ウオッカ引退を発表、史上最多タイJRA・GI7勝の名牝
GI7勝、稀代の名牝ウオッカが引退(写真は07年日本ダービー) 【スポーツナビ】
ウオッカは通算戦績26戦10勝(海外4戦0勝含む)。JRA・GI通算7勝は、あのシンボリルドルフ、テイエムオペラオー、ディープインパクトと並ぶ史上最多タイである。
2006年にデビューし、キャリア3戦で2歳女王の座に就くと、翌年は牝馬ながら競馬の祭典・日本ダービーに挑戦し、64年ぶり史上3頭目の牝馬ダービーVの快挙を達成。その後は同世代のライバル・ダイワスカーレットと激戦を繰り広げ、頂上対決となった08年のGI天皇賞・秋をわずか2センチ差で制するなど、記録にも記憶にも残るヒロインとして日本の競馬シーンをリードしてきた。
昨年もGI安田記念を連覇、GIジャパンカップでは再び2センチ差の死闘を制するなど、GI3勝で2年連続の年度代表馬に選出。ただ、劇的勝利を挙げたジャパンカップ直後に鼻出血を発症したため、JRAの規定により1カ月間の出走停止となる。これにより有馬記念を回避したことから、陣営はそのまま引退ではなく、今年3月27日(現地時間)のドバイワールド挑戦を最後に引退することを発表した。
しかし、3年連続の挑戦となったドバイの地は、またもウオッカに味方せず……。
前哨戦のGIIアル・マクトゥームチャレンジ ラウンド3で、同じ日本馬のレッドディザイア(牝4=松永幹)が戦列な差し切りを決めて大きな1勝を挙げた一方、ウオッカは直線でまさかの失速の末に8着敗戦。レース後に自身2度目の鼻出血を発症したことが判明し、陣営は『引退』を決定した――。
2度目の鼻出血で決断……「もう十分すぎるくらい勝ってくれた」
角居調教師は弥生賞後、ウオッカ引退とその経緯を発表した 【スポーツナビ】
「ほんのひとすじでした」という、ごく軽度の症状のため、「(引退レースとして予定していた)ドバイワールドカップも使おうと思えば、使えたかもしれません」と角居調教師。だが、谷水雄三オーナーと協議の結果、「これまで素晴らしい競馬をたくさんしてくれたし、もう十分すぎるくらい勝ってくれた。あんまりかわいそうな姿を見たくないし、見せたくない。それに今後は繁殖という大事な仕事も待っている」ことから、最後の目標レースとしていたドバイワールドカップには出走せず、このまま現役引退することが決定された。
ウオッカは昨年のジャパンカップ勝利後も鼻出血を発症し、JRAの規定により1カ月間の出走停止に。これにより、有馬記念を回避し、今年3月27日(現地時間)のドバイワールドカップをラストランとしていた。
角居調教師、思い出のレースは「1つには決められない」
歴史的死闘となった08年GI天皇賞・秋――永遠のライバル・ダイワスカーレットとの差はわずかに2センチだった 【スポーツナビ】
「長い間、ウチの厩舎の看板娘でいてくれました。長かったような短かったような、楽しかったような辛かったような(笑)……。でも、うれしいことも辛いこともウオッカがたくさん教えてくれて、スタッフもウオッカを通じて育ってくれた。色んな挑戦もしましたし、どのレースも印象深いですね。どれか1つ、というのは決められません」
同じくGI7勝を挙げたディープインパクトのような連戦連勝の馬ではない。しかし、レースで敗戦を重ねながらも、ここ一番のビッグレースではドラマチックな復活と勝利を見せてくれた。そんな不屈のヒロインにファンは熱狂し、有馬記念では史上初となる3年連続トップ得票。記録にも、そして記憶にも鮮明に残る、日本競馬史上を代表する歴史的名牝だ。