自信とともに始まった斎藤佑樹のラストイヤー=東京六大学春季リーグリポート

矢島彩

“ストレート主体”に手応え 最速147キロ

立大戦に先発した早大・斎藤。球界全体が注目するラストイヤーが始まった 【写真は共同】

「去年の悪いイメージが残っていたので、試合が終わるまで緊張がほぐれなかった」
 これほど緊張するのは、大学1年のデビュー戦以来だと言う。キャプテン、最終学年。試合前からさまざまなプレッシャーが早大・斎藤佑樹(早稲田実高)を襲っていた。それにも関わらず、4回までパーフェクトピッチングを披露。ノーヒットノーランへの期待が膨らむほどの素晴らしさだった。

 ところが、5回。先頭打者へカウント2ストライクとなり、ボールゾーンに外すべき球が「失投。ストレートが甘く入った」。完ぺきにとらえられ左翼席へ。さらに2死三塁となり「歩かせてもいい」(応武篤良監督)はずが、3ボールから暴投。これもストレートだった。7回2失点で勝敗がつかなかった斎藤は「ホームランを打たれてから、切り替えられなかった」と反省した。
 だが、昨年から掲げている“ストレート主体のピッチング”には手応えをつかんでいた。
「去年よりも指にかかるボールが増え、感覚もいい。キャンプから調子が上がってきている」
 82球中53球がストレートと、明らかにストレート中心の投球内容。144キロを超えるボールが20球以上を数え、最速147キロは3球(ボール球1球、ファウル2球)あった。5回の暴投についても、原因の1つはボールが指にかかりすぎていたためだ。

「低めに投げることが全然できなかった。コントロールミスが多かったのが課題」。斎藤のコメントを伝え聞いた、あるスカウトは「低めへの制球はピッチャーにとって永遠のテーマ。プロでも同じ。そこに気づくか気づかないかの差で決まる」と今後の成長に期待を寄せている。

日米16球団のスカウトが集結

 大学球界の主役。これだけ周囲が騒げば、少しくらい浮かれる部分があっても不思議ではないのだが……。試合後、取材スペースにやってくる姿は、4年生になっても高校時代と変わらないままだ。“ハンカチ王子”と世間が騒ぎ始めた高校3年、夏の甲子園。報道陣が斎藤の周りを何重に取り囲んでも、涼しい顔で淡々と語っている姿。回答はおうむ返しにせず、きちっと理由も述べて答える。かと言って誘導尋問には乗らない。主役を演じることなく、周りに流されることもなく、今もいつもの斎藤佑樹がいる。
「1年生のときは(フィーバーが)強烈でしたね。でも、今はそれほどじゃない。自分が試合に集中できているからかもしれません」

 いよいよ将来を考える年である。10日の開幕戦には日米16球団のスカウトが集結した。
「スカウト?試合に夢中だったので、それどころではないですね。たくさんお客さんがいたので、誰が誰だか……。見つけられないですよね(笑)」
 自分の武器をストレートに変えて挑む2年目、大学生活の集大成となる4年目が、確かな自信とともに始まった。

<了>
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著者プロフィール

 1984年、神奈川県出身。『アマチュア野球』、『輝け甲子園の星』『カレッジベースヒーローズ』(以上、日刊スポーツ出版社)や『ホームラン』(廣済堂出版)などで雑誌編集や取材に携わる。また、日刊スポーツコム内でアマチュア野球のブログを配信中

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