ドラフト1位候補・一二三の魅力=第82回センバツ高校野球・直前リポート
149キロストレートに多彩な変化球
10日、東海大2軍との練習試合に10球団のスカウトが集まった東海大相模・一二三。今季初完投で4失点も、最速143キロを計時した 【矢島彩】
一二三は最速149キロのストレート、スライダー、カーブ、フォーク、チェンジアップという多彩な変化球、優れたフィールディング、すべてにおいて高い精度を兼ね備えた、ことしの高校生ナンバーワンピッチャーだ。すでに複数球団が1位候補筆頭として一二三の名を挙げており、東海大2軍と行われた10日の練習試合にも10球団のスカウトが駆けつけた。
魅力は技術を支える体(185センチ、84キロ)にもある。昨年8月22日から始まった秋の公式戦は16試合を数える。一二三はそのうちの14試合に登板し、97イニングを防御率1.48でまとめた。12完投という数字は出場校中最多だ。さらに神奈川県大会準々決勝で右手人差し指のツメを負傷したが、痛みが残るなか明治神宮大会決勝まで投げ抜いた。
さらにチームでは、キャプテンを務める大黒柱。スタメン4人が下級生で、気を配る機会も多い。体も心も非常にタフな選手だ。
今季初完投は4失点も最速143キロ
試合展開だけを見れば、決していいとは言えない。一二三は8四死球。特に変化球が高めに抜けるなど制球が乱れた。6回には1ストライク3ボールから甘く入ったストレートを4年生に右翼席へ運ばれた。「全体的にひじが下がっていて、腕の振りも3、4割くらいしかできていない。3ボールのカウントが多すぎた」と反省。
チーム全体のことについては「試合前から2年生の顔が強張っていて、いつもと違った」。予感は的中し、守備のミスが続出した。そのたびに一二三が声をかけ、ベンチへ戻るときも「よっしゃあ」と声をあげてムードをつくっていた。
一二三に、この試合の意義を尋ねると「自分を成長させる、ポイントになった試合」と冷静に分析。これは甲子園本番を意識する門馬監督と同じだった。
「大学生ということで相手のことを多少意識する試合になりますよね。これは甲子園の初戦に似ているんですよ。さらに試合中盤まで0点に抑えながら、援護がない。守備も足を引っ張る。天候も悪い。一二三が悪条件のなかで1人で投げ抜いたことは大きい」
球数は7回で100球を超えていたが、自ら完投を志願。この時期にしては異例の142球完投だった。「普段から投げ込んでいるので、まだ余力があります」と、サラリ。芯でとらえられた安打も2本のみ。最速143キロのほか、140キロを超えたボールも数球あった。
“仮想甲子園1回戦”を終えた東海大相模高。甲子園に舞台を移すギリギリまで、一二三は「少しでも成長したい」と意気込んでいる。
※学年は新学年
<了>
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