2010年型ホークス野球で天敵攻略=鷹詞2010〜たかことば〜

田尻耕太郎

11年ぶりビジター開幕で勝ち越し

 11年ぶりにビジターで開幕を迎えた福岡ソフトバンク。昨季のリーグ覇者、北海道日本ハムと対した開幕カードを、見事に2勝1敗と勝ち越した。
 開幕戦は過去2年で9試合1勝8敗・防御率1.38と抑えられている“天敵”ダルビッシュから5点を奪って5対3と勝利すると、2戦目は延長11回の激闘を2対1で競り勝った。3戦目は5対16で敗戦した。
 16失点は何と8季ぶり。記録的大敗だったが、小久保裕紀は「5倍返しをやられたな」と冗談を言いながら帰りのバスに乗り込んだ。大敗も惜敗も黒星の数は同じ。23日から3日間も試合間隔が開くことを考えれば、後悔を引きずる惜敗よりも良かったかもしれない。
 何より2つの勝ちは大きい。しかも内容が抜群に良かった。秋山ソフトバンクが今季目指す野球を、そのまま表現してつかみ取った2勝だった。

 象徴的シーンは、開幕戦の2回表だ。連打で無死一、二塁とし、打席には6番・李ボム浩。WBC韓国代表の新戦力の来日初打席。注目の初球、李は迷わずバットを寝かせた。三塁線に転がる「100点満点」の送りバントを成功させてチャンスを広げる。続く7番・長谷川勇也の内野ゴロが敵失を誘い、ダルビッシュから先制点を挙げた。なおも1死一、三塁で8番・松田宣浩の打球は遊ゴロとなったが、一塁走者・長谷川の猛スライディングと松田のヘッドスライディングで併殺を阻止。渋く2点目をもぎとった。この試合、最終的には3安打2打点の小久保がヒーローとなったが、勝利のポイントは間違いなくここだった。
 1月31日、秋山幸二監督は全選手、コーチ、スタッフを集めたミーティングで次のように話した。
「今季も、昨年と同じ野球をする。攻めでも守りでも1点にこだわる野球だ」
 キャンプでは全員がバント練習を行った。守備では投内連係に多くの時間を割いた。走塁では併殺崩しのスライディング。これは秋山監督が就任当初から強くこだわってきた練習だ。開幕戦の2点目がまさにそれだった。アウトになって戻ってきた長谷川を、秋山監督は大きくたたえた。

強打者が並ぶ下位打線

 一方で、2戦目は豪快な本塁打で勝利した。延長11回、殊勲の一発を放ったのは松田だった。
 これも今季のホークスの特長となるだろう。7番以降の下位打線に座るのは長谷川、松田、田上秀則。昨季のリーグ打率4位と昨季の開幕3番打者、昨季のチーム本塁打王という豪華な顔ぶれになった。松田はまさに恐怖の8番打者。「1点」にこだわりながらも、全打順に強打者が並ぶすきのない打線はリーグ随一といえる。
 また、開幕連勝には攝津正、ファルケンボーグ、馬原孝浩の必勝リレーも大きく貢献した。馬原は早くも2セーブを記録。オープン戦中に右手中指のマメをつぶした影響による調整遅れが心配されたが、全く問題ない投球を見せた。昨季終盤に右ヒジ痛を発症したファルケンボーグも完治。攝津は今のところ完調とはいえないが、それでも2試合無失点。昨季新人王の“顔”で抑え、徐々に調子を上げていくつもりだ。

26日には2度目の“開幕”

 パ・リーグはまだ3試合が終わったばかりだが、現在の上位3チームで昨季Aクラスだったのは福岡ソフトバンクのみ。「どのチームも差がない」と秋山監督。ここ数年続く戦国時代は今季も変わらないようだ。
 福岡ソフトバンクは26日からヤフードームで本拠地開幕3連戦を行う。初戦は秋山監督と親交の深い歌手の渡辺美里がミニライブを行い、始球式には俳優の佐藤隆太が登場する華やかな一戦となる。川崎宗則は「2度も“開幕”が迎えられるなんてラッキーです」と笑った。相手は“単独首位”のオリックス。2年連続で負け越している相手だが、再び“天敵”を攻略して一気に開幕ダッシュを決めたい。

<了>
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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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