大学バレーの名門、東海大の強さの理由=黒鷲旗・全日本男女選抜大会

田中夕子

V・プレミアリーグのチームを相手に、大健闘した東海大。惜しくも準々決勝で敗れたが、バレー界に与えたものは大きい 【坂本清】

 4月30日〜5月5日の6日間にかけて行われた、バレーボールの黒鷲旗(全日本男女選抜大会)。学生から国内トップリーグのV・プレミアのチームも参加するこの大会で、男子の東海大がベスト8入りを果たした。日本代表も数多く輩出した名門の、強さの理由とは――。

高さだけではない、東海大の武器

 ただただ、悔しかった。
 東海大のエース・八子大輔はJTに3−1で敗れると、タオルを握りしめ、人目をはばからず号泣した。
 V・プレミアリーグのチームに負けて泣く大学生チームなど、めったにいない。
 力及ばず、ではなく、勝てる手応えがあったからこその悔恨。
「1人で戦っているわけではないのに、勝負が掛かった場面で力み過ぎてミスをしてしまった。少しでも長く、ここで試合をしたかった。ホントに、悔しいです」
 大学バレー界の名門、東海大。
 金子隆行(サントリー)が主将を務め、富松崇彰(東レ)、高橋和人(豊田合成)、清水邦広(パナソニック)が在学中の2006年には、Vリーグ勢を押しのけ、黒鷲旗で準優勝を果たしたこともある。
 近年の成績は目覚ましく、昨年は春、秋のリーグ戦を制し、12月の全日本大学選手権で優勝するなどタイトルを総なめにした。4月に開幕した関東大学春季リーグも、6試合を終えて無敗。現在の大学バレー界では、頭一つ抜き出た存在だ。
 とはいえ、黒鷲旗にスタメン出場した選手の中で190センチ以上あるのは、昨年のグラチャンにも選出された八子、安永拓弥の2人だけ。高さだけならば、上回る相手が多くいる。しかし、ライトの小澤翔(178センチ)、レフトの星野秀知(187センチ)も、東亜学園高ではぐくまれた巧みな技術と、全国を制した経験という絶対的な武器を持つ。

格上の豊田合成戦を前にしても、「戦う前から自信があった」話す安永拓弥。言葉通り、勝利を大きく引き寄せるプレーを見せた 【坂本清】

 東海大の積山和明監督は言う。
「八子(※深谷高で全国優勝)、小澤、星野、大矢(佳祐=全日本私学大会で全国優勝)、日本一を知る選手が同時期にこれだけそろったことは今までもありません。勝ったことがある選手というのは、勝負どころでどんなプレーをすればいいかを知っている。これ以上の強みはありません」
 黒鷲旗でも、象徴的な場面があった。大会2日目、豊田合成戦。20−23と先行される中、東海大のサーバーは星野。
「ここで追いつかないと勝てないと分かっていました。チャンスサーブを打つぐらいなら、イチかバチかでも、攻めないとダメ。あそこはそういう場面だったので、思い切り打ちました」
 ダイレクトで返ってきたボールを八子がフェイントで押し込み21−23。データを見てサーブレシーブが不得手な選手も理解していたため、的確にそのポイントをサーブで突いて崩し、相手の攻撃がパターンにはまったところを逃さず、安永の連続ブロックで23−23。焦り始めた豊田合成に対し、「絶対勝つ、と思いながらも何をすべきか冷静だった」(小澤)という東海大には勢いと余裕が生まれる。一時は12−19と一方的にリードされていたセットを大逆転で制し、ストレートでの完勝。安永が言った。
「“勝ちたい”ではなく“勝てる”と思っていた。戦う前から自信がありました」

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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