夏春連覇の偉業に挑む中京大中京高の思い=第82回センバツ高校野球・直前リポート

松倉雄太

浅野、森本の必勝パターンが確立

昨夏の甲子園では「5番・キャッチャー」として全国制覇に貢献した磯村。今大会は主将として夏春連覇に挑む 【松倉雄太】

 第82回選抜高校野球大会の開幕が1週間後に迫った。練習試合が解禁されて唯一の日曜日となった14日は全国的に好天に恵まれ、気温も上がったことで、貴重な一日となったチームが多かったようだ。昨夏のチャンピオン・中京大中京高(愛知)はこの日、市和歌山高(和歌山)、徳島科学技術高(徳島)とそれぞれ対戦し連勝。捕手の磯村嘉孝主将(3年)は「組み合わせも決まり、みんなもいい雰囲気になってきた」と手応えを感じた様子だった。

 5対2で市和歌山高を破った第1試合は左腕・浅野文哉(2年)が先発し、6回を投げて2安打1失点。7回からはエースの森本隼平(3年)がリリーフして1安打1失点と、昨秋の東海大会と同様のリレーで安定したピッチングを見せた。打線では4番の磯村主将に一発が出るなど、10安打とつながりを見せた。
「投手の2人は問題ないです」と話した大藤敏行監督。エースである森本が昨夏の疲労から秋になって不調に苦しんだことから生まれたこのリレーだが、浅野が大きく成長し、今では必勝パターンになりつつある。できれば先発もしたいという森本も「浅野がまだ体力がないので、自分が最後に投げる方が今は一番合っているかも」と後輩に信頼を置いている。打者としても中軸の森本は、先発しない時はショートの守備位置につく。経験の少ない浅野の真後ろに森本が守っている効果は非常に大きい。森本も蓄積疲労が回復し、新しい球種も覚えたという。
 
 さらに徳島科学技術高戦では、昨夏以降、体調不良で投げられなくなっていた3年生の宗雲克政が久々にマウンドに上がって好投。1年秋の明治神宮大会でもマウンドに上がった右腕の復活に「本番では出番があるかは分からないが、先(センバツ以降)も見据えると大きいね」と大藤監督は笑顔を見せた。

4番を打つ主将・磯村に注目集まる

 一方の打線は昨夏2本塁打の磯村に大きな注目が集まる。この日の一発も初戦の相手・盛岡大付高(岩手)の関係者が見つめる前で打った。当然本番でも警戒は強くなることが予想される。ただ前後を打つ森本と岩井川雄太(3年)もこの日はバットが振れていたのは好材料。前日までは岩井川を3番にして森本が5番という打順も試していたという。昨年ほどの破壊力こそないが、つなぎの打撃は健在で相手投手にとってはことしも脅威になる。

 大藤監督が「これを言われるのは仕方ない。宿命ですね」と話すのは、同校にとって72年ぶり2回目の、センバツ史上では5度目となる夏春連覇の話題。だが、去年の試合経験があるのは磯村、森本と岩月宥磨(3年)の3人だけ。「自分たちがビビって初めて出る選手と一緒ではだめになる。こういう時のために去年経験させてもらった。夏春連覇はしたいが意識はしていないです」と磯村主将はまず自分たちの野球で初戦を突破することに主眼を置いている。

 初戦は大会3日目の第2試合。これは昨夏と一緒で、ベンチも三塁側とまったく同じだ。大藤監督や選手は気付いていなかったようだが、これを聞いた磯村主将は「(縁起が)いいですね」と顔が少し緩んだ。まずは初戦突破、そしてその先にある偉業に挑む。経験豊富なバッテリーと岩月、そして新たな戦力で再び歓喜を味わうのが究極の目標だ。

<了>
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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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