたのが、この試合だった。

4年生が勝ち方を知っている

 必勝を期した試合だったが、初回に4点を先制されると、1点差に追いついた3回にも2失点。再び1点差に迫った6回には、ここまで5勝と大車輪の活躍を見せていた藤岡貴裕(3年=桐生一高)が2ランを浴び、3点差と突き放された。自慢の投手陣が失点する度に、高橋監督は「がっくりきた」と振り返る。

 しかし、ナインの気持ちは違った。この日、1本塁打を含む4安打4打点と大活躍を見せた佐藤貴穂(4年=春日部共栄高)は、「どんなに点を取られても、ベンチは『取り返せる!』という雰囲気でした。今までピッチャーに助けてもらってきたので、今日は野手で勝とう、とみんなが思ってました」と語る。その気迫がバットに乗り移ったか、3点を追う7回、2死から4安打2四球を集中させ一挙4得点。試合をひっくり返し、そのまま逃げ切った。
「6回に(本塁打を)打たれたときも、がっくりしないようにした」と佐藤はこともなげに振り返ったが、指揮官ですら肩を落とした場面でも気持ちを切らさなかった。これには高橋監督も「(1年のときから5回優勝を経験して)4年生が勝ち方を知っている。よくやってくれた」と目を細める。
「僕たちの代だけ優勝できないなんて嫌ですから。4年生はみんな気合いが入っていました」
 佐藤が振り返ったように、4年生の経験と意地でつかんだリーグ制覇だった。

指揮官「日本一を“奪回したい”」

「リーグ戦の次は日本一も“奪回”したいね。こういう(三つ巴の)形で勝たせてもらったから、中大さん、亜大さんの分までやらないと」と指揮官の目は早くも6月の全日本選手権に向いている。主将・鹿沼圭佑(4年・桐生一高)も「東都の代表として、という気持ちはもちろんあります。また一から準備します」と2年ぶりの優勝に照準を合わせた。
 最後まで優勝争いを演じた中大・高橋善正監督が「個々の力が違う」とその強さを認めた技術力、そして“戦国”東都で再び王者となった経験と強い精神力。心身ともに充実の東洋大ナインは、優勝の余韻に浸ることなく新たな目標に向かって闘志を燃やしている。

<了>
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