激闘連続のセンバツを演出した選手たち=第82回選抜高校野球・総括

松倉雄太

島袋と山崎――見事だった両左腕の投げ合い

決勝戦では延長12回198球をひとりで投げきった興南高の島袋 【写真は共同】

 第82回選抜高校野球大会(センバツ)は、興南高が日大三高を延長の末破り、初優勝で幕を閉じた。今大会で目立った選手を中心に大会を振り返りたい。

 決勝は興南高・島袋洋奨、日大三高・山崎福也の両左腕による我慢比べの投げ合い。21年ぶりに延長にもつれ込んだ激闘は見事だった。
 優勝投手になった島袋は、大会直前に体調を崩すアクシデント。しかし、初戦が雨で2日延び、その分しっかりと調整できたツキもあった。大きな壁となっていた初戦を突破すると、調子も尻上がりに良くなっていった。特に準々決勝の帝京高戦、準決勝の大垣日大高戦でのピッチングは見事。勝負所で変化球に頼らず、内角に突く直球を押し通すなど、この1年で蓄えた経験をいかんなく発揮した。決勝では198球。スタミナも十分で、故障さえしなければ、連戦が少ない夏の沖縄大会でも大きな心配はなさそうだ。
 日大三高の山崎は昨秋の新チーム結成から投手に転向。今大会では序盤でコントロールに苦しむ場面が多かったが、決勝では一番のピッチング。投手として大きな自信をつけた大会だっただろう。

両校を決勝へ導いた好調・打撃陣の“見極め”

大会最多タイの13安打を記録した興南高は主将・我如古 【写真は共同】

 決勝に残った両校でもう一つ共通する特徴が打撃だ。全試合2ケタ安打を放った興南高はチーム打率3割3分2厘。日大三高はそれを上回る3割4分だった。興南高は主将の我如古盛次、日大三高は山崎と、大会最多安打(13本)に並んだ2人の活躍は顕著だったが、それ以外の選手もしっかりと球を見極め、打線として機能した印象が強い。
 興南高の1番・国吉大陸は三振を一つも奪われなかった。昨秋も三振が0だっただけに、いかに球を見極められていたかが伺える。投手としてみれば、基本である低めの球を見極められると辛いだけに、こういった打者の見極めができていたチームが上位に食い込んだ。

 素晴らしい戦いと評される決勝だが、一つだけ悪い面も触れなければならない。興南高が5個、日大三高が2個と失策が多かったことだ。日大三高の先取点、興南高の決勝点はいずれも相手の失策によるもの。全国の高校球児にとって手本となるはずの決勝にしては、あまりにも多すぎた。守りの面がしっかりしてこそ『春は投手力』と言われる。夏へ向けて猛省していただきたい点だ。

今後の高校野球のカギを握るのは“捕手の頭脳”か?

 今大会で目立った点を挙げるなら、優れた捕手が多かったということになるだろう。肩が強い選手、監督のような頭脳を持った選手を挙げてみたい。

【強肩】
西田明央(北照高)
加藤匠馬(三重高)
江村直也(大阪桐蔭高)

【強肩+頭脳】
坂本拓弥(東海大望洋高)
磯村嘉孝(中京大中京高)
小嵜裕之(立命館宇治高)

 強肩に関しては、捕球してから二塁に投げるまでが、高校生でトップレベルと言われる2秒を切るかどうか。彼ら以外にも2秒を切れる選手が増えてきている印象を持った。一方、頭脳は試合後に選手が話す内容なども加味。この3選手は多くの記者の質問に対して即答。話す内容も「これが高校生なのか」と感心させられるほど、的を射ており、内容についていけてない記者も多かった。

 打者に低めを見極められた時にどうするか、捕手の頭脳が今後の高校野球で最も重要になりそうだ。

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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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