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今こそ岡田監督に期待すること
日本代表 0−3 セルビア代表

決して悪い相手ではない(?)セルビア代表

けがが心配された中村俊(右)は先発出場したが、ゴールに結びつくプレーはできなかった
けがが心配された中村俊(右)は先発出場したが、ゴールに結びつくプレーはできなかった【Getty Images】

 2010年南アフリカ・ワールドカップ(W杯)開幕を65日後に控え、本大会に臨む23名の日本代表メンバー発表前の最後の対戦相手に選ばれたのは、セルビア代表である。かつては「ユーゴスラビア」や「セルビア・モンテネグロ」の時代に来日したことはあったが、セルビアとしての対戦は今回が初めて。旧ユーゴ連邦からは7つの独立国が誕生し、そのうちコソボを除く6カ国がFIFA(国際サッカー連盟)とUEFA(欧州サッカー連盟)に加盟しているが、残念ながらジャージーの色を青から赤に変えたセルビアだけは未見だった。それだけに、今回の彼らの来日を非常に楽しみにしていたのだが、フタを開けてみるとメンバーは国内組のみ。しかも監督のアンティッチも指揮を執らないという(代わって監督補佐のチュルチッチが指揮)、何とも拍子抜けした陣容となってしまった。


 もちろん、ヨーロッパがシーズンの最中であることは十分に認識している。折しも代表戦前夜に行われたチャンピオンズリーグ(CL)では、本田圭佑とスタンコビッチ(押しも押されもせぬセルビアのキャプテン)が同じピッチに立っていた。両者とも、試合中はそれぞれの代表のことに思いをめぐらせることなく、目前の試合に勝利することに注力していたはずだ。そうして考えると、むしろこの時期にわざわざ国内リーグをお休みして、遠路はるばる来日してくれたセルビア代表には心から感謝しなければなるまい。それに、何人か楽しみにしている選手もいる。レッドスターの長身FWデヤン・レキッチは、足元のテクニックにも優れ、今季は20試合で11ゴールを挙げている。攻撃的MFのタディッチは、左サイドからの切れ味鋭いドリブルが武器だ。2〜3年後のCLで活躍しそうなこうした新鋭を、この機会に拝んでおくのも悪くないだろう。


 肝心のモチベーションについてはどうか。観光気分いっぱいのメンバーでは、およそまっとうな強化試合など期待できまい。だが幸いなことに、セルビアはW杯出場国。チームの中核となる選手は海外組だが、国内の若手も少なくとも3〜4名はピックアップされることだろう。直接指揮は執らずとも、スタンドでアンティッチが見ているのだ。選手が発憤しないわけがない。また長身FW(レキッチ)や、サイドからの突破(タディッチ)など、本番での対戦相手を想定したシミュレーションとしても、決して悪い相手ではなさそうだ。そう、大切なのは相手の名前ではなく、どれだけ真剣勝負をしてくれるか、である。もっとも今回のセルビアは、われわれの想像以上に手ごわい存在だったわけだが。

故障者続出で明らかになった「選択肢の狭さ」

 そんなわけで日本代表である。

 上記の通り海外組が招集できなかったため、今回は「国内組の最終見極め」が主目的となった。結果、栗原勇蔵や山瀬功治といった復帰組、そして福岡大の永井謙佑の抜てきが耳目を集めることとなったが、それ以外はいつもと変わらぬ顔ぶれであった。だが、直前になって立て続けに誤算が生じる。駒野友一と今野泰幸が、いずれもけがのために招集を辞退。週末のリーグ戦で、左足の甲を痛めた中村俊輔、左ももを打撲した栗原は、幸いチームに合流したものの、今度は玉田圭司が左足首を、内田篤人が右内転筋を痛めて、いずれも前日の紅白戦をリタイアしている。さらに、元日の天皇杯以降、コンディションを落としたままの遠藤保仁の体調も気になるところ。特に、このチームの中軸である中村俊と遠藤については、今さら確認する必要などないように思えるのだが、それでも岡田武史監督は「中盤での人数が足りていない」として、両者のスタメン起用を示唆している。


 選手のけがや出場停止(田中マルクス闘莉王は、東アジア選手権の韓国戦での退場処分により出場できない)については、もちろん指揮官に同情の余地はある。だが、一方で今回の事態は、岡田監督のメンバー固定がいよいよもって、マイナス方向に作用したととらえるべきであろう。特に中盤に関しては、中村俊と遠藤、そして現在けがで戦列を離れている中村憲剛と、若干のバリエーションはあっても、ずっとこのメンバーを不動としてきた。センターバックについても同様。中澤佑二がキャップ数101、闘莉王も37であるのに対し、バックアッパー候補の岩政大樹はわずかに2。鹿島アントラーズのリーグ3連覇に大きく貢献した不動のセンターバックでさえ、代表ではずっとベンチを温めた揚げ句、今回は栗原に蹴落とされて招集さえされなかったのである。その栗原にしても、もし期待に応える働きができなかったら、岡田監督は信頼できる3人目のセンターバックを獲得できないまま、南アに赴くことになる。


 結局、この日のスターティングメンバーは以下の通り。GK楢崎正剛。DFは右から徳永悠平、栗原、中澤、長友佑都。MFは右に中村俊、左に岡崎慎司(登録はFW)、守備的な位置に阿部勇樹と稲本潤一、トップ下に遠藤。そしてワントップには興梠慎三。岡崎と興梠のポジションが入れ替わった以外は、前日の紅白戦のスタメンとまったく同じ。その意味で予想は容易であったが、やはり解せないことの方が多かった。なぜ山瀬を使わずに、疲弊している遠藤を使うのか。この機会に石川直宏をスタメンで起用してみてもよいだろう。ところが岡田監督は「できるだけ多くの選手にチャンスを」と言いながら、その起用方法の選択肢は恐ろしく狭い。W杯の登録メンバー23名についても、当人は「7割がた決まっている」と語っているが、これまでのさまざまな状況証拠から考えて、実は「9割」決まっていると見てよいのではないか。

宇都宮徹壱
宇都宮徹壱

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著はスポーツナビでの連載をまとめた『J2&J3 フットボール漫遊記』(東邦出版)

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