“タレント軍団”パナソニックを支えたキーマン=バレーV・プレミアリーグ男子総括

田中夕子
 バレーボールのV・プレミアリーグは11日、東京体育館で男子の決勝を行い、レギュラーラウンド1位のパナソニックが、同3位の堺に3−0(25−17、27−25、27−25)で勝利し、2年ぶり2度目(日本リーグ時代を含めると3度目)の優勝を果たした。最高殊勲選手(MVP)には、パナソニックの清水邦広が初選出された。

“負けられない”チーム

パナソニックが2年ぶり優勝! “タレント軍団”のキーマンとは――。写真は、優勝を決めて喜ぶ清水(右)と永野 【坂本清】

 開幕前から、パナソニックパンサーズは優勝候補の大本命だった。
 しかもただ勝つだけではなく、スタートから最後まで、圧倒的な強さを発揮するに違いない、と思われていた。そんな戦前の予想を裏付ける、明確な理由。それをリベロの永野健が代弁する。
「負けられないですよ、メンバーがメンバーですから」
 パナソニックには、日本代表でもエースとして活躍する清水邦広、福澤達哉に加え、ブラジル代表のウイングスパイカー、ジョンパウロ・タヴァレスがいる。そして、高さとスピード、パワーを兼ね備えた攻撃三本柱を操るセッターは、日本代表主将の宇佐美大輔。さらに2メートルの高さを武器に昨秋のワールドグランドチャンピオンズカップ(以下、グラチャン)にも出場した枩田優介、ユニバーシアード代表からアジア選手権ではリベロに抜擢(ばってき)された永野を加えると、コートに立つ7人のうち、6人がナショナルチームの選手たち。確かに、これでは負けられない。
 
 昨秋のグラチャンで、日本チームの新たな「顔」として活躍した清水と福澤。08年の北京五輪以後、休む間なく走り続けてきた2人の若武者が、社会人1年目の今シーズンに懸ける思いは並々ならぬものがあった。
 レギュラーラウンドを戦う最中にも、幾度となく、2人は同じ言葉を口にした。
「2人で同じチームに入って、内定選手のころから試合に出させてもらったのに、去年は勝つことができませんでした。あんな悔しさを、今年は味わいたくない。絶対に優勝したい、優勝しなきゃいけないと思っています」
 エースの意地とプライドを懸けて、さらなる高みへ到達するために、それぞれに掲げた課題があった。

「サーブの安定感」を追求した福澤

試合開始のサーブで、堺を崩した福澤 【坂本清】

 福澤が自らに課したのは「安定感」。その最たるプレーはサーブだ。
「何度練習しても、一度感覚が狂うとなかなか元に戻らない。簡単そうに見えて、サーブを修正するのが一番難しい。打つこと自体が嫌になることもあります」
 とはいえ、ジャンプサーブを武器とする福澤は、サーブで相手のレシーブを崩す役割も担う。勝負どころで確実に、なおかつ攻めのサーブを打てるように、連戦が続くリーグ期間中も、トスの位置や、助走の距離を変え、どのポイントで打てばサーブの入る確率が高まるか試行錯誤を繰り返した。

 その成果が、最も効果的に発揮されたのが、堺ブレイザーズとのファイナルラウンドだった。レギュラーラウンドは堺に4戦全敗を喫している。敗因は、常に明確。
「相手のサーブと勢いに押され、崩れたまま立て直せずに終わってしまった」
 セミファイナルでようやく勝利し、苦手意識は払拭(ふっしょく)したものの、わずか1週間後のファイナルでの再戦。セミファイナル以上に、サーブが鍵になることは十分に理解していた。
「とにかく思い切り打つ。攻めることだけ、考えていました」
 福澤のサーブから始まった決勝、1本目、2本目はともにネットすれすれの低い軌道を描いた。そして、堺の守備が乱れたところを、相手のお株を奪うようなブロックでチャンスを広げ、確実に得点へつなげる。
「決勝は、特に1セット目の入り方が大事。福澤のサーブで、いいスタートが切れた」
 宇佐美がそう言ったように、立ち上がりから波に乗ったパナソニックが第1セットは危なげなく先取した。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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