「雄星に負けて僕は変わった」 ソフトB・今宮が奮闘中=鷹詞2010〜たかことば〜

田尻耕太郎

広いヤフードームで放った驚きの本塁打

打撃練習で汗を流すソフトバンク・今宮。“ライバル”雄星とのプロ初対決が近づいてきた 【写真は共同】

 福岡ソフトバンクの「ドラ1」ルーキー、今宮健太が奮闘している。まだファーム暮らしだが、開幕からチームで唯一全試合出場を果たしている。打率は2割1分1厘だが、本塁打3本はウエスタン・リーグのトップに1本差だ。

 驚きの弾道を見た。ヤフードームで行われた4月6日の2軍公式戦。両翼100メートル、外野フェンスの高さ5.84メートルの巨大なスタジアムで、特大の一発を放った。相手は阪神のフォッサム。現在1軍で先発ローテーションを守る投手の直球を左翼席中段にライナーでたたき込んだ。
「ホームラン打者になるつもりはない」
 明豊高で通算62本塁打を放ったスラッガーも、身長171センチの小柄な体ではプロの世界で本塁打を量産することは難しいと考えていた。しかし、夢を捨てたわけではない。
「体が小さくてもホームランは打てる。そのことは証明したい」
 それを開幕早々に実現してみせたのだから見事。また、5月1日(阪神戦、鹿児島)に放った3号本塁打はファームで調整している松中信彦、田上秀則とのアーチの競演だったが、今宮の打球が一番の飛距離を誇った。

 守備位置はショート。まだ粗削りだが、昨夏の甲子園で154キロをマークした強肩は健在だ。先日、2軍戦のイベントでスピードガンコンテストが行われ、出場3選手の中で最速の144キロをたたき出し、見事に優勝した。それでも今宮は「まだまだですね。今度もこういう機会があれば148キロを出します」と、いたずらっぽく笑った。

鳥越2軍監督が語る“全試合出場”の意図

 まさに英才教育。しかし、鳥越裕介2軍監督はその言葉にあまりいい顔をしない。
「全部試合に出しているのには理由がある。3月は彼がどんな選手か見たかったから。そして、4月はわざと疲れさせようと思ったから。プロ野球は高校と違って毎日試合がある。まずはプロ野球とはどういうものかを分かってもらおうと思っている。もちろん怪我につながらないようには気をつけて起用していますけどね」
 精神面では「集中力の持続」を課題に挙げ、技術面に関してはまだ口出ししないようにしている。
「形はめちゃくちゃ。でも、バットに当てる技術などセンスは感じる」
 チームでは、ここ10年で高卒ルーキー野手が1軍昇格したケースは2004年の明石健志の1例しかない。今季の福岡ソフトバンク野手陣に入り込むのは容易ではないが、今後も注目していきたい逸材だ。

プロの舞台でライバル・雄星と初対決へ

 5月10日、「フレッシュオールスターゲーム2010」(7月22日、長崎)の出場候補選手が発表され、今宮も名を連ねた。
「同級生には負けたくない。ウエスタンでは広島戦が特に燃えます。堂林(翔太)も試合に出ていますからね」
 イースタン選抜にはもちろん雄星(埼玉西武)が名を連ねた。
「3年の春、彼に負けてから僕は変わった。プロ野球人生が終わるまで、ずっとライバルだと思っています」
 プロ野球の舞台での初対決が、ついに実現するかもしれない。以前に彼とその話題について話した時には「ライト前ヒットを打ちたい」と宣言した。
「春の選抜で打ったライト前の感触がかなり良かったので、また打ちたいんです」
 この対決、ぜひ見たい。そのことで今宮はまた何かを感じて、成長するはずだから。

<了>
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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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